こっそり貯めた“へそくり”が贈与になる!? 専業主婦(夫)の私が貯めた150万円、税金がかかるのでしょうか?
専業主婦のAさんは、夫から毎月一定額の生活費をもらってやりくりしています。余った分を貯金してきたら150万円貯まりました。この場合、夫婦間でも贈与になってしまうのでしょうか。
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
生活費には贈与税はかからない
夫婦間でもあげる・もらうは贈与となり、贈与税の対象となります。贈与税は、贈与を受けたすべての財産に対してかかるものですが、贈与される財産の性質や贈与の目的から、贈与税がかからない財産とされるものがあります。
国税庁のホームページには、「贈与税がかからない財産」として12の項目が上げられていますが、そのなかの2つめに、「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」とあります。
つまり、日常生活を送るためのお金には、贈与税はかからないのです。Aさんの夫はAさんの扶養義務者であり、Aさんの夫からAさんへ生活費として毎月渡されるお金には贈与税がかかりません。
ただし、必要な都度、直接生活費や教育費に充てられるものに限られます。生活費という名目のお金であっても、使い切れないお金を預金したり株式や不動産等を購入する資金に充てていたりする場合は、贈与税の対象になります。
よって、生活費に充てた残りを預金したものは贈与財産になります。
へそくりは誰の財産?
ところで、Aさんが生活費をやりくりしてコツコツ貯めたAさん名義の預金は、Aさんのものでしょうか。民法762条に、夫婦間における財産の帰属について定められています。
『夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する』とあります。
『婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする』ことから、Aさんのへそくりであるお金の出どころは夫の収入であるため、Aさんの名義の口座であっても、夫の特有財産とされます。もし、夫に万が一のことがあったら、せっかく貯めた150万円のへそくりは相続財産とされてしまいます。
ただし、夫から「余った生活費はあげるから好きに使っていいよ」と「贈与」をされているのであれば、AさんのへそくりはAさんのものです。
基礎控除額以下であれば贈与税はかからない
それでは、Aさんの貯めたお金150万円は、贈与税を支払わなくてはならないのでしょうか。
贈与税額は、1月1日から12月31日の1年間に贈与を受けた財産から110万円の基礎控除額を差し引いた残額に税率を掛けて算出します。よって、贈与税の対象となるお金であっても、1年間に贈与を受けた財産の金額が110万円以下であれば、贈与税がかかりません。
Aさんのへそくりが150万円であっても、1年間に150万円貯まった場合は110万円を超えた分に贈与税がかかりますが、例えば1年目は90万円、2年目が60万円と、他からの贈与を含めても年間で非課税の範囲であれば贈与税はかかりません。証明ができるよう、入金の記録を残しておきましょう。
まとめ
夫婦間でも贈与が発生します。生活費は贈与税の対象になりませんが、余った生活費を預金すると贈与税の対象になります。贈与額が年間110万円以下になるよう非課税枠を利用し、入金記録を残しましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 平成25年6年3日佐藤繁教授による講演内容 相続税・贈与税における課税財産の認定と重加算税
デジタル庁 e-GOV法令検索 民法 第七百六十二条
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者
