1人1年金しかもらえない? 選択と重複を知ろう
配信日: 2020.08.14
これら複数の給付事由に当たる場合、すべて受けられるのでしょうか? 「1人1年金」の原則があるので複数の給付をすべて受けられるわけではありません。
この記事では、年金と給付の基礎知識と、年金給付の選択につき解説します。
執筆者:石井美和(いしい みわ)
中央大学法学部法律学科卒業。
20年に渡り司法書士・行政書士事務所を経営し、不動産登記・法人登記・民事法務・許認可などに携わる。また、保険代理店を併設。なお、宅建士、マンション管理士など複数の資格を保有。
年金の種類って複雑! 覚えておこう2階建ての仕組み
日本は20歳以上60歳未満のすべての人に、年金加入義務があります。「国民皆保険」という制度です。この加入義務がある公的年金には2種類あります。
・国民年金(基礎年金)……日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
・厚生年金……厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務するすべての人が加入
国民年金は、サラリーマンも自営業者やフリーランスの方も共通で加入する基礎年金です。この国民年金を1階とイメージすると、2階部分にあたるのが厚生年金と共済年金です。
以下、国民年金と厚生年金について解説します。なお、共済年金は平成27年に厚生年金に統合されました。
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給付の種類って複雑! もらえる給付アラカルト
一口に年金といっても、主に国民年金と厚生年金があることが分かりました。では、それぞれどんな給付があるでしょうか?
【図表1】各年金の支給要件等
※ただし、遺族基礎年金の支給を受けるには、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あることが必要です。
また、遺族基礎年金の対象である「子」は、次の者に限ります。
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
(日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度」参考)
1人1年金の原則~1つとみなされるのか選択か?
複数の年金の支給要件を満たした場合、すべて受けられるでしょうか? 残念ながら、「1人1年金の原則」があるため、どれか1つの年金を選ばなければなりません。
◇年金給付選択の例◇
・障害基礎年金と老齢基礎年金→どちらかを選択
・遺族厚生年金と障害厚生年金→どちらかを選択
・遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金(65歳まで)→どちらかを選択
ただし、2つの年金であっても、同じ事由で支払われる年金は1つとみなされるので、あわせて受けることができます。
◇1つの年金としてあわせて受けられる年金◇
・遺族年金:遺族基礎年金と遺族厚生年金はあわせて可
・老齢給付:老齢基礎年金と老齢厚生年金はあわせて可
・障害給付:障害基礎年金と障害厚生年金はあわせて可
また、国民年金と厚生年金の併給は、図表2のように調整されています。
【図表2】国民年金と厚生年金の併給
老齢厚生年金 | 障害厚生年金 | 遺族厚生年金 | |
---|---|---|---|
老齢基礎年金 | 〇 | × | △ |
障害基礎年金 | △ | 〇 | △ |
遺族基礎年金 | × | × | 〇 |
〇併給可
×併給は不可
△65歳以上は併給可
まとめ
年金はさまざまな給付の種類があるので、分かりづらいですね。まずは、どんな給付があるのか、知っておきましょう。複数の年金の支給要件に当たる場合で、どれか1つを選択しなければならないときは、損をしないように、年金額を確認したうえで選択してください。
[出典]
日本年金機構「日本年金機構」
日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度」
執筆者:石井美和