知っておきたい失業保険。〈自己都合〉なのに〈会社都合〉と認められる場合があるってホント?
配信日: 2020.03.22 更新日: 2021.10.08
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
そもそも失業保険ってどんな保険?
失業保険という名前で知れ渡っているこの保険、正式名称は雇用保険といいます。いわゆる失業保険は、雇用保険の中の「失業等給付(以後、失業保険)」というカテゴリに分類されています。
労働者が失業した際の基本手当の給付はもちろん、職業訓練を受ける時の教育訓練給付金、基本手当を受けている人が就職した際に支給される再就職手当など、いろいろな給付を受けることができる保険です。
失業保険の給付を受けるためには、一定の要件をクリアしていることが前提であり、申請をすることで給付金をもらうことができます。
ただ、申請してもすぐにもらえるのではなく、年齢や勤務期間にもよりますが、自己都合の場合は一般的に受給までに1ヶ月程度かかるといわれています。
自己都合が会社都合に?
自己都合とは文字通り、自分の都合で辞めた場合です。しかし、自ら会社を辞めたとしても「特定理由離職者」に該当する場合は、会社都合になるのをご存じでしょうか?
「特定理由離職者」に該当する人は、以下のケースで会社を辞めた人たちです。
(1)体力の不足や身体的な衰えにより離職
(2)妊娠、出産、育児等により離職(一定要件あり)
(3)両親のいずれかを扶養するために離職を余儀なくされた等
(4)配偶者や扶養しなければならない親族と別居生活を続けることが困難となって離職
(5)その他、結婚に伴う住所の変更、事業所の通勤困難な地への移転、公共の交通機関がなくなってしまった
などです。
ここで挙げているのは一例です。(1)の場合は、例えば年齢を重ねたことで以前と同じような仕事ができなくなったので自己都合で辞めたなど。
(2)の場合は、妊娠や出産等の女性ならではの退職事由が該当するのではないでしょうか?詳しくは、厚生労働省の資料(※)に記載されていますので、ご参照ください。
しかしながら、上記の判断基準に該当しているからといっても、必ずしも「特定理由離職者」となるわけではありません。「正当な理由」にあたるかどうかの認定は、それが正しい事由であるという証明をしなければなりません。
(1)のケースであれば、仕事の内容とともに、どのような理由で働くことが困難なのかという証明が必要です。単純に年齢を重ねただけでなく、その仕事ができなくなった理由を示すことが求められます。
仮に若い人であっても、身体的に問題が生じた場合は「特定理由離職者」に該当することもあります。例えば、カメラマンが目の病気で視力が著しく落ちてしまって作業ができなくなった、オペレーターとして働いていたが難聴になってしまい電話で話せなくなった、などが該当します。
退職する前に相談しよう
明らかに「特定理由離職者」に該当し、証明することもできるなら問題ないのですが、中には判断が難しいケースもあるかと思います。
そのような場合は、勤務先の総務担当者や関係省庁の関連団体等に相談をして、自分が該当するのかを確認すると良いでしょう。
最も確実なのが、ハローワークで相談をすることです。その際に、
・自分が置かれている状況
・退職することを考えている
・働く意思がある
ということを伝えて、自分のケースでは「特定理由離職者」に該当するのかを聞いてみましょう。
該当する場合はどのような書類等が必要になるのかを確認しておき、退職したらスムーズに失業保険がもらえるように準備しておきたいものです。
そもそも「特定理由離職者」というのは、働きたいのに働けない事情が生じてしまった人を助けるための制度です。このようなケースに陥ってしまっても、前向きに就活に取り組めるよう、ポジティブでいることも忘れないでくださいね。
(※)厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト