父の葬儀費用が約120万円かかる見積もりですが、銀行口座が凍結されてしまいました。亡くなった人の口座から葬儀費用を引き出す方法はありますか?

配信日: 2025.11.27
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父の葬儀費用が約120万円かかる見積もりですが、銀行口座が凍結されてしまいました。亡くなった人の口座から葬儀費用を引き出す方法はありますか?
口座名義人が亡くなったことを銀行が知ると、亡くなった方の銀行口座は凍結され引き出すことができなくなります。
 
今回は、凍結された口座を解除する方法と葬儀費用を凍結された口座から引き出す方法について、分かりやすく解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

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銀行口座の凍結

家族や相続人などから口座名義人が死亡したことが銀行に通知されると、銀行は死亡した名義人の口座を凍結し、誰もその口座から現金を引き出すことができなくなります。
 
なお、現行では銀行が市区町村から直接「死亡通知」を受け取る仕組みはなく、銀行が死亡を知るのは家族や相続人からの連絡によるのが一般的です。こうした手続き前の段階で、家族や相続人が故人名義の口座から無断で現金を引き出すと、不適切な払戻しとみなされ、法的トラブルに発展する可能性があります。
 

凍結された銀行口座を解除する方法

口座名義人の死亡に基づき凍結された銀行口座は、正式な相続手続きを経て、銀行口座の相続手続きをとることで解除されます。
 

1. 相続手続きとは

凍結された銀行口座を解除するために必要な相続手続きとは、相続人を確定し、相続財産を調査することから始め、遺言書があればその内容に基づき、遺言書がなければ遺産分割協議書を作成して、遺産を分割することになります。
 
相続は、以下の手順で進めます。
 

(1)相続人を確定するためには、死亡した方の戸籍謄本から配偶者や子、親や兄弟姉妹の存在を確認して、法定相続人を特定します。
(2)死亡した方の預貯金や不動産などの相続財産を調べて財産目録を作成します。
(3)遺言書がなければ、相続人が話し合って相続財産の分割割合を記載した遺産分割協議書を作成します。

 

2. 遺言書がある場合の凍結解除手続き

遺言書がある場合は、以下の書類を銀行に提出することで凍結された口座を解除することができます(※1)。
 

(1)家庭裁判所の検認(公正書遺言または自筆証書遺言保管制度を利用している場合は不要)を受けた遺言書
(2)口座名義人と法定相続人を確認できる戸籍謄本
(3)資産を受け取る人の印鑑証明書
(4)通帳

 

3. 遺産分割協議書を作成した場合の凍結解除手続き

法定相続人全員により遺産分割協議書を作成した場合は、以下の書類を銀行に提出することで凍結された口座を解除することができます(※2)。
 

(1)遺産分割協議書
(2)口座名義人と法定相続人を確認できる戸籍謄本
(3)法定相続人全員の印鑑証明書
(4)通帳

 

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葬儀費用などを引き出す方法

1. 払戻し制度とは

遺産相続前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割前の凍結された口座から葬儀費用など一定額まで引き出すことができる制度です(※1, 2)。
 

2. 払戻しできる金額

相続人が単独で払戻しできる金額は、下の式で求められる金額以下となります。
 
相続人が単独で引き出せる金額=相続開始時の預貯金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分
 
なお、引き出すことができる金額の上限額は150万円です。
 

3. 払戻し制度を利用する方法

家庭裁判所の仮処分が不要である場合は、銀行に以下の書類を提出することで、凍結された口座から葬儀費用などに充てるため一定額まで現金を引き出すことができます(※2)。
 

(1)被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
(2)相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
(3)預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書

 
なお、銀行によって必要となる書類が異なったり、この制度を利用できなかったりする場合がありますので注意してください。
 
また、引き出したい金額が多い場合など、家庭裁判所の仮処分が必要となる場合があります。
 

まとめ

凍結された銀行口座を利用可能にするためには、正式な相続手続きを経て書類を銀行に提出する必要があり時間がかかります。
 
しかし、葬儀費用などすぐに必要となる現金を引き出す方法として、遺産相続前の相続預金の払戻し制度があります。払戻し制度に必要な書類や手続き方法は、銀行によって異なりますので詳しくは銀行に確認してください。
 

出典

(※1)株式会社三菱UFJ銀行 口座名義人が死亡した際の銀行口座の手続きについて
(※2)一般社団法人全国銀行協会 ご存じですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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