育児休業中に住民税の納付書が届いた! 休業前に払ったものとは違うの?
配信日: 2021.05.19 更新日: 2021.10.20
育児休業給付は非課税です。社会保険料は免除、給付金は丸々使えています。6月のある日、住民税の納付書が届きました。
「え? 住民税は休業前に一括で支払ったのに……育児休業給付金って非課税じゃないの?」
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
住民税は前年の所得を基に計算する
B子さんは、11月の半ばに産休に入りました。
住民税は特別徴収(会社が徴収し、それぞれの市区町村に支払う)で毎月の給料から引かれていましたが、産休・育休の申し出を会社にした際に、「産休に入ると給料から引けないので、残りの住民税の支払い方法を『普通徴収』か『一括して特別徴収』のどちらかを選んで」と言われました。
住民税の普通徴収は、年に4回(6月、8月、10月、1月)に分割して、本人が市区町村に納めます。6月1日から12月31日までに従業員が退職や休職等で異動する場合は、会社の未徴収分を普通徴収に切り替えますが、本人が希望すれば一括して特別徴収ができます。
1月1日から4月30日までの異動は一括して特別徴収されます。1月に残りの通知書が送られてくるとのことなので、B子さんは育児でバタバタする前に払っておこうと思い、産休前に一括で支払いました。
出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金は非課税で、所得税と翌年の住民税はかかりません。社会保険料、雇用保険料どちらも給与をもらってないため、保険料の支払いはありません。そして、6月、納税通知書がやって来たのです。
「非課税じゃないの?」とB子さんは驚きます。
住民税は、前年の所得を基に決定し徴収されます。送られてきた納税通知書は、前年の、産休に入る年の収入についての住民税です。産休前に支払ったのは、その前の年の所得に対する住民税の残りです。
出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金は非課税ですから、課税所得とされません。よって、来年の住民税は非課税となります。
手取りでみれば8割近いが
育児休業給付金は、休業前の賃金の67%の給付割合で受け取れます。非課税であるので所得税はかかりません。翌年の住民税はかかりません。社会保険料、雇用保険料はかかりません。
よって、育休中に支払うのは、昨年分の住民税のみです。平成26年6月作成の厚生労働省のリーフレットNo.11から、具体例をみてみましょう。
育休前は23万円の給与で、所得税(5000円)・社会保険料(3万円)・雇用保険料(1200円)・住民税(1万5000円)が引かれ、手取り17万8800円とします。
育休中は、15万4100円(23万円×67%)の給付金で、引かれるのは住民税(1万5000円)、手取り13万9100円となります。
13万9000÷17万8800≒0.77と、手取りでみれば休業前の8割弱を受け取れます。
(厚生労働省「育児休業給付金が引き上げられました!!」(※)より要約引用)
4万円ほど少なくなってしまいましたが、それまでは、それほど負担を感じていませんでした。しかし、通徴収の住民税は1万5000×12=18万円を4回に分けるため、1回に支払う金額が4万5000円になります。
「これ、どうしよう。1度にこの金額は無理だわ」と、B子さんは困ってしまいました。
育児休業期間中の住民税の徴収猶予制度
支払いが困難な場合、まず、お住まいの市区町村に相談しましょう。一時に納税が困難と認められる場合は、育児休業中の1年以内の期間に限り、住民税の徴収が猶予される制度があります。
職場復帰の際に、延滞金とともに納税します。猶予期間(年14.6%で計算される期間に限ります)の延滞分の1/2は免除されますが、地方公共団体の長の判断により、延滞金が全額免除とされる場合もあります。制度を利用するには、本人が市区町村へ申し出をします。
(※)
厚生労働省「育児休業給付金が引き上げられました!!(平成26年6月作成 リーフレット)」
(参考・引用)
厚生労働省「育児・介護休業給付について」
厚生労働省「育児休業期間中の住民税の徴収猶予」
岐阜市「令和2年度個人市・県民税の計算方法」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者