更新日: 2020.05.29 その他暮らし
事業を行っている方向け・新型コロナウイルスを乗り切る資金繰り対策とは(2)
このような状況のなかで、フリーランスの方を中心とした自ら事業を行っている方のなかには、仕事が減ってしまい資金繰りに不安を抱えている方も少なくないと思われます。
なかなか新型コロナウイルスによる経済縮小の出口が見えないのですが、資金繰りに行き詰まってしまうと事業継続を断念せざるを得ないこともあります。
そこで本稿では、前回に引き続き、事業主の方向けに、現状の厳しい資金繰りを乗り越えるための方法について、本稿作成時点(2020年4月30日)現在の情報をもとに、お伝えします。前回とあわせてご確認ください。
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。
税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。
中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。
目次
税金や社会保険料の支払いを猶予してもらう
新型コロナウイルス感染症の影響によって、税金や国民健康保険・国民年金保険・社会保険料の納付が困難な場合には、猶予を受けることができます(免除ではありませんので注意が必要です)。
税金は所轄税務署、国民健康保険や国民年金保険は居住地の市区町村、社会保険料は所轄年金事務所が相談先になります(※1)。
従業員の休業手当について助成金の申請をする
従業員の方に休業手当を支払う場合には、雇用調整助成金によって休業手当の支出分を補うことができます。ただ、雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症対応で拡充が続くなど、一般の方にはとてもわかりにくい制度になっています。
代理申請を行えるのは社会保険労務士という国家資格を持った方のみですので、社会保険労務士に相談してみることがよいでしょう。
雇用調整助成金について、社会保険労務士の連帯責任を解除する方向で検討されているようですので(令和2年4月30日時点)、これまでは受任に消極的だった社会保険労務士の方も積極的な姿勢に変わる可能性があります。
また、東京都には、「新型コロナウイルスに係る休業等支援事業」という、無料で専門家派遣を行って雇用調整助成金等の相談・助言をする制度があります(※2)。
不動産賃借料の支出を抑える
店舗や事務所の賃料も固定費ですので、売上が減少しても定額の支出となり、負担が重くなる場合があります。
◇減免の交渉をしてみる
賃料負担の減免について、貸主に相談をしてみるという方法があります。
ただし、融資や支出の削減等の手を打ってもなお資金繰りに窮する場合に行うものと認識する必要があります。そして、この交渉はデリケートなものであり、貸主に直接相談することも難しいでしょうから、間に入っている不動産会社の方を通してお願いすることになるでしょう。
貸主側の事情もあり、賃料の減免は貸主側の負担になってしまいますので、あくまでも「お願いをしてみる」というスタンスであることに留意が必要で、交渉が失敗した場合のリスクについても念頭に置いておく必要があります。
◇賃料に対する公的補助の状況
賃料に対する公的補助については、賃料減免に応じた貸主側に向けたものと、借主側向けのものとがあります。
このうち借主側向けのものは、例えば鎌倉市が市内中小事業者に対して最大で100万円(1月あたり50万円を2ヶ月分)の賃料を補助する「中小企業家賃支援給付金(仮称)」を創設すると公表しています。その他の自治体でも動きがあるところがあります。
◇敷金保証金から充当してもらう方法
賃料の減免が難しい場合には、賃料について預け入れている敷金保証金から充当してもらうという方法や、支払いを猶予してもらうという方法があるかもしれません。
ただし、敷金保証金から充当してもらった場合、これは減免ではありませんので、将来に返還される敷金保証金の額が減額されることを理解しておく必要があります。
水道光熱費の支払いを猶予してもらう
経済産業省では、新型コロナウイルス感染症の影響によって電気・ガス料金の支払いが困難な方に対して、その料金の支払猶予(免除ではありません。)について柔軟な対応をすることを、電気・ガス事業者へ要請しています。
水道料金についても、各自治体において同様の措置がとられているようです。ご利用の電気・ガス事業者や自治体の水道担当部署へ相談してみるとよいでしょう。
既存借入金の返済条件を見直してもらう
すでに事業に関わる借入金があり、返済負担が重い場合は、まずは前回の記事で紹介した無利息・低利の融資制度で資金調達を行い、借り換えを行う方法が考えられます。
しかしながら、融資が実行されない等、資金繰りが改善されない場合には、既存の借入金の返済条件の見直しについて金融機関に相談する方法があります。これをリスケジュールと言います。
ただし、リスケジュールにはデメリットがあります。リスケジュールに応じてもらって月々の元本返済金額を減免してもらった場合は、新規の融資をしてもらうことは難しくなってしまいますので、留意する必要があります。なお、一般的に利息は減免の対象とはならず、元本部分のみが対象となります。
住宅ローンの返済が苦しくなってしまった場合も、金融機関に返済条件緩和について相談できます(※3)。
事業主の方は1人で悩まない
事業を行っている方は、新型コロナウイルス感染症の影響で先行きが見通せず、不安になっていることと思います。相談できる相手がいないとお悩みかもしれません。
そんなときは1人で悩まず、商工会議所や商工会、よろず支援拠点といった、お近くの公的機関へ相談してみることをお勧めします。みんなで知恵を絞って、戦後最大の危機ともいわれるこの状況を乗り越えていきましょう。
(※1)
国税庁「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方には猶予制度があります」
日本年金機構(国民年金)「新型コロナウイルスの感染症の影響により国民年金保険料の納付が困難となった場合の免除制度の活用について」
日本年金機構(厚生年金)「新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度について(納付の猶予(特例)に係る内容を追加しました。)」
(※2)東京都 TOKYOはたらくネット「新型コロナウイルス感染症対策」
(※3)金融庁「新型コロナウイルス感染症の影響による資金繰りやローンの返済等でお困りの皆様へ」
(参照)よろず支援拠点(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))