飲食店がテイクアウトやデリバリー販売を始めるうえでの注意点

配信日: 2020.05.29

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飲食店がテイクアウトやデリバリー販売を始めるうえでの注意点
緊急事態宣言からすでに1ヶ月以上、その間テレワークが増え、不要不急の外出を極力避けるようになり、街での人の流れが変わってきています。そのような状況下での飲食店の経営は、お客さんが激減したうえ、営業時間の短縮を迫られたことで大打撃を受けています。
 
その影響を食い止めるためにテイクアウトやデリバリーでの販売を行うなどして、経営を維持しようとしている店舗も見られますが、飲食店がテイクアウトやデリバリーを始める場合に、注意しなければならない法令等を見ていきましょう。
 
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

法律上、基本的には影響はありませんが・・・

基本的には通常店内の厨房で調理した料理をテイクアウトやデリバリーで販売する場合は、飲食店営業許可の範囲内となるため、新たな許可等の取得は必要ありません。 
 
しかし、テイクアウトしたお客さんが家で調理する必要があるものや、移動販売等の店舗とは違う場所で販売する場合には、新たな許可取得の必要性がある可能性が高いです。
 
例えば、アイスクリームやハムのような加工食品を製造し単体でテイクアウト販売する場合は、それぞれ「アイスクリーム類製造業」「食肉製品製造業」の許可が必要です。
 
また店舗が専門店の場合、例えば焼肉店が生肉を販売する場合は「食肉販売業」「食料品等販売業」、タレを売る場合は「ソース類製造」「調味料等製造業」などの許可が必要であり、ラーメン店が自家製麺を生麺の状態で販売する場合には「めん類製造業」、自家製ケーキをテイクアウトで販売をする場合には「菓子製造業」の許可が必要となる場合があります。
 
上記で「必要となる場合があります」という言い方をしているのは、各自治体や保健所によって解釈が異なる場合があるからです。
 
もし、別の営業許可が新たに必要な場合には、その許可に必要な設備の工事が発生する場合がありますので注意してください。よって、テイクアウトやデリバリーを始める場合には、まず管轄する保健所に事前相談のうえで開始することをお勧めします。
 
また酒類の販売に関して、飲食店がテイクアウト用に販売するためには酒類小売業免許が別途必要ですが、今回の影響で、これとは別に「期限付酒類小売業免許」が設けられることになりました。これは令和2年6月30日までに提出のあった免許申請書に限り、免許付与から6ヶ月間の期限が付されます(令和2年4月9日付国税庁酒税課報道発表資料)。

法令以外でも考えておかなければならない、見ておかなければならない点は

お店で提供する場合と違ってテイクアウトであれば、料理に合わせた持ち帰り用の容器や割り箸、持ち帰り用の袋等も準備する必要があります。また容器は汁が漏れないものや持ち運んだときに型くずれしないもの、持ち帰り用の容器を捨てる際のルールが地域の実情に即したものなど、使いやすさを考慮しつつもコストを抑えた容器を選びましょう。
 
さらに、デリバリーであれば配達のスタッフを自前か外注か、配達エリアはどこまでかなども決めておかなければなりません。
 
また、さまざまな自治体で支援があります。
 
例えば、東京都では新たにテイクアウト、宅配、移動販売を開始する際の初期経費等を助成する制度ができましたし、仙台市ではテイクアウトやデリバリーが利用可能な店を紹介するウエブサイト、「テイクアウトはじめましたプロジェクトin仙台」を開設しています。
 
また福岡市でも、一定のデリバリー事業者や飲食店を通じて1回1000円以上の利用を電子決済した利用者に、500円分のポイントもしくはクーポン券を還付する取り組みがあります。営業地域の自治体によって、どういう補助や助成などがあるかも確認したうえで、開始するのがよいでしょう。

営業許可や自治体等の支援も大事ですが、一番大事なのは衛生面

料理のテイクアウトやデリバリーを始めるにあたって、許可や各自治体の支援を調べる必要があります。しかし、何といっても一番重要なのは衛生面の管理であり、「安心・安全」な商品の提供です。
 
飲食店の関係者であれば、店舗で提供する料理の衛生管理等の知識はあると思いますが、店で出す料理とテイクアウトやデリバリーでは勝手が違います。
 
これからの季節は、気温も湿度も上がり、食中毒の発生のリスクも高まりますので、より注意して営業するようにしましょう。また、購入者もできるだけ早く食べる必要があります。こんな時期だからこそ、普段行かないお店の味を自宅で楽しむのもよいかもしれませんね。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表


 

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