「奨学金の返済が楽になるから」と地方へ就職した友人。これって一体どういうこと?

配信日: 2019.10.02 更新日: 2024.09.18

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「奨学金の返済が楽になるから」と地方へ就職した友人。これって一体どういうこと?
奨学金といえば、真っ先に思い浮かぶのがJASSO(日本学生支援機構)の奨学金です。貸与型のみだったものに給付型が加わり、2020年度からは給付金額の対象者が大幅に拡充されました。ただ、給付型の対象になるのは、住民税非課税世帯とそれに近い世帯に限られています。
 
貸与型は対象になる人が広いのですが、返還の義務があります。就職してから20年近くは毎月確実に払わなければならないのはつらいものです。しかし、地方に就職し移り住むことで、都道府県や市町村・地方の企業より、奨学金返還の全部または一部の支援を受けられることがあります。
 
では、大学院へ進学し、学者の道を考えている場合はどうでしょうか? 給付を受けられる世帯であったとしても、大学院の場合は給付型の奨学金は対象外です。しかし、「特にすぐれた業績による返還免除」の枠が拡充されています。進学を諦める必要はありません。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

地方企業に就職すると受けられる、奨学金返還支援制度

JASSO(日本学生支援機構)のホームページに、【地方創生の推進】として、地方公共団体の奨学金返還支援制度についての掲載があります。地方に就職し移住することで、貸与奨学金の返還の支援が受けられるものです。地方企業への就職の推進をすることで、地域の人口減少対策がされます。
 
JASSOのHP(令和元年8月21日の時点)に掲載されていたのは、都道府県(基金設置団体)27、市町村38ですが、『内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局』HPによれば、32府県において奨学金返還支援を受けられる仕組みがあり、市町村は300以上の団体において取り組みがなされています。
 
32都道府県のうち、
・JASSO奨学金の返還支援のために基金を設置している都道府県は26県(岩手県、青森県、山形県、福島県、茨城県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、三重県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県)。
・独自の奨学金制度用意しているのが2県(青森県、岐阜県)。
・従業員に奨学金返還支援制度を有する中小企業を支援する制度があるのが4府県(京都府、兵庫県、岡山県、広島県)です。
 
基金は、企業出資部分と都道府県・市町村出資部分があり、特別交付税措置や企業版ふるさと納税、ふるさと納税による資金が活用されています。
 

支援の仕方もさまざま

対象となる方も、支援の額・方法については、各地方公共団体で違います。例えば、岩手県は支給限度額が240万円ですが、1年目から毎月の返済額と同額の支援があります。
 
このように初年度から支援を受けられるところがある一方で、3年の支援要因を満たして4年目から受けられる、または4年目に一括で受けられるところもあります。
 
また、富山県は総額で貸与額全額が支給されます。募集人数の設定はありません。翌年に前年度の返済額と同額を本人に支給し、10年目は前年度の返済額と同額を支払い、残額を貸与機関に一括返済されます。奈良県も貸与額全額ですが、募集人数が5人と少ない状態です。
 
詳しい要件や募集人数、返還支援の上限等は、各県のHPで御確認してください。
 

博士過程で免除が拡大

もし、大学院を卒業後、大学に残り学者の道を進みたい場合は、地方の支援は受けられません。しかし、特に優れた業績による返還免除が、平成30年度進学者からの大学院博士(後期)課程返還免除制度が改善、拡充されています。
 
博士課程に進学して、JASSOの第一種奨学金の貸与を受けた者について、貸与終了者免除者数の割合が45%(従来は30%)、上限が1200名に引き上げられています。
 
対象者は、30年度以降、博士(博士後期)課程、または「博士医、歯・薬・獣医額課程」1年時に入学し、第1種奨学生として採用された人です(一貫性博士課程の場合は、博士後期(3年時相当)への進級者)。
 
対象となる大学は、文部科学省関連機関が行う主な競争的研究事業に採択されている博士課程学生が在籍する大学、かつ、前年度中に、博士(博士後期)課程、または「博士医、歯・薬・獣医額課程」1年時に入学し、第1種奨学生として採用された者が1名でもいる大学です。
 
学内で、大学院博士課程の入試結果等から、返還免除の内定候補者として推薦します。推薦を受けた者について、JASSOに設置する業績優秀者奨学金返還免除認定委員会で内定者を決定します。
 
しかし、決定後に成績不振・就業期限内に博士号を取得できない場合、返還免除の内定は取り消されてしまいます。詳細は、JASSOのHP「特に優れた業績による返還免除」をご覧ください。
 
<引用・参照>
まち・ひと・しごと創生本部/「奨学金」を活用した大学生等の地方定着の促進
JASSO/特に優れた業績による返還免除
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者


 

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