2020年4月から変わる私立高校無償化制度。国と東京都の制度の違いは?
配信日: 2019.10.16
一方、各都道府県においては、ほとんどの自治体で独自の支援制度があります。ここでは、国と東京都の支援制度を中心にお伝えします。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
高等学校等就学支援金制度とは?
現在、公立・私立にかかわらず、所得要件を満たす家庭の生徒には、高校の授業料に対して支援金が給付されています。
2020年4月からは、私立高校に通う生徒に対する支援額が引き上げられます。引き上げ後のイメージは下記のとおりです。
出展:文部科学省「2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット(令和元年5月)」
現在は、年収約910万円未満の世帯に一律11万8800円が支給され、年収590万円未満の世帯に対しては、段階的に支援額が加算されている状態です。年収が低いほど、支援額が大きく、年収約910万円以上の世帯は支援の対象外です。
2020年からは、年収約590万円未満の世帯に対しては、年収に関わらず私立高校の平均授業料水準まで支援額が引き上げられます。つまり、実質無償化になります。
年収約590万円以上の世帯は変更ありませんが、この世帯年収は両親、高校生、中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安の金額です。実際は、課税所得を基準に判定されます。なお、この支援額は在校生にも適用されます。
高校生等奨学給付金制度とは?
就学支援金制度が授業料に対する支援に対し、教科書費、修学旅行費、学用品費など、授業料以外の教材費を支援するのが奨学給付金制度です。この制度は2014年から行われており、対象者は生活保護世帯、住民税非課税世帯です。
支援額は国公立か私立か、生活保護世帯か非課税世帯か、第一子が第二子以降か、など要件によって異なりますが、約3万円〜14万円の給付を受けることができます。2018年は約40万人に対して給付が行われました。
東京都の私立高校授業料支援制度
東京都では、年収約760円未満の世帯に対して、都内の私立高校平均授業料相当水準まで支援を行っています。2018年度は授業料の平均が44万9000円で、その水準まで支援を行っています。
出展:文部科学省「都道府県別私立高校生(全日制)への授業料等支援制度」
2020年から始まる国の支援は、年収約590万円未満の世帯に対し、私立高校授業料相当額の支援を行うものですから、東京都は国に先駆けて手厚い支援を行っていることになります。
東京都は全国的に見ても支援が手厚い自治体ですが、東京以外でも神奈川、千葉、埼玉、大阪、京都などは、国の支援に大きく上乗せをして支援を行っています。
とはいえ、私立高校の授業料は都道府県によって大きく異なります。東京都では2018年の私立高校平均授業料は44万9000円でしたが、宮崎県では約28万円となっています。
そのため、年収約250万円未満の世帯に至っては、国の支援だけで私立高校の授業料平均額を超えているため、宮崎県独自の支援は薄くなっています。
お住まいの自治体の制度を確認
これから私立高校に進学する家庭にとって、高校でどの程度の学費が発生するのか、家計にとって大きな問題です。
国の制度においては、私立高校への支援水準を引き上げますが、そもそも目指す高校の授業料はいくらなのか、その志望校の授業料水準まで支援はあるのか、自治体独自で行っている支援にはどのようなものがあるのか、知ることが大切です。まずは、調べてみてはいかがでしょうか?
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ