更新日: 2019.11.27 控除
市販医薬品を買うと税金の負担が軽くなる!? セルフメディケーション税制について
そのような場合、確定申告では、所得税や住民税の負担が軽くなる医療費控除は受けられなくても、セルフメディケーション税制による所得控除を受けられることがあります。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
セルフメディケーション税制とは?
1年間(1月1日~12月31日)に病院への通院・入院等で一定の医療費がかかった場合、医療費控除を受けることができ、その分税金の負担が軽くなります。
一方、病院での診察、治療などを受けていない場合は医療費控除の対象になりませんが、定期健康診断や予防接種を受けている等、健康の保持増進や疾病の予防への一定の取り組みを行う人が、市販のスイッチOTC医薬品(元は病院で処方してもらっていた医薬品のうち、処方箋なしで購入できるように切り替わった医薬品。
※全ての市販薬が対象になるわけではありません)を購入した場合には、その購入費用について所得控除を受けることができます。
これはセルフメディケーション税制という制度で、医療費控除の特例として2017年1月より実施されています。自身が対象医薬品を購入した場合だけでなく、生計を同じくする配偶者やその他の親族が購入した場合も控除の対象です。
ただし、このセルフメディケーション税制は恒久措置でなく、2021年までの時限措置となっています。
セルフメディケーション税制で控除を受けられる額
【図表1】のとおり、セルフメディケーション税制では、その年に支払った対価の額の合計額が1万2000円を超えるとき、その超える部分の金額について、その年の総所得金額等から控除を受けることができます。
例えば、1万5000円分の対象医薬品を購入した場合は、1万2000円を超える3000円分が控除されることになり、その控除後の額を元に税額が計算されます(【図表2】)。
医療費控除が原則10万円を超える支払いの場合に控除されるのに対し、セルフメディケーション税制は支払額がより低くても対象になるといえます。
その一方で、セルフメディケーション税制で控除できるその上限額は、医療費控除の上限額より低く、8万8000円が限度額となります(【図表1】参照)。
医療費控除とはどちらか選択
以上がセルフメディケーション税制の概要ですが、このセルフメディケーション税制による控除と、医療費控除とは同時には受けられません。両方に該当しそうな場合は、控除額を比較しながら、どちらか選択して適用を受けることになります。
セルフメディケーション税制による控除を受けるためには、医療費控除と同様、確定申告を行う必要があります。
確定申告に備え、健康の保持増進や疾病の予防への取り組みを行ったことを証明する書類(健康診断の結果通知表等)の他、控除額の計算のための、対象医薬品のレシート(対象医薬品には対象であることが記載されています)は収集・保管しておきましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー