更新日: 2021.06.02 厚生年金

パートやアルバイトの厚生年金拡大へ。変更点やメリットを解説

執筆者 : 堀江佳久

パートやアルバイトの厚生年金拡大へ。変更点やメリットを解説
老後資金として2000万円必要、いわゆる2000万円問題が話題になりました。この問題は、金融庁が公的年金以外に老後資金として2000万円必要だとの報告書が発端になり、老後不安をあおるということで、社会的な大問題に発展していったことは記憶に新しいかと思います。
 
こういった老後不安を和らげるためのも、日本政府は年金制度改革を進めています。その中の一つに、パートタイマーやアルバイトなどの非正規労働者へ厚生年金を拡大し、老後の年金収入を確保する法案が来年の通常国会に提出される予定です。
 
これは、いままでは大企業に勤めていないと厚生年金に加入できなかったパートやアルバイトなどの短時間勤務労働者でも厚生年金に加入できるようにし、将来受け取る年金を増やすというものです。今後、どういった制度改正が見込まれるか詳しく確認していきましょう。
 

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堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

従来の厚生金保険の加入条件

パートタイマーやアルバイトなどでも事業所と常用的使用関係にある場合で、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である人は、厚生年金の加入対象です。ただし、4分の3未満であっても、次の5つの要件をすべて満たす場合には、加入対象です。
 
1.週の所定労働時間が20時間以上あること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が8.8万円以上であること
4.学生でないこと
5.常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること

 
以上のことからわかるように、従業員が501人以上の大企業に勤めていないと、厚生年金に加入することができなかったのです。
 

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今後の加入条件(案)

従来の加入条件のうち、適用企業の対象規模の緩和を図るのが現行の変更案です。具体的には、従来の「従業員数が501人以上」という条件を2022年10月に「101人以上」、2024年10月に「51人以上」の2段階で広げる案が有力のようです。
 
つまり、今までは大企業を中心とした制度であったものを、規模の小さな企業にも適用することを検討しています。
 

変更案のメリットとデメリット

(1)メリット

規模の小さな企業に勤めている方々にとっては、制度が変更になれば、厚生年金への加入により将来受け取る年金が増えることになります。
 
つまり、厚生年金は国民年金より年金額が多いため、パートや非正規雇用の人が将来受け取る年金水準を底上げることが期待されます。またそういった方々が、低年金や無年金に陥るようなリスクも防ぐことができます。
 
厚労省の試算によると、企業規模の要件を従業員501人以上とした場合、新たに65万人が厚生年金の対象になるようです。

(2)デメリット

経団連と連合は、老後の安心につながるとして拡大に賛成しているようですが、保険料を労使で折半しなければならない規模の小さな企業にとっては負担増になるというデメリットがあります。厚労省の試算では年間で事業者の保険料負担は1590億円増えるとのデータもあるようです。
 
そのため、中小企業を中心に、適用範囲の拡大に対して反発をしているようです。中小企業など約125万社が参加する日本商工会議所からも、中小企業の経営に大きなインパクトを与える可能性があり、慎重な議論をして欲しいとの見解を示しているようです。
 
これには、政府・与党内にもきめ細かな配慮を求める声があり、年金の制度改正とあわせて中小企業の支援策も検討していく必要があるとの意見もあるようです。
 

まとめ

日本政府は、小規模な企業に勤めるパートタイマーやアルバイなどでも、厚生年金制度に加入できる方向で検討が進んでいます。これが成立すれば、パートや非正規雇用の人が将来受け取る年金水準を底上げすることができ、老後不安が解消される方向になると思われます。
 
来年の通常国会で、改正法案が提出される予定ですので、国会での議論を注視していきましょう。
 
(参照・出典)
日本年金機構「適用事業所と被保険者」
日本経済新聞(2019年11月27付 朝刊)「厚生年金のパート適用、2段階で拡大 政府・与党調整」

執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー