高齢の母が「認知症になる前に、お金のことを全部決めておきたい」と言います。通帳には1500万円ほどの預金。生前贈与と医療・介護費のバランスは、どう考えればいいのでしょうか?
ただし、生前贈与には税金の問題(贈与税・相続税との関係)があり、介護・医療費の備えも必要です。預金が1500万円ほどある場合、どのくらいを贈与に回し、どれだけを将来の介護・医療費のために残しておくべきか、目安を含めてわかりやすく整理します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
まず押さえるべき「生前贈与の税の基本」
日本では生前贈与は原則として贈与税の対象です。1月1日〜12月31日までに1人から受け取った合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません(基礎控除)ので、毎年少しずつ贈与する計画を立てる人もいます。
年間110万円を超える部分に対しては税率が段階的に高くなります。贈与税や相続税の基礎となる仕組みを理解しながら計画することが大切です。
また、認知症などで判断能力が低下すると生前贈与が成立しない可能性もあり、元気なうちに意思の確認をしておくことが重要です。認知症が軽度であれば贈与自体は可能とされますが、後で争いにならないよう診断書や契約書の用意なども検討する必要があります。
生前贈与だけで「安心」とは言えない理由
1500万円というまとまった預金がある場合、すべてを生前贈与してしまうと、税金面や介護・医療費の備えの面で不安が残ります。例えば、介護費や医療費は予測が難しく、長期化することもあります。要介護状態が長く続くと、高額な自己負担になる可能性もあるため、一定の資金を手元に残しておくことが安心につながります。
また、生前贈与で相続税対策をする場合でも、あまりに早く大部分を贈与してしまうと、その後の介護・治療費の捻出が難しくなることがあります。成年後見制度のような判断支援策や家族信託などを活用して財産管理をしながら、介護費を支えられるような準備を進める方法もあります。
目安として考える「残しておくべきお金の考え方」
では、どのくらいを生前贈与に回し、どれだけを残すのが良いのでしょうか。個々の家族の収入や健康状態によって最適解は変わりますが、一般的に次のようなバランスが考えられます。
1. 日常生活費+予備資金として最低1〜2年分を残す
介護や医療の費用は予測が難しいため、目安として今の生活費×1〜2年分を確保しておくと安心です。急な病気や介護が始まった場合、すぐに現金が必要になることがあります。
2. 長期の介護に備えた資金を確保
介護施設入所や在宅介護の支援費用は、状況によっては年間で数十万〜数百万円規模になる可能性があります。現時点の体調や家族の支援体制と照らし合わせて、最低でも数百万円〜1000万円前後は手元に残すことを検討する人もいます。
3. 生前贈与は相続税対策も含めて計画的に
相続税対策のため年間110万円の非課税枠を使って贈与したり、相続時精算課税制度などの利用を検討したりすることで、贈与税・相続税の負担を抑えることができます。大きな一括贈与を考える場合は、税理士と相談して最適な時期や方法を選びましょう。
生前贈与の進め方と注意点
生前贈与を進める際には、贈与契約書の作成や記録の保存など、後から誤解やトラブルにならないような準備が必要です。
また、将来の介護・医療費に備えるためには、遺言書の作成や家族信託などの制度の活用も視野に入れるべきです。成年後見制度は、認知症になってからの財産管理の支援策ですが、贈与とは別の仕組みなので適切に理解しておくことが大切です。
まとめ
「認知症になる前に財産を分けたい」という気持ちは理解できますが、1500万円という資金をすべて生前贈与に使うことはおすすめできません。税金面と将来の介護・医療費の両方を考慮して、最低限の生活費・介護費の備えを残し、余裕のある部分を生前贈与に回すというバランスが安心につながります。
目安としては、まずは生活費の数年分と介護・医療費の予備を確保し、余った部分を非課税枠の範囲で計画的に贈与していくことが無理のない進め方です。最終的には税理士や専門家と相談して、家族全体の将来設計として最適なプランを立てることをおすすめします。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー