空き家特例はどんな場合に利用できる? FPがわかりやすく解説
配信日: 2020.04.10
生活の基盤としていろいろな思い出を作ってくれたわが家ですが、時間がたつと、1人または少人数で生活するのが難しくなります。そして、別に居宅を構えるため子どもが家を出たり、家主が老人ホーム等へ生活の基盤を移したりすることにより、家主がいなくなった家だけが残ることとなります。
そんな空き家を相続または遺贈により取得した方は、被相続人の居住用財産(空き家)に関わる譲渡所得の特別控除の特例を受けることができます。
その内容は、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に取得した物件を売却した場合において、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することができるというものです。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
例えば、土地と建物の売却価格が4000万円の場合において、その土地と譲渡費用が1000万円である場合、差引3000万円に対して税金がかかるところが、そこから3000万円を控除できます。結果、該当する土地や建物を売却した場合は、税金がかからないということになります。
特例の対象となるのは、「被相続人居住用家屋」と「被相続人居住用家屋の敷地等」です。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
被相続人居住用家屋
「被相続人居住用家屋」は、相続の開始の直前において被相続人の居住用としていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるものです。主として被相続人の居住用としていた1つの建築物に限ります。
イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと
ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどの場合において、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住用に供されていた家屋は、被相続人居住用家屋に該当するため、老人ホームへ入所されていた方の直前の家屋も対象です。
被相続人居住用家屋の敷地等
「被相続人居住用家屋の敷地等」は、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地として使用されていた土地、またはその土地の上に存在する権利をいいます(その土地の上に存在する権利とは、地上権などが該当すると思われます)。
なお、相続の開始の直前において、その土地が用途上不可分の関係にある母屋や離れなどの2以上の建築物のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に関わる土地の部分に限ります。
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特例を受けるための適用要件
特例を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
1. 売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと
2. 次の(1)または(2)の売却をしたこと
(1)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること
(2)相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取り壊し等をした後に、被相続人居住用家屋の敷地等を売ること
3. 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
4. 売却代金が1億円以下であること
5. 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
6. 同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋、または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと
7. 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
「特別の関係」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます
以上の内容は制度の概要を記載したものです。詳細につきましては最寄りの税務署へご確認ください。
(参考)国税庁「タックスアンサー」
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者