父が亡くなったあと、父の口座から直接「葬儀代」を支払いました。後から問題になりますか?
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
故人の口座は凍結される
人が亡くなった場合、不正にお金が使われることを防ぐため、その人名義の預金口座は凍結されます。凍結されると、預金口座からの引き出しや振り込みなど、すべての取引ができなくなります。そのため、故人の家族であっても、ATMで現金を引き出すことはできません。
銀行が預金口座を凍結するタイミングは、「銀行が名義人本人の死亡を知ったとき」です。一般的には、名義人が死亡したことを家族が銀行に報告した時点で凍結となります。なお、故人が有名な方で、ニュースや新聞などで死亡したことが報道された場合、銀行が家族に確認を取るなどして口座を凍結する可能性もあります。
お金を使いたい場合は「預貯金仮払い制度」を活用
故人の口座が凍結された後に、葬儀代などを支払いたい場合、「預貯金仮払い制度」を利用することができます。これは、「死亡日現在の預貯金額×3分の1×各法定相続分」まで、故人の口座からお金を引き出すことができる制度です。同一の金融機関から引き出すことができる金額は、150万円が上限となっています。
手続きには、本人確認書類のほか、被相続人と相続人の戸籍謄本などが必要になります。葬儀代など、まとまったお金が必要で、故人のお金を使いたい場合は、預貯金仮払い制度を活用しましょう。
故人の口座から葬儀代を支払ったら?
では、名義人が亡くなった場合に、銀行に死亡の連絡をせず、故人の口座から家族がお金を引き出した場合は、何か問題があるのでしょうか。
結論から言うと、窃盗罪などの罪に問われることは一般的にありません。
しかし相続人が複数いる場合、一人の相続人が故人の口座からお金を引き出して使い込むと、家族間で相続のトラブルになる可能性があります。自分の相続の取り分内でお金を引き出していた場合はまだいいですが、他の人の相続分までお金を使い込んでしまった場合は、大きなトラブルに発展する可能性があります。
一方、葬儀代など、必要なお金を使うことを事前に他の相続人にしっかりと伝えておき、同意が得られれば、故人の口座からお金を引き出して使っても特に問題はありません。使用時期や金額が分かるように、領収書等を保管しておくと安心です。
人が亡くなった場合の手続き
口座名義人が死亡した際は、まずは銀行に届け出を行いましょう。家族で相続の話し合いを行い、相続手続きが完了するまでは口座の預金を動かせなくするほうが安心です。
また、故人名義の口座から家族が勝手にお金を引き出すことは、基本的にやめましょう。使い込みを疑われたりするなど、その他の家族と財産を分与する場合に、トラブルに発展する可能性があるからです。
銀行口座を凍結後にお金が必要になった場合は、預貯金仮払い制度を使いましょう。それにより、相続時のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
家族が亡くなるという出来事は日常的に発生するものではないため、預貯金の取り扱いなど、どのようにしたらよいのか分からないという方もいるかもしれません。
そのような場合、自己判断で行動せず、まずは正確な情報を確認することが大切です。そして相続が完了するまで、定められた方法で対応する必要があります。葬儀代の支払いについては、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。
執筆者 : 下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者