現在は低金利時代に入り、頭金なしのフルローンを組める金融機関も増えてきています。そこで頭金を用意せずに住宅ローンを組む場合のメリット・デメリットについて徹底解説します。
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監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
住宅ローンの頭金とは
住宅ローンの頭金とは、住宅を購入するうえで最初にまとめて現金で支払うものです。別の言い方をすると、住宅ローンを利用しないで自己資金で支払う金額になります。この頭金の支払いは、売買契約を結んでから実際に家を引き渡すまでの間に行われます。
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家を買うときは頭金が必要?
金融機関によっては、頭金を用意していないと、住宅ローンが通らない場合があります。では一般的に、頭金はどれくらい用意されているのでしょうか。
国土交通省住宅局が発表した「令和2年度 住宅市場動向調査」によると、住宅購入時の自己資金比率は次のとおりです。
●注文住宅新築……26.0%
●分譲戸建住宅……25.4%
●分譲マンション……34.3%
住宅の形態によって自己資金比率は異なりますが、住宅購入額の2~4割ほどの頭金を用意していることが分かります。しかしあくまでも平均の比率になるため、すべての人が一定額の頭金を用意しているわけではありません。
家計の状況や住宅ローンを利用する金融機関の貸し付け条件などを考慮して、頭金を入れるかどうかを決めるのがよいでしょう。
また、頭金の理想が2割といわれるのは、住宅金融公庫がかつて融資上限を物件価格の8割までに定めていた名残だと考えられています。
【関連記事】
住宅ローンの頭金はいくら必要? 頭金の目安やメリット・注意点を紹介
頭金がなくても住宅ローンを組むメリット
頭金がなくても、住宅ローンを組んで物件を購入できます。
頭金を用意しないで物件を購入するメリットは以下の4点です。
●気に入った住宅をすぐに購入できる
●手持ちの現金を残しておける
●現在の家賃支払額が住宅ローンの月々の返済額よりも大きい場合でもすぐに住宅ローンを組める
●住宅ローン控除をフル活用できる
それぞれについて詳しく説明します。
気に入った住宅をすぐに購入できる
頭金を用意しないメリットの1つ目は、気に入った住宅をすぐに購入できること。せっかく高いお金を出して買うなら、気に入った物件に住みたいものです。
「不動産は水物」とよくいわれます。気になった物件が、頭金が貯まるまで残っているとは限りません。逃した魚は大きかったとならないために、頭金を貯まるのを待つよりも先に購入を決めたほうがよい場合もあります。
手持ちの現金を残しておける
メリットの2つ目は、手元に現金を残しておけること。これは、ある程度の現金はあるけれど、あえて頭金を出さない選択をした場合のメリットです。
住宅ローンを完済するまでには、子どもの進学でまとまったお金が必要になったり、親の介護で仕事を減らさざるをえなくなったりと、さまざまな要因で将来的に貯蓄が減る可能性があります。不測の事態に備えて、手元に現金を残しておくと安心です。
また、住宅を建築中にオプションをつけたり、素材などを変えたりすると、当初の予算よりもお金がかかる場合がある点にも注意しましょう。手元に現金を残しておけば、追加費用が発生しても対応できます。
現在の家賃支払額が住宅ローンの月々の返済額よりも大きい場合でもすぐに住宅ローンを組める
メリットの3つ目は、現在払っている家賃が高い場合です。現在の賃貸物件の家賃のほうが、購入予定物件の月々の支払いよりも高い場合、頭金が貯まるまでの期間、住居費がかかります。
頭金が貯まるのを待つよりも、すぐに住宅を購入して、その後貯蓄を繰り上げ返済に回したほうが、総支払額は少なくなる可能性もあります。
しかし住居にかかるお金は、住宅ローンの支払額だけではありません。現在の賃貸の費用と比較する際は、固定資産税や今後予想される修繕費用などを加味して考えましょう。
住宅ローン控除をフル活用できる
頭金なしで住宅購入費用をフルローンにした場合、住宅ローン控除が最大限に活用できるメリットがあります。
住宅ローン控除とは正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、住宅ローンを組んだときに一定期間、年末時点の借入残高の一定の割合に相当する額が所得税から控除される仕組みです。
控除期間中は、毎年末時点の住宅ローン残高の1%(最大40万円)が所得税から控除されます。つまり住宅ローン残高が多い方が控除される金額も多くなるのです。
また、住宅ローン残高の1%に該当する金額が、実際に支払った所得税額よりも多かった場合、残った分は翌年の住民税から差し引くことができます。
頭金をいれずに住宅ローンを組むデメリット
頭金がなくても住宅が購入できないわけではありませんが、不利な点も出てきます。頭金なしで住宅ローンを組む際には、デメリットについても十分理解しておきましょう。
代表的なデメリットは次のとおりです。
●住宅ローンの審査が厳しくなる
●借入総額が多くなり返済期間が長くなる
●金利優遇が受けられない場合がある
●売却したときに借金だけが残る可能性がある
それぞれについて詳しく解説します。
住宅ローン審査が厳しくなる
頭金を用意できないと、住宅ローンの審査が厳しくなる可能性があります。住宅ローンを利用して購入する物件は、ローン完済までは金融機関の抵当権が設定されます。
万が一住宅ローンが払えなくなったときには、金融機関が物件を売却し、残った住宅ローン残高の回収に充てます。しかし、物件を売却した金額が住宅ローン残高より安い場合、残高全部を回収できず、金融機関は損をしてしまうのです。
このように、頭金を用意できないと金融機関側のリスクが高まるため、審査が厳しくなります。
借入総額が多くなり返済期間が長くなる
頭金なしで住宅ローンを組むと、借入総額が多くなります。住宅購入時に頭金を現金で支払うと、利息はかかりません。しかし、頭金なしで住宅購入にかかる費用をすべてローンにすると、当然利息の負担も増えて毎月の返済額も高くなるのです。
例えば住宅価格が3500万円で頭金なしと頭金を入れた場合の総返済額や毎月の返済額をみてみましょう。借り入れの条件は次のとおりとします。
・金利:年1.33%の固定金利
・返済期間:35年
・返済方式:元利均等返済
頭金なし | 頭金350万円(住宅価格の10%) | 頭金700万円(住宅価格の20%) | |
---|---|---|---|
借入金額 | 3500万円 | 3150万円 | 2800万円 |
総返済額 | 4379万4884円 | 3941万5315円 | 3503万5787円 |
毎月の返済額 | 10万4273円 | 9万3846円 | 8万3419円 |
※住宅保証機構株式会社の「返済額の試算」を使用してシミュレーションしております。
頭金なしの場合、総返済額や毎月の返済額が頭金を入れた場合に比べて高くなっていることが分かります。
また、毎月の返済の負担を減らすと、おのずと返済期間が長い住宅ローンを組むことになります。定年退職後もローンが続くと、返済が大きな負担になりかねないため、できれば避けたいところです。
さらに借入総額が増えると、ローン保証料や融資手数料などの諸費用も増加する点にも注意しましょう。
金利優遇が受けられない場合も
金融機関によっては、頭金があると金利を下げるといった金利優遇制度を取り入れているところもあります。頭金を入れた場合に優遇される金利は、0.1%から0.2%です。
その他、融資率も金利に大きくかかわってきます。融資率とは、住宅価格に対する借入金額の割合を指します。住宅価格が3500万円で全額をローンにする場合、融資率は100%になります。
フラット35などを利用する際には、融資率が90%を超えると金利が高く設定される点に注意しましょう。
微々たるものと感じるかもしれませんが、住宅ローンは金額や返済期間が長いため、総支払額で考えると差額も大きくなります。
売却したときに借金だけ残る可能性
住宅ローンを支払っている最中に、住居を手放す事態になる可能性があります。そのときに物件価格が下がっていると、売却代金では住宅ローン残高を相殺できず、借金だけが残ってしまう事態になりかねません。
また、資金に余裕がないと、物件の売却を急がなくてはいけなくなり、不利な条件で売却しなければならない可能性も考えられます。
頭金を入れておくと、住宅ローンの借入額が少なくなるため、万が一のときに多額のローン残高がある事態を回避しやすくなります。ローン残高に余裕があれば、売却時の条件を少しでもよくすることにつながります。
頭金なし住宅ローンのメリット・デメリットを知って住宅購入の参考にしよう
頭金なしで住宅を購入するのは、メリットもデメリットもどちらもあります。住宅ローンを組むときには、双方を考慮しましょう。金融機関の公式ホームページにある返済シミュレーションを利用して決めるのもよいでしょう。
大切なのは、今だけでなく将来のライフイベントや不測の事態に備えながら計画を立てていくことです。今後の生活が破綻しない返済プランを立てましょう。頭金なしにする場合は、余裕資金ができたときに繰り上げ返済を利用することを視野に入れておくとよいでしょう。
出典
※国土交通省住宅局「令和2年度 住宅市場動向調査」
※住宅保証機構株式会社「返済額の試算」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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