自分が死んだら「すぐお金を引き出せ」という父。「銀行の暗証番号」も教えてもらいましたが、実は違法って本当ですか? 死後は“口座が凍結される”と聞いたので心配です
ただ、死亡の前後で故人の口座からお金を引き出すことが、犯罪になったり相続トラブルに発展したりするのではないかと、不安を感じる人もいるはずです。
本記事では名義人が死亡すると銀行口座がどうなるのか、死亡後すぐに故人の口座から出金することは違法ではないのか等について解説します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
目次
名義人が亡くなったことを銀行が知ると銀行口座は凍結される
銀行などの金融機関は、名義人が死亡したことを知った段階で該当の口座を「凍結」します。凍結されると、遺産の分割が確定するまで、遺族でも口座の払い出しをすることが原則できなくなります。
現金を口座から出金できなくなるのはもちろん、公共料金などの自動引き落としもされなくなる点に注意が必要です。
金融機関が故人の口座を凍結させるのは、死亡した時点での相続財産を確定させるとともに、相続に関連するトラブルや不正出金などを防止するためです。
遺族から銀行に連絡した場合だけでなく、銀行員が新聞のお悔やみ欄や葬儀の案内を見かけたことで自主的に凍結する可能性もあります。
死亡後にすぐ故人の口座からお金を引き出すのは違法?
故人の口座が凍結されると、世帯によっては葬儀費用の支払いに困る可能性があります。
そこで「凍結前にお金を引き出したい」と考えることになりますが、原則として故人の口座から預金を引き出すには相続人全員の同意が必要です。他の相続人の同意を得ずに引き出すと、後から「使い込み」を疑われて返金を求められるなどのトラブルになる可能性もあります。
他の相続人の同意なしで預金の一部または全部を引き出すには、例えば預貯金の仮払制度を利用する方法があります。仮払制度を利用すると、各相続人は亡くなった人の預金口座ごとに、「(死亡時の預金残高)×(1/3)×(その相続人の法定相続分)」の計算式で算出される金額か150万円のいずれか低い金額までは、金融機関から単独で引き出せます。
なお、無断で故人の口座からお金を引き出して私的に利用した場合は相続財産の処分行為に該当すると判断され、遺産相続を「単純承認した」と見なされて負債を相続放棄できなくなる可能性もあるため注意しましょう。
銀行口座の凍結を解除するには?
銀行口座が凍結された場合、遺産相続で「誰がいくら相続するか」を確定させる必要があります。遺産分割が決まったあとはその内容に沿って金融機関で解約や払い戻しの手続きが行われます。
ただし、口座凍結の解除に必要な書類や手続きの種類は金融機関ごとに異なるため、故人が利用していた金融機関に確認を取りましょう。
銀行口座の凍結で困らないためのポイント
銀行口座の凍結で困らないよう、名義人が生前のうちから家族で対策を話し合うことも必要かもしれません。
例えば故人が生前に複数の金融機関に口座を設けて預貯金していた場合、金融機関が名義人の死亡を確認した口座から順次凍結されてしまいます。口座が凍結したあとの手続きを軽くするには複数の口座を解約し、1つの口座にお金を集約しておくと良いでしょう。
また、生前のうちに本人の意思に基づき口座を解約して現金を引き出し、管理方法や将来の承継について家族で話し合っておく方法もあります。
まとめ
金融機関は名義人の死亡を知った場合に相続のトラブル防止などを目的に口座を凍結します。亡くなった後に私的にお金を引き出すと、たとえ口座が凍結される前であっても、親族から返金を要求されたり、相続放棄ができなくなったりするおそれがあるため注意が必要です。
口座の凍結や相続手続きで困らないようにするには、名義人が生前のうちから家族で話し合い、必要に応じて専門家に相談しながら、資産の管理方法や相続の進め方を整理しておくことが大切です。
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級