父親の面倒を見たのは自分! それなのに「兄」が遺産のほとんどを相続することに疑問を感じます。存在する「遺言書」は「認知症」で間違って書かれたとしか思えないのですが有効なのでしょうか?
近年は高齢化に伴い、認知症と遺言書の関係、介護を担った家族の経済的評価など、相続をめぐる課題が複雑化しているので、悩む方も多いでしょう。
本記事では、遺言書の有効性を左右するポイントや、介護を担った家族が正当に評価されるための制度を整理し、相続で損をしないために知っておきたいお金と法律の基礎を解説します。
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認知症でも遺言書は有効? 判断のポイント
遺言書は、作成時点で本人に「遺言能力」があることが必要です。遺言能力とは、遺言の内容を理解し、その結果として自分の財産がどのように処分されるかを認識したうえで、意思表示ができる判断能力のことを指します。
仮に認知症と診断されていたとしても、その症状に波があり、作成日時点では遺言の内容を理解できていた場合、遺言書が有効と認められることがあります。
一方、遺言書作成時に判断能力が著しく低下していたと認められれば無効と判断される可能性もあります。カルテや介護記録、当時の会話状況など、作成日時点の状態を示す資料が重要になります。
したがって、認知症だから必ず無効ということではなく、「作成時に遺言の内容を理解し、その結果を認識できる能力があったか」が焦点となります。
この点を正しく理解したうえで、前述のような医療記録や介護記録などを整理し、遺言書作成時の被相続人の判断能力がどの程度であったのかを確認し、遺言書の内容がその状態と整合しているかを検討する必要があります。
長期間の介護は評価される? 寄与分というお金の仕組み
介護を担った子どもが経済的にまったく報われないのは、多くの人が不公平と感じるでしょう。親の介護や生前の手伝いを長期間担った場合、その貢献を相続に反映させるための制度が「寄与分」です。
寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持や増加に寄与したと認められるとき、通常の相続分に上乗せされる仕組みのことです。民法 第904条2項では、親の療養看護などで財産の維持に貢献した相続人に対し「寄与分」が認められており、法定相続分を超える相続ができる可能性があります。
ただし、寄与分は自動的に認められるものではなく、他の相続人との協議が必要です。まとまらない場合は家庭裁判所に申立て、期間・負担の程度・生活への影響などから金額が算定されます。介護が数年に及ぶ場合、数百万円規模で評価されることもあり、相続額に大きく影響する場合があります。
今回のケースのように、「兄が遺産のほとんどを相続する」といった遺言があったとしても、寄与分が認められれば取り分を増やせる可能性があります。
遺言書に疑問があるときに取るべき行動
遺言書の内容に不信感や違和感を抱いたとしても、感情的に動く前に、まずは状況を客観的に把握することが重要です。遺言の有効性を判断したり、適切な手続きを進めたりするには、押さえておくべき基本的なステップがあります。
まずは、遺言書そのものの形式に問題がないかを確認します。日付や署名の欠落など、民法上の形式要件を満たしていなければ無効になる可能性があります。
次に、遺言能力を検証するため、作成時の医療記録や介護記録を整理します。認知症の進行具合、服薬状況、当時の会話能力など、細かな情報が判断材料になります。
それでも家族間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所での調停が現実的です。弁護士への相談費用はかかりますが、相続額が大きく変わる可能性を考えると、費用対効果の観点からも検討すべき選択肢といえます。
正当な相続を実現するために行動しよう
親の意思を尊重することは大切ですが、認知症の影響が疑われる遺言や、介護負担との大きな不公平が生じる相続には、法的に見直す余地があります。遺言書における判断能力の有無は医学的資料で検証し、相続人の介護への貢献は寄与分として主張できます。
感情に流されず、お金・制度・証拠の観点から状況を整理することで、自分の努力が正当に評価される相続が実現しやすくなります。必要な情報を集め、しかるべき手段を取ることが後悔しない相続につながるでしょう。
出典
デジタル庁 e-Gov 法令検索 民法 (寄与分)第九百四条の二
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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