父親が亡くなりました。相続人は母と私ですが、2人とも貯金がありません。相続税が払えないと何も相続できないのでしょうか?

配信日: 2026.01.15
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父親が亡くなりました。相続人は母と私ですが、2人とも貯金がありません。相続税が払えないと何も相続できないのでしょうか?
国税庁の調査では、無申告や申告漏れは“見逃されない”傾向が強まっており、追徴税額も過去最高水準になっています。さらに、遺産総額が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、たとえ手元に現金がなくても原則10か月以内に申告・納付が必要です。
 
本記事では、相続税がかかるラインの考え方から、納税資金が足りないときの現実的な対処法(売却・延納・物納)まで、押さえるべきポイントを整理します。
當舎緑

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

国税庁の調査からわかること

相続が起こったからといって、だれでも調査が行われて税金を支払っているわけではありません。国税庁から発表された「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」(※1)からは、相続税や贈与税が、どれくらい調査がされ、そのうち無申告もしくは申告漏れがどれくらいなのかが公表されています。
 
令和5年度においては、追徴税額は123億円と増加し、公表を始めた平成21事務年度以降で最高となっています。
 
資料のなかでは「実地調査は、文書、電話による連絡または来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤りなどがある申告を是正するなどの接触がされることで、適正・公平な課税の確保に努めています」と、一見難しい説明がされています。
 
簡単に説明すると、適正・公平に課税するために、さまざまな手段により調べられるため、この申告漏れや無申告が、単に「知らなかった」とはいえません。
 
本来の税だけではなく、追徴課税の加算税が課税されることもありますので、相続が起こったときには、「知らない」ですまさず、「相続税を支払う必要はあるのか」をしっかり調べることが大切です。
 

相続税が課税されるケースはどんなとき?

相続税には「基礎控除」という仕組みがあり、計算式は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。今回の相談者のケースですが、相続人は2人なので、上記の計算式に当てはめると基礎控除額は4200万円です。
 
つまり、遺産総額が4200万円以下なら相続税はかかりません。そして、遺産総額が4200万円超であれば、いくら「手元に現金がありません」といっても、相続税の申告期限である、相続開始を知ったときから10ヶ月以内に、申告納付する必要があります。
 
配偶者の特例か小規模宅地の特例等、何らかの特例の利用をしたいのであれば、ちゃんと申告期限を守らなければなりません。
 
国税庁のホームページ(※2)には、相続税の申告要否判定コーナーもあります。個別の財産、債務の価額などを入力して、相続税を支払う必要があるのか、簡易計算をまずは試してみましょう。
 

相続税は相続財産から支払うのがキホン

相続税は、相続人が負担する税金ですが、原則として相続した財産から、「現金」で「一括納付」するのが原則です。
 
もし、相談者のような自分自身の手持ち資金がなく、さらに相続財産の現預金が少なく、不動産の価値があるのであれば、不動産売却をして現金化するという対応も選択肢となるでしょう。
 
また、相続税額が10万円を超え、金銭一括納付が困難であれば、申請書を提出し、担保を提供することにより分割払いが可能です。
 
ここまでが、原則的な相続税の支払い方法となりますが、延納によっても金銭で納付することも困難な場合には、条件はあるものの、相続財産による納付=物納をすることもできます。
 
詳細な手続き方法については、国税庁「相続税・贈与税の延納の手引き」(※3)で確認できますし、お近くの税務署に予約をしたうえで相談に行くのもいいでしょう。
 
相談者からの「相続税を支払えないと相続はできないのでしょうか」という質問には、「相続はできます」という回答にはなります。ただ、相談者の方は、亡くなった方の相続財産に何が含まれているのか説明はされていませんから、もし借金があれば、放棄も選択肢となり得ます。
 
いずれにせよ、相続財産の内容を知らないままでは、追徴課税される、もしくは債務を相続するなど自分へのデメリットがあることは忘れないでください。
 

出典

(※1)国税庁 令和5事務年度における相続税の調査等の状況
(※2)国税庁 相続税のあらまし
(※3)国税庁 相続税・贈与税の延納の手引き
 
執筆者 : 當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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