最終更新日: 2020.07.20 公開日: 2020.07.22
年金

年金改正で年金はどう変わるの?受取開始時期の選択肢が拡大するって本当?

執筆者 : 林智慮

第201回通常国会にて「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、令和2年6月5日に公布されました。私たちの生活の「万が一」を支える年金、どう変わるのでしょうか。
 
林智慮

執筆者:

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

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林智慮

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執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

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終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

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繰下げ受給の上限が75歳に

現行では、年金の繰下げ上限が70歳であるため、年金の受取開始を60歳から70歳の間で選ぶことができます。
 
今回の改正で、繰下げ受給の上限年齢が現行70歳から75歳に引き上げられます。それにより、年金の受取開始を60歳から75歳の間で選ぶことができるようになります(年金受給開始年齢は現行のままです。開始年齢が引き上げられるのではありません)。
 
繰下げ上限年齢の引き上げにより、引き上げ期間分増額率が上がります。
 
現行の繰下げでは、1月あたり0.7%の増額率で、最大70歳までの5年間で0.7%×12ヶ月×5年間=4.2%の増額率です。それ以上受取開始が遅くなっても、増額率は70歳の42%で頭打ちになっていました。
 
しかし、繰下げ上限が75歳に引き上げることに伴い、1月あたり0.7%の増額率が75歳まで増額されます。よって上限年齢75歳まで繰り下げた場合、0.7%×12ヶ月×10年間=84%の増額率です。(令和4年4月施行)

繰下げ受給上限以降で請求すると

繰下げ受給上限年齢は現行70歳ですが、上限年齢以降で年金を請求する場合、上限年齢で繰下げの申出があったものとして年給が支給されます。
 
例えば、73歳で年金を請求する場合、繰下げ申請がなければ65歳から受給開始となります。年金額も65歳時点の額です。
 
ところで、年金は時効があり、受給申請より5年以上前は時効により消滅します。よって、請求時73歳より5年前の68歳から「65歳時点の年金額」を受け取りますが、65歳~68歳までの年金は時効で消滅します。
 
この制度により、繰下げ申請がなくても、現行の繰下げ上限70歳時点で繰下げ申請があったとされることで、65歳から70歳は5年間の繰下げ待機期間とされます。
 
それにより待機期間分の0.7%×12ヶ月×5年間=42%増額された年金を70歳から受け取ることができます。70歳から73歳の分は申請時点ですでに過ぎているため、一括で受け取ります。
 
改正により繰下げ上限年齢が75歳になりますが、同様に75歳以降で年金を請求する場合、75歳で繰下げの申出があったものとされます(令和4年4月施行)。

時効消滅しないよう制度が新設される

ところで、受給上限が75歳に改正後は、73歳での申請は繰下げ上限を超えていないため、繰下げ申請をしないと65歳~68歳までの年金は時効で消滅してしまいます。
 
そのため、今回の改正で、新たな制度が新設されます。70歳以上80歳未満の間に年金受給を請求した場合で、かつ、請求時点での繰下げをしない場合、5年前に繰下げ申請があったものとして年金額の算定がされ、年金が支給されるというものです。
 
これにより、73歳で受取申請をした場合、5年前の68歳での繰下げ申請があったとされることで、本来ならば時効で消滅する期間の65歳から68歳の3年間が繰下げ待機期間となり、0.7%×12ヶ月×3年間=25.2%増額された年金を68歳から受け取ることになります。
 
68歳から申請時の73歳までの5年経過分は、一括で受け取ることができます(令和5年4月施行)。

繰上げ受給の減額率が引き下げ

一方、60歳から年金を受け取る繰上げ受給の場合、今回の改正で減額率が下げられます。
 
現行の減額率は1月あたり0.5%で、60歳から受給開始すれば0.5%×12ヶ月×5年=30%減額されるのですが、今回の改正では減額率0.4%となるため、60歳繰上げ受給で24%の減額になり、今までの繰上げより6%受け取る分が増えます(令和4年4月施行)。
 
「いつ死ぬか分からないから、年金は早くもらいたい。」と言う声をよく聞きます。
 
65歳時点での年金の額を1とした場合、65歳からの受給期間をX、減額率Rとすると、
(1-R)(X+5)=X より X=5(1-R)/R
60歳~65歳になるまで先行して年金総額5(1-R)を受け取っても、X年後に65歳から受け取った総受取額に追いつかれ、追い越されます。
 
R=30%の場合は X≒11.6、R=24%の場合は X≒15.8となり、改正前は76.6歳まで、改正後は80.8歳までは60歳に繰上げした方の総受給額が多いのですが、それ以降は繰上げしない方の総受取額が多くなります。
 
平成30年の簡易生命表によれば、平均寿命は 男性81.25歳、女性87.32歳と前年より伸びています。長生きした場合の収入をより多くすることも大切です。
 
高齢になるほど年金に頼る生活になり、お金が足らなければ働くという選択肢はなくなります。いったん繰上げすると減額された年金が一生涯続くため、繰上げは慎重にしたいものです。
 
(参考・引用)
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」
厚生労働省「平成30年簡易生命表」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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