更新日: 2020.03.11 子育て

お子様の育てにくさを感じたら。 療育手帳で受けられる福祉の内容って?

お子様の育てにくさを感じたら。 療育手帳で受けられる福祉の内容って?
Yさんの息子は2歳6ヶ月。同じ年齢の子たちはどんどん言葉を覚えているのに、今も息子はひと言も話せないまま。かんしゃくを起こすことも増えて、Yさんは息子の育てにくさを感じています。
 
そこで、知的障害の子を持つかつての友人に思い切って相談したところ、驚いたことに特徴が自分の息子ととても似ていました。そのことを夫と両親にも相談。
 
夫は「俺も今の息子と同じ年の頃、全然話さなかったらしい。ちょっと遅いだけだよ」、両親は「うちの孫に限って障害なんて」と取り合ってくれません。
 
葛藤の日々を送っていたある日、ふと、前述の友人から聞いた療育手帳のことを思い出しました。「療育手帳を取得すると、いろんな優遇が受けられるよ」とのこと。
 
しかし、療育手帳を取得すること、イコール、息子の障害を認めることと考えてしまい、なかなか動く気になれません。本記事では、療育手帳とは何か、そして、取得することで何ができるのかを分かりやすく解説します。

酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

療育手帳とは?

療育手帳は、主に「知的障害」を抱えた方に交付される障害者手帳の一種です(ただし、発達障害でも発行される場合があります)。取得するには、市区町村の保健福祉センターなどを通じて、児童相談所等で検査を受ける必要があります。
 
この検査で、発達指数(DQ)や知能指数(IQ)が主に75以下(自治体によっては70以下)と判定されると、療育手帳が交付されます。
 
このDQやIQに応じて決められた障害の程度に区分され、支援の内容が決まります。それでは、療育手帳で何ができるのかを見ていきます。

療育手帳で受けられる福祉の内容は幅広い

療育手帳を取得することで、受けられる福祉制度は多岐にわたっています(図1)。
 


 
手帳を取得することで、こうした幅広い制度をスムーズに受けることができることが、療育手帳取得の大きなメリットです。制度の中には、手帳の取得が受給要件となっているものもあります(後述)。
 
注意点としては、療育手帳で受けられる福祉制度は、各自治体によって違う点です。これは、全国一律で受けられる国の制度と、自治体独自の制度があるためです。
 
また、家族の収入や扶養家族の人数などによっては、支給が制限される制度があることも注意してください。こうした制度のすべてを詳しく説明することはここではできませんので、代表的な手当と税金の優遇に絞って、具体的に解説します。

比較的軽度の障害から受けられる「特別児童扶養手当」

国による代表的な手当に、「特別児童扶養手当」があります。この手当は、精神、知的または身体障害のある満20歳未満の児童を養育している保護者に支給されるもので、児童の障害に応じて、1級は月5万2200円、2級は3万4770円です(平成31年4月時点)。
 
これは、比較的軽度な障害も対象としている点が特徴です。ただし、所得制限があることに注意してください(※2)。
また、重度の障害児に対しては、同じく国の制度である「障害児福祉手当」や「特別障害者手当」もあります(※3)。
 
そして、覚えておきたいのが自治体独自の給付金。重度障害者の在宅支援手当や先天性障害児童の養育者への手当(※4)など、対象者や名称、内容は、各自治体によってさまざまですので、お住まいの市区町村で確認してみましょう。

療育手帳の取得で受けられる「障害者控除」

税金面での代表的な優遇制度として、障害者控除や特別障害者控除(重度障害者の場合)があります。年末調整や確定申告によって障害者控除を受けると、所得税や住民税の額を抑えることができます。
 
Yさんの夫がこの障害者控除を使うには、原則、療育手帳などの障害者手帳を取得していることが要件です(※5)。障害者控除の適用は年末調整で行うことができるので、療育手帳の申請をしたら必ず勤務先での手続きを忘れないようにしましょう。

気になったらまず相談を

図1に示したとおり、療育手帳を取得することによって、給付や税金面以外にも公共料金や交通費の減免など、多様なサービスを受けることができます。
 
前述のYさんは、意を決して児童相談所の検査を受けた結果、息子は軽度の知的障害と判定され療育手帳が発行されました。その後、支給された給付金や税金の減免分は息子の将来を考えできるだけ貯蓄にまわしたそうです。
 
近年、知的障害に対する認知度の高まりから(※6)、療育手帳を持つ方の数は大きく増加しています(図2)。
 


 
しかし、Yさんのように検査を受けるまでに悩むことがあるのも事実。申し込みから検査まで数ヶ月かかることもありますので、まずは肩の力を抜いて、お住まいの地域の保健福祉センターなどへ相談してみると良いでしょう。
 
(出典および注釈)
(※1)横浜市「障害福祉のあんない2019 障害程度別該当事業一覧表」

(※2)厚生労働省「特別児童扶養手当について」

(※3)厚生労働省「障害者福祉手当について」
(※3)「特別障害者手当について」

(※4)神奈川県「神奈川県在宅重度障害者等手当制度」
(※4)横浜市「障害児育児手当金の支給」

(※5)国税庁「No.1160 障害者控除Q&A」『所得税法上、障害者控除に該当する障害者とは、「身体障害者手帳」に身体の障害がある人として記載されていることを要件としています』

(※6)内閣府「参考資料 障害者の状況」2.年齢階層別の障害者数 (2)知的障害者 『以前に比べ、知的障害に対する認知度が高くなり、療育手帳取得者の増加が要因の一つと考えられる』

(※7)内閣府「参考資料 障害者の状況」3.性別の障害者数(4)精神障害者 図表3 年齢階層別障害者数の推移(知的障害児・者(在宅))
 
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  

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