20代で保険に加入するのは早すぎ? FPが4つの保険について解説
配信日: 2020.03.07
そこで、今回は医療保険、がん保険、終身保険、個人年金保険の4種類について、20代で加入すべきなのかどうか解説します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
医療保険の場合
入院を伴うような大きな病気はいつかかるか分かりません。「20代なら大丈夫」とは決していえませんので、備えをしておくことは大事です。入院すると高額な医療費が発生することが多いですが、そのような場合、患者が自己負担する金額は3割ではなく、それよりも低い上限が設けられています。これを高額療養費制度といいます。
高額療養費制度の詳細については他の記事に譲りますが、例えば、年収が300万円程度なら1ヶ月の自己負担限度額は5万7600円です。これに健康保険が使えない食費や雑費、差額ベッド代を加えた金額が自己負担する金額の総額です。
差額ベッド代は自らの意思で対象となる部屋を利用しなければかかりませんので、入院といっても盲腸(虫垂炎)のようにありふれた病気が原因なら、10万円から20万円くらいの貯蓄があれば医療保険がなくとも何とかなることが多いでしょう。
ただし、確率は低くとも長期入院に備えたいと考える場合や、終身医療保険に加入して老後の備えも得たいという方は20代でも加入を検討すべきです。
同一条件の保険であれば、若いうちに終身医療保険に加入すると毎月の保険料が安いだけでなく、総額でも年齢が高くなってから加入するより安くなります。また、健康状態が悪化すると無条件で加入できなくなったり、加入そのものができなくなったりするので、20代のうちから検討することには意味があります。
がん保険の場合
がんにかかった場合も、もちろん高額療養費制度が利用できるので、がんという病気のイメージと比べて軽い負担で済むこともあります。しかし、診断されたときの進行度によっては最終的な自己負担が高額になることもあります。
国立がん研究センター がん情報サービスのデータ(2014年)によれば、20歳の男性が30歳までにがんになる確率は0.3%、女性は0.4%です。それほど高い確率ではありませんが、決してあり得ないとはいえないのではないでしょうか。
がんについて最低限の備えをしておきたいのであれば、50万円くらいの診断一時金を受け取れる保険(医療保険の特約でも可)に加入し、あわせて先進医療特約を付加しておくのがおすすめです。
終身保険の場合
終身保険は葬儀代の準備という名目で勧誘されることが多い貯蓄型の保険です。保険会社のウェブサイトに掲載されている終身保険の案内をみると、葬儀費用は195万円くらいかかる(のが一般的)と説明されていることが多いです。
しかし、近年は家族葬や火葬式といった、簡素化された形式を好む人が増えています。こうした形式を選択する場合は通常、200万円もの費用はかかりません。
そのため、葬儀代の準備を目的として終身保険への加入を検討する場合は、まずどんな葬儀が必要なのか考えてみてください。高額な費用が見込まれる場合は終身保険も1つの選択肢ですが、そうでなければ無理に加入する必要はないでしょう。
個人年金保険の場合
生命保険文化センターの調査によると、29歳以下の個人年金保険の世帯加入率(全生保)は15.3%となっています。ちなみに6年前の調査では3.9%だったことを考えると、加入率は急速に伸びています。
個人年金保険のような貯蓄型の保険は、「予定利率」という契約者に対して約束する運用利回りが固定されている商品が多いです。予定利率は市場金利を反映するため、市場金利が低いときに契約すると、保険料を払い込んでいる間に金利が上昇した場合は結果として不利になる可能性があります。
また、契約期間が長いのでインフレのリスクも考慮する必要があります。年金として受け取れる金額は契約時に決まるので、インフレが起きると実質の価値が目減りするからです。
それでも個人年金保険に加入したいという場合は予定利率が金利情勢に応じて変化する「積立利率変動型」の商品を検討しましょう。あわせてiDeCo(個人型確定拠出年金)も検討してみてください。
まとめ
保険に加入するかどうかを真剣に考えるのは、20代でも決して早すぎるということはありません。
ただ、貯蓄型の保険については慎重に検討することが必要です。市場金利が低いときはメリットよりもデメリットの影響が大きいので、生命保険料控除などで「節税になる」というセールストークに乗って安易に契約しないことをおすすめします。
[出典]
国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター