更新日: 2019.12.19 その他年金
うつなどの精神疾患も障害年金の対象って本当?障害年金支給の要件と受給額とは
ところで精神の病気でも公的年金(国民年金、厚生年金)の障害年金の受給対象であることをご存じですか? 精神疾患の場合、体の一部(内臓、肢体、血液など)の障害とは異なり症状がどの程度のものなのか分かりづらいこと、また、障害年金の対象であることが十分にPRされてないこともあり、本来もらえるはずの障害年金について知らない人も少なくありません。
そこで、今回は精神疾患を原因とする障害者向けの障害年金について紹介します。
執筆者:蓑田透(みのだ とおる)
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、
社会保険労務士、米国税理士、宅建士
早稲田大学卒業後IT業界に従事していたが、格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。
ライフプラン、年金、高齢者向け施策、海外在住日本人向け支援(国内行政手続、日本の老親のケア、帰国時サポートなど)を中心に代行・相談サービスを提供中。
企業向けコンサルティング(起業、働き方改革、コロナ緊急事態の助成金等支援)の実施。
国内外に多数実績をもつ。
・コロナ対策助成金支援サイト
・海外在住日本人向け支援サイト
・障害年金支援サイト
■障害年金支給対象者
障害年金は年金加入者(原則20歳以上)が老齢年金の受給開始年齢(65歳)に達する前などに受給できるもので、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金があります。
申請できる障害年金は、障害の原因となった病気やケガの初診日にどの年金に加入しているかによって異なりますが、例えば、20歳未満など年金加入前に障害となった場合でも厚生年金加入者や一定の条件を満たしていれば受給できます。
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■支給要件
支給要件としては、普段から毎月の保険料を納付していること(下記(1))、障害の状態が一定期間継続していること(下記(2))、が求められます。
(1) 障害が発生した日(医療機関での初診日の前日)の前々月までの年金加入期間に3分の2以上保険料を納付していること、または前々月までの直近1年間に未納がないこと※1。
(2) 初診日から1年6ヶ月後(障害認定日)の障害の状態が1級~3級(後述)の状況であること。1年6ヶ月後の傷病状態が年金支給要件に達していない(軽い)場合でも、その後の支給要件に達する状態になれば事後の請求は可能です。
■障害の状態
障害年金を受給するには請求手続の上、審査を受けるのですが、審査基準としてある程度症状が重いことが必要です。一つの目安としては働けない状況(軽作業を除く)にあるかどうか、という点が挙げられます。
ただ、精神疾患の場合、肉体的には問題はないものの働く気力が湧かないといった心の問題が原因となっているため、医師の診断書でその状態を申告することになります。診断書の内容から重い症状であると認められなかった場合は年金を受給することはできません。
■障害年金の種類、等級、受給額
種類としては会社員や公務員が加入する厚生年金(障害厚生年金)とそれ以外の人(自営業者、主婦など)が加入する国民年金(障害基礎年金)があり、障害の度合いによって1級から3級に分けられます(国民年金は1・2級のみ)。 1・2級の障害厚生年金受給者は障害基礎年金と両方を受給できます。
<障害年金受給額(月額)>
<備考>
・障害厚生年金は加入年数(ただし最低25年を保障)、報酬額により決定。上記の金額(1・2級)は平成29年度障害年金受給権者の平均額※2、「統計でみる日本」等を参考に筆者算定。3級は最低保障額。
また、障害等級については下記が一つの目安となります。
・1級:他人の援助がないと日常生活ができない
・2級:ある程度他人の援助がないと日常生活ができない
・3級:働くことができない
こうした級数の判断は、医師の診断書を基に日本年金機構が行います。障害の内容や認定基準については日本年金機構のウェブサイト※3にて確認できます。
■請求のための手続き
請求手続は最寄りの年金事務所で行えます。請求手続で多くの人が苦労しているのが初診日と障害状態に関する書類の入手です。前者は医療機関の受診証明書、後者は医師の診断書になります。
■障害の状態が長年続いている人がこれから請求する場合
長年障害の状態であったにもかかわらず障害年金のことを知らずにこれまで申請していなかった場合でも、これから申請して受給することはできます。
その場合に初診日が10年、20年以上前だとその医療機関で既にカルテを破棄(医療機関でのカルテ等保存期間は5年)したり、個人経営の病院だと廃業してなくなっていたりするケースがあります。そうした場合はその後に通院した医療機関や、知人など第三者からの申し立てにより対応することもできます。
いかがでしょうか? 手続きはやや専門的になります。ご自身で手続きする場合は年金事務所に相談するのがよいでしょう。また、「自分では難しそう」と思ったら社会保険労務士のような専門家に代行してもらうこともできます。
出典
※1:保険料納付の免除制度を受けている場合は未納とはなりません
※2:厚生労働省「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
https://www.mhlw.go.jp/content/000453010.pdf
※3:障害の内容や認定基準に関するサイト(リンク)
執筆者:蓑田透
ライフメイツ社会保険労務士事務所代表