「離婚しても元夫の年金を半分受け取れる」って本当? 年金分割の仕組みと注意点
配信日: 2019.11.21
そして、離婚の際に問題に至りやすいのが婚姻期間中の財産の分割。共働きか専業主婦か、にかかわらず婚姻期間中に稼得した財産は夫婦の共有財産と見なされます。
この財産には現在所有している金銭・物品のみならず、将来受け取ることができる老齢年金なども含まれます。
今回は夫婦が残念ながら離婚してしまった際、厚生年金を夫婦間で分け合うことができる年金分割制度について説明します。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
「年金分割制度」
日本の公的年金は階層構造で表せます。1階部分は基礎年金と呼ばれる国民年金があり、2階部分に厚生年金、3階以上に確定拠出年金などの私的年金や企業年金などで構成されています。
年金分割制度の対象となっているのは、この2階部分の厚生年金となります。厚生年金の老齢給付金の支給額は、現役時代に支払っていた保険料の額と加入期間によって決まります。
年金分割制度は、婚姻期間に相当する加入期間と支払っていた保険料の厚生年金記録を離婚する夫婦間で按分する制度となります。ですから共働きで夫婦それぞれ厚生年金の加入者であった場合は、双方の厚生年金の給付額を合計し、所定の按分割合で年金を分割することになります。
仮に婚姻期間中、妻の厚生年金の報酬比例部分が6万円、夫の報酬比例部分が4万円であった場合、分割制度を利用すると妻5万円・夫5万円が分割後の年金額となります。
按分割合は後述する「合意分割」「3号分割」の2つの制度を利用することで定めることができます。
年金分割制度の対象となるのは厚生年金などの公的年金に限られています。3階部分にあたる私的年金や企業年金なども分割対象に含まれてもよいように思えますが、残念ながら現状では年金分割の対象とはなっていません。
これらの年金は財産分与の対象としては認められていますが、年金という長期間にわたって定期的に支払われる財産の価値をどう評価し、分割するのかが課題となっており、個別協議が調わなければ裁判などで解決を模索する必要があります。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
「合意分割制度と3号分割制度」
年金分割を申請する際、まず按分割合を決めることが必要です。当事者双方の合意が得られればいいのですが、合意に至れなかった場合は家庭裁判所に審判によって按分割合を定める合意分割を行います。
しかし、離婚に至っている場合、共同で申請を行うことがさまざまな理由で困難となってしまうこともあります。そこで合意分割とは異なる分割方法として、夫婦どちらか一方の請求により自動的に按分割合が決定される3号分割制度が整備されることになりました。
ただし、3号分割については平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間が対象など、条件がありますので注意が必要です。
按分割合は、3号分割は2分の1、合意分割は原則2分の1とされていますが、別居の有無や期間などの夫婦関係や家計に対する寄与度を個別に判断して按分割合が定められます。
まとめ
男女共同参画社会が推進され、女性も多くの収入を得ることができるようになりつつありますが、夫婦で家事や育児などの負担割合が異なるため十分な時間を就労に充てることができないケースもあります。
稼得する収入が少なければ公的年金が国民年金のみといった場合も考えられます。円満に人生を送ることができればいいのですが、離婚に至ってしまった場合は元配偶者よりも少ない年金で暮らさざるを得なくなってしまうかもしれません。
そのようにならないため、年金分割制度によって婚姻期間中に得られた厚生年金の給付額を夫婦間で合計し、所定の按分割合によって分割することができます。
しかし、分割請求の期限は離婚や婚姻の取り消しを行った翌日から起算して2年間と短いため、請求期限切れには注意が必要です。年金分割請求の手続きは公正証書の作成や家庭裁判所での審理、年金情報の提供なども必要となります。
詳細な方法や手続きは最寄りの年金事務所で相談を受け付けてくれますが、困難なようでしたら弁護士や社会保険労務士の利用も検討しましょう。
出典
厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計の年間推計」結果の概要
日本年金機構「離婚時の年金分割」
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表