「保険で貯蓄をするより、自分で貯蓄をしたほうが良い」それって本当?
配信日: 2021.01.05
今回ご相談いただいた内容も、保険を解約したいというご相談でした。しかし、結論からいうと、解約をしないほうが良い保険でした。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
ご相談者の契約していた保険
ご相談者が解約を考えていた保険は終身保険です。解約したい理由を聞いたところ、保険で貯蓄をするより、自分で貯蓄をしたほうが良いからという理由でした。確かに、終身保険は貯蓄型の保険です。自分で資産運用をして積極的に資産形成をしたいという考えがあるなら、保険で資産形成をするのはお勧めしませんし、自分で運用を行ったほうが保険よりコストを抑えることができ、効率的でしょう。
しかし、今回の保険については少し事情が違います。なぜなら、ご相談者はすでに保険料を払い終わっていたからです。ご相談者はこれから家計の貯蓄額を増やしていきたいとご希望されています。であれば、まずは毎月行っている貯蓄の金額を増やすべきです。それが確実に貯蓄額を増やす方法です。そして、運用も視野に入れているのであれば、つみたてNISAなどを利用すると良いでしょう。
終身保険は、保険料をすでに払い終わっていますから、継続してもコストがかかるわけではありませんし、何より万一の際の保障です。万一の際の保障は終身保険以外にも用意しているとのことでしたが、終身保険の保険金額は400万円。ご相談者に必要な保障額を考えても、過大というほどの保険金額ではありません。つまり、この終身保険は無駄ではないということです。
それに、支払った保険料の一部は保険会社が運用してくれます。そのため、解約返戻金は少しずつ増えていきますから、このまま保険を続けても何らデメリットはないということです。
もし、終身保険を解約して自分で運用するなら
では、もし終身保険を解約して自分でそのお金を運用するなら、どのような方法が考えられるでしょうか。解約をすれば、まとまったお金が入ります。そのまとまったお金で株式等に投資をして、保険会社が運用してくれるより大きな利益を得られれば、解約したほうが良いということです。
しかし、そんな保証はないですし、そもそも、一括投資で運用するお金は余裕資金でなくてはいけません。その資金を作るためにわざわざ保険を解約して、そのお金を運用資金に充てるということはしてはいけないのです。
保険で貯蓄するのは悪いこと?
最近は、保険で資産運用をせず、自分で行うのが賢い方法という情報が増えてきたように思います。筆者も、保険の目的が資産運用というのは、基本的には賛成できません。しかし、保険商品や契約する人の属性によります。
保険で資産運用することが不適切ということが当てはまる人、当てはまらない人がいます。何のための保険なのかその保険を続けるメリット・デメリット、解約するメリット・デメリットをよく考えて判断していただきたいと思います。
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ