NISA口座に「1000万円」入れたまま父が死亡…「NISAだから非課税」と思っていたら、実は“二重に課税される”可能性があるんですか!? 相続税の取り扱いを解説

配信日: 2025.12.18
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NISA口座に「1000万円」入れたまま父が死亡…「NISAだから非課税」と思っていたら、実は“二重に課税される”可能性があるんですか!? 相続税の取り扱いを解説
亡くなった親が積み立てていたNISA口座を確認し、「NISAだから非課税で受け取れる」と安心していたところ、実際には課税されてしまい驚くケースは少なくありません。NISAの非課税メリットは、口座名義人である親が亡くなった時点で失効するため注意が必要です。
 
本記事では、NISA口座に1000万円の資産が残された場合を例に、相続時の課税の仕組みと、資産の評価額がどのように決まるのかを解説します。また、相続手続きの流れや、手続き中に発生した利益の扱われ方も紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。
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NISA口座の非課税メリットは「死亡時」に終了する

NISA口座は、口座名義人の死亡をもって非課税の恩恵が終了する点に注意が必要です。これは、非課税措置が「個人の資産形成を支援する」ことを目的として設計されているためです。
 

死亡日以降の利益は課税対象になる

親が亡くなった日以降、そのNISA口座の資産を売却するまでの間に発生した含み益(売却益)は、非課税とはならず、通常の課税口座と同じ扱いになります。
 
相続人は、NISA口座の資産を、相続手続き完了後に自身の口座へ移管しますが、その移管先は「特定口座」または「一般口座」といった課税口座になります。
 

相続税は資産全体にかかる

NISA口座の資産であっても、相続財産の一部であることに変わりはありません。そのため、遺産総額が相続税の非課税枠(基礎控除額)を超えた場合、NISA口座の評価額に対しても相続税が課税されます。
 
相続税の評価は、NISA口座で運用していた株式などは原則として親が亡くなった日(死亡日)の終値を基準に計算されます。NISAだからといって、相続税が優遇されることはありません。
 

NISA口座の1000万円が課税される「二段階の仕組み」

NISA口座に1000万円の資産が残された場合、相続人は税金が二重にかかる可能性がある点に注意が必要です。
 

1. 相続税(死亡日時点の評価)

まず、遺産総額が基礎控除額である「3000万円+600万円✕法定相続人の数」を超えている場合、NISA口座の死亡日時点の評価額1000万円に対して相続税が課税されます。
 

2. 所得税・住民税(移管後の売却益)

相続手続き完了後、資産は相続人自身の課税口座に移管されます。このとき、移管後に課税対象となる利益(譲渡所得)の計算に用いる取得価格には、特殊なルールがあります。
 
相続時の取得価格は、親が購入したときの価格ではなく、親の「死亡日の終値」が引き継がれます。


親の購入価格:800万円
死亡日の終値(取得価格):1000万円
相続人が売却した価格:1100万円

相続人が資産を売却した際に課税される金額は、以下のとおりです。
 
課税対象の利益=売却価格(1100万円)-死亡日の終値(取得価格)(1000万円)=100万円
 
この100万円の利益に対して、所得税15%と住民税5%の計20%(約20万円)課税されます。つまり、死亡日以降に発生した含み益が課税対象となります。
 

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相続手続きの流れと課税口座への移管

NISA口座の資産を相続する場合、通常の特定口座よりも手続きが複雑で、時間もかかります。
 

手続きの流れ

まず、親の死亡後は速やかに金融機関へ連絡し、NISA口座の存在を伝えます。口座は死亡日をもって凍結され、取引ができなくなります。また、NISA口座が開設されている金融機関には「非課税口座開設者死亡届出書」の提出が必要です。
 
その後、相続手続きのために、遺言書や遺産分割協議書、戸籍謄本など、相続人であることを証明する書類を準備します。
 
さらに、相続人がNISA口座の資産を引き継ぐためには、同じ金融機関に自身の課税口座の開設が必要です(すでに保有している場合は不要)。「相続上場株式等移管依頼書」を提出し、相続手続きが完了すると、NISA口座の資産は相続人の課税口座へ移管されます。
 

手続き中に発生した含み益の扱い

親の死亡日から資産が相続人へ移管されるまでの手続き期間中に、資産価値がさらに上昇した場合、その含み益は相続人の譲渡所得として課税対象になります。手続きに時間がかかり、その間に株価が大きく上昇すると、譲渡所得として課税される金額も増えるため注意が必要です。
 

相続手続きは速やかに実施しよう

親のNISA口座に1000万円が残されていた場合、遺産総額によっては相続税が課されるほか、死亡日以降に発生した利益に対して所得税・住民税が課税されるという「二段階の課税」が生じる可能性があります。
 
NISAの非課税メリットは口座所有者の死亡と同時に失効し、その時点の評価額が相続税の対象です。そして、その評価額が新たな取得価格となり、相続人が売却した際の利益(売却額-死亡日評価額)が課税対象になります。
 
そのため、親の死亡が確認され次第、速やかに金融機関へ連絡し、相続手続きを進めることが重要です。手続きが遅れるほど含み益が増え、相続人の税負担が大きくなる可能性があるため、注意しましょう。
 

出典

国税庁 財産を相続したとき
国税庁 No.4152 相続税の計算
国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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