更新日: 2020.10.06 その他保険
就業不能保険ってどんなもの?メリット・デメリットは?
今回は、最近注目されている「就業不能保険」がどのような保険なのか、またメリット・デメリットについても紹介します。
執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。
親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp
就業不能保険とは
就業不能保険とは、病気やケガなどで働けなくなった場合に一定の条件を満たすと、契約時に設定した給付金を毎月受け取ることができる保険です。受け取れる期間は保険期間満了または就業不能状態から回復するまでです。
死亡保険では、高度障害以外で働けなくなった場合、死亡したわけではないので保険金を受け取ることはできません。また医療保険では、給付金は入院や手術など医療費を補う金額であり、さらに給付対象の日数に上限があります。そのため、長期間働けなくなった場合の生活費などをカバーすることは難しいでしょう。
就業不能保険は、働けなくなった場合に生活費などをカバーする目的の点で、死亡保険とも医療保険とも異なる役割を持っている保険といえるでしょう。
就業不能保険のメリット・デメリット
就業不能保険のメリットについては次の3つがあります。
・長期間にわたり生活費などをカバーできる
・医療保険ではカバーできない在宅療養などについても対象になる
・公的保障で不足する部分もカバーできる
長期間働けない場合の不安としては、医療費の負担よりも、収入減少の不安の方が大きいでしょう。病気やケガなどで働けなくなった場合の生活費の不安に対応できる点は1番のメリットです。在宅療養については、医療保険では支払い対象にならないケースが多いですが、就業不能保険では保険会社によって支払い対象になることがあります。また、公的保障の受給だけでは不足する金額をカバーすることもできるでしょう。
一方、次のようなデメリットもあります。
・支払い対象外の期間がある
・就業不能状態が保険会社により異なる
就業不能保険では60日などの支払い対象外の期間があります。その期間で回復するケースではそもそも給付を受けることはできません。
就業不能保険で支払い対象となるのは「働けない状態」です。しかし、支払い対象のケースについては、保険会社により個別に定められています。特定の疾病が指定されていたり、医師の指示が必要であったり、うつ病などの精神疾患は対象外であったり、保険会社によって異なりますので加入前に必ず確認してください。
就業不能に対する公的保障
就業不能保険を考える際に、公的保障についても確認しておきましょう。働けなくなった場合の公的保障としては大きく分けて2つあります。
1つ目は「傷病手当金」です。
健康保険組合や協会けんぽ(全国健康保険協会)など、国民健康保険以外の健康保険に加入している人は「傷病手当金」を受け取ることができます。3日以上連続して仕事を休んだ後の4日目から支給され、受給できる期間は最長で1年6ヶ月です。支給金額は、支給開始日以前の12ヶ月の標準報酬月額の3分の2となります。
月給の約3分の2を受給できるとはいえ、住宅ローンの返済や教育費などで家計が厳しい状況では、生活に支障が出る可能性があります。また、国民健康保険加入者は傷病手当金の対象外ですので、収入が途絶えることになりかねません。
2つ目は「障害年金」です
障害年金は、病気やケガによって一定の障害の状態にあると認定された場合に受給することができます。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、自営業者など国民年金に加入している場合は障害基礎年金、会社員など厚生年金に加入している場合は障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給することができます。また、障害等級により受給額が変わります。
障害基礎年金の受給額は、障害等級2級の場合で年間78万1700円です(2020年度)。子どもがいる場合は第1子、第2子については各22万4900円、第3子以降は各7万5000円です。例として、子どもが2人いる場合では年間123万1500円、月当たり10万2625円です。家族が生活をするために十分な金額とはいえないでしょう。
なお、障害の認定を受けるには、初診日から1年6ヶ月を経過する必要があります。会社員や公務員の場合は傷病手当金の受給で収入をつなぐことができますが、自営業者の場合はその期間の家計についても考える必要があります。
働けなくなった場合の備えについては、まず自分がどのような公的保障が受けられるのかを確認しましょう。その上で貯蓄や収支の状況を確認し、不足する部分について保険で備えるとよいでしょう。
出典 日本年金機構 障害年金
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員