インフルエンザで一週間ほど会社を休まなくちゃいけない。これって有休扱いになるの?
配信日: 2019.02.14 更新日: 2019.08.29
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。
弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
インフルエンザで一週間出勤できない!
会社員Fくんは体調が悪く、熱っぽいうえにセキも止まりません。「ひょっとして…」と医者に見てもらったら「(季節性)インフルエンザです。一週間ぐらい会社に行っちゃダメですよ」と診断されてしまいました。
少しもうろうとしながらも会社に連絡しようとしたのですが、もうろうとしていても、お金のことが気になるFくん。連絡すると「医者の言うとおり会社を休め」と言われるに決まっています。もちろんそうしないといけないことは十分、分かっています。
「これって有給休暇扱いになるのかな?」と悩んでしまいました。Fくんの年次有給休暇はあと1日しか残っていません。「一週間休むと欠勤扱いになってしまう。給与は減っちゃうのかなあ」。これってどうなっちゃうのでしょうか?
*物語はフィクションです
インフルエンザは有休扱いになるの? 東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
一般的に、社員が季節性インフルエンザに罹患した場合、会社は、本人からの申請に基づいて有給休暇を取らせます。
仕事が忙しいことを理由に、仮に本人が積極的に有給休暇を申請しなかったとしても、会社は社員に促して有給休暇申請を出させるべきでしょう。なぜなら、会社には、当該社員だけではなく、全ての社員の健康に配慮する必要があり、事業所内での蔓延を防止する措置を講じなければならないからです。
ですので、Fくんも、年次有給休暇の申請をして会社を休むのが一般的な流れです。
ところが、今回のFくんの場合、有休が残り1日ということですので、仮に一週間休むとすれば、もともとの休日(土日)を除く、例えば残りの4日間は「病欠扱い」での欠勤になります。
就業規則に特別な定めがある場合、インフルエンザによる病欠では休業手当が支給されることがあります。しかし、このような定めがある会社は限られています。就業規則にそのような定めがない場合は、ノーワーク・ノーペイの原則で、Fくんは会社に対して、欠勤した分(有給休暇の部分は除きます)の給与を請求できません。
そうすると、Fくんとしては、給与欲しさに、他の社員に感染させるおそれがあっても出社したいと思うかも知れません。しかし、欠勤したことで会社からの給与(上記の例では4日分)がなくなってしまった場合、何らの補償も受けられないかというと、そうでもありません。
健康保険には、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合は、健保組合から「傷病手当金」を受けられる制度があります(3日間の待機期間には土日も含まれます)。支給額は、給与を日額に換算した際の3分の2程度です。
就業規則をよく確認しよう
ちょっと気の毒ですが、Fくんの場合、給与に少し影響が出てしまいそうです。有給休暇を使おうとしても、もう使ってしまっている場合、どうしても欠勤扱いとなってしまいます。
季節性インフルエンザの場合、法律によって就業禁止がなされているわけではありません。そうすると、会社がFくんに休業を命じた場合、会社はFくんに休業手当を支払う必要がありますから、休業までは命じないかもしれません。
Fくんとしては、他の社員に感染させないためにも病欠せざるを得ないところですが、その場合、「傷病手当金」を受給できるとしても、給与の100%の額にはなりません。
思わぬ病欠とならないために、有給休暇の消化には、気を付けておかないといけませんね。冷たい言い方に聞こえてしまうかも知れませんが、「(季節性)インフルエンザにかかったのは会社のせいではなく自分のせい」ということが基本にあるようです。
いいことはひとつもありませんので十分気を付けたいものです。また、こんな時のためにも、会社の就業規則はよく確認しておきましょう。
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
監修:池田理明(いけだ みちあき)
弁護士/東京桜橋法律事務所