更新日: 2020.04.09 その他暮らし

内縁関係の厚生年金保険・健康保険は、婚姻関係と同等って本当?

内縁関係の厚生年金保険・健康保険は、婚姻関係と同等って本当?
内縁関係にある男女は、婚姻届を出していないだけで、それ以外は基本的に婚姻関係にある夫婦と変わりません。

したがって、内縁関係にある男女にも婚姻関係にある夫婦に存在する権利が広く認められており、厚生年金や健康保険については婚姻関係にある夫婦と同等として扱われ扶養家族になることが可能です。

一方、税金や相続に関しては、内縁関係にある男女と婚姻関係にある夫婦とでは取り扱いが異なります。

新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

内縁関係は単なる男女交際の関係とは異なる

内縁関係は、婚姻の意思を持って夫婦共同生活を営んでいるのですが、 婚姻の届出はしていないので、法律上は夫婦として認められない関係をいいます。単なる男女交際の関係とは異なります。社会的には実質的に夫婦と認められますので、婚姻に準じた法律関係が発生します。
 
例えば、内縁関係でも「夫婦の同居・協力義務」「貞操義務」「婚姻費用の分担義務」「日常家事債務の連帯責任」「夫婦財産制に関する規定」の適用など一定の法的保護が与えられています。
 
したがって、不当な内縁関係の破棄や、不貞行為(不倫)については不法行為となり、慰謝料の支払い義務が発生します。加えて、内縁関係継続中に2人で築いた財産については、内縁解消に伴って財産分与が認められます。

内縁関係の健康保険・厚生年金保険

健康保険や厚生年金保険では実態が重視されます。例えば、厚生年金保険法第3条2項(用語の定義)では「この法律において、『配偶者』、『夫』および『妻』には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」とされています。
 
したがって、健康保険・厚生年金保険と同様、「被保険者により主として生計を維持されていること」などの条件を満たした場合には、内縁関係の妻(夫)も健康保険・厚生年金保険の扶養家族になることができます。
 
内縁関係の証明は、内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本や被保険者の世帯全員の住民票(個人番号の記載がないもの) などにより証明します。

税法は内縁関係に厳しい

所得税には税金を軽減する各種所得控除があります。
税法でいう配偶者とは、民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者をいいます。内縁の妻(夫)は、民法の規定による配偶者ではありません。
 
したがって、配偶者控除・配偶者特別控除や障害者控除は対象になりません。一定の医療費や社会保険料は、「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族」のために支払った場合でも所得から控除できますが、内縁の妻(夫)のために支払ってもこれらの控除は受けられません。
 
生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、一定の生命保険契約等で、その保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者、またはその配偶者その他の親族とするものをいいますので、内縁の妻(夫)が受取人になっている場合は生命保険料控除の対象外です。
 
次に相続について見てみましょう。内縁関係にある人は、お互い相続人になれると考える方が少なくないようですが、法律上、内縁関係の人は相続人に含まれません。
 
遺産を分け与えるには、遺産の一部または全部を内縁の妻(夫)に遺贈するという趣旨の遺言書を作成することが必要です。
 
また、生前に、内縁の妻(夫)に対し贈与を行ったり、死亡により効力が発生する贈与契約(死因贈与)を締結したりする方法もあります。内縁の妻(夫)を受取人にする生命保険に加入することも有益です。
 
もし、亡くなった妻(夫)に法定相続人となるべき者がまったくいない場合、特別縁故者に対する財産分与の制度を利用することによって、内縁の夫(妻)が遺産を取得できる場合もあります。

まとめ

健康保険・厚生年金保険では実態を重視することから、内縁関係を証明できれば法律上の夫婦と同等に扱われますので、健康保険や厚生年金保険の扶養に入れることができます。また、どちらかが亡くなった場合には遺族年金も受給できます。
 
一方、税法では形式を重視しますので、内縁関係にあったとしても夫婦としてではなく、赤の他人と同様に扱われます。遺産を分け与えるには遺言を作成するなどの生前の対策が必要です。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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