孫のためにお金を渡したい! 知らないと損をする相続税の“常識”とは?
遺言書があるか、被相続人(自分)の子(孫の親)が存命であるか、子が相続放棄していないかなどが、孫に財産を渡す際に影響します。本記事では、孫にお金を渡すために知っておくべき“常識”について確認していきます。
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
孫は相続人ではない!?
民法では、相続人の範囲を配偶者と一定の血族(法定相続人)に限っています。つまり、法定相続人の優先順位は、配偶者は常に相続人となり、第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹となります。この時点で「孫」は、法定相続人ではないことが分かります。
孫が相続するケースとは?
一定の条件で、孫が相続する場合があります。それが「代襲相続」です。
代襲相続とは、相続開始時に相続人となることができる人(法定相続人)がすでに死亡、欠格、廃除によって、相続権がなくなっている場合に、その人の子が代わりに相続することをいいます。
つまり、この事例では、子(孫の親)が相続開始以前に死亡していた場合、子が欠格事由に該当、または相続人から廃除され、相続権を失っている場合に、孫が代襲相続することになります。
ただし、子が相続を放棄(相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に被相続人の財産をすべて承継しない旨を申し出る)する場合は、子は相続人とならなかったとされるため、孫も代襲相続することができません。
孫に確実にお金を渡すための方法
それでは、どうしても自分が亡くなった際に、孫に確実に渡す方法はないのでしょうか?
そのための方法は、遺言として「孫へ遺贈する」旨を記載し、有効な方法で遺言書を残すことです。遺言(普通方式)には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、種類ごとに記載方法や証人や検認の必要性などの決まりがあります。
それが守られていないと、有効な遺言書とならないケースもありますので注意が必要です。
孫がお金を受け取った場合の注意事項
無事、孫にお金を渡すための遺言書を準備し、あとは天命を待つだけとなった段階でも念のため考慮しておきたい事項があります。
(1)相続税額の2割加算
被相続人の配偶者および1親等内の血族(子、父母)以外の人が、相続または遺贈によって財産を取得した場合には、相続税額に2割が加算されます。つまり、孫に遺贈した場合には、孫は2割重い相続税の負担を強いられる場合があります。ただし、代襲相続人である孫は2割加算の対象とはなりません。
(2)遺留分の請求権
仮に、孫に遺産であるすべてのお金を遺贈することも可能です。ただし、民法では残された家族の生活などを考慮し、一定の相続人が最小限の遺産を請求する権利(遺留分)を定めています。
例えば、孫にすべてのお金を遺贈する旨の有効な遺言書があっても、被相続人の財産の2分の1は遺留分となるため、配偶者と子2人がいた場合、配偶者は法定相続分の2分の1である4分の1、子2人はそれぞれ8分の1ずつの遺留分侵害額請求権を有し、それに相当する金銭の支払いを請求することが可能となります。
孫が養子の子である場合の注意点
子が養子である場合、孫の存在が子との養子縁組の前か後かで、孫が代襲相続人となるか否かが決まります。子との養子縁組の時点ですでに存在していた子は、原則、代襲相続人にはなりません。
逆に、子との養子縁組後の孫は、代襲相続人となります。前者の場合、表面上、孫としてどんなにかわいがっていても自動的に代襲相続人とはなりませんので、どうしても孫にお金を渡したい場合には、遺言書を残すか、孫本人と養子縁組しておくかなどの対策が必要となります。
まとめ
孫に確実に、計画的にお金を渡す方法としては、生前贈与があります。贈与税の基礎控除である年間110万円以下であれば、贈与税は課税されないため、計画的に数年に渡って、孫にお金を渡す方法として有効といえるでしょう。
また、贈与税が非課税で、一定のルールで住宅取得資金、教育資金、結婚・子育て資金を一括贈与できる非課税措置もあります。ただし、税制改正によって措置の内容や条件、適用期限などが変わる場合がありますので、常に最新の情報を得たうえで、実行することが重要となります。
出典
デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
