検査費用や通院費、医療費控除の対象になる? ならない?
配信日: 2022.11.15
あまり知られていませんが、医療費控除は入院や手術の費用以外でも対象になるものがあります。また、逆に「対象になると思っていたのに実はならない」というものも。
何が対象になるのか正しく把握してきちんと申告すれば、余分な税金を支払わずに済みます。この記事では、勘違いしやすいポイントについて簡単に整理してお伝えします。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
「検査費用」は医療費控除の対象になる?
人間ドックや健康診断を受けた場合の費用は、基本的に医療費控除の対象になりません。ただし、その検査で重大な病気が見つかって治療することになった場合には、対象になります。
あるいは、新型コロナウイルスのPCR検査の費用については、感染の疑いがあって「医師等の判断」で受けた場合にも対象になります。
一方で「旅行前に陰性を確認しておきたい」など「自分の判断」で受けた場合は対象外です。ただしその場合でも、陽性判定によって治療を受けることになれば対象です。
「お薬代」は医療費控除の対象になる?
病院でもらった薬や、処方せんをもらって薬局で受け取った薬は、治療や療養に必要なものであれば医療費控除の対象です。一方で、同じ「薬」というカテゴリーでも、予防や健康増進のためのものであれば対象になりません。
しかし、ドラッグストアなどで自分で市販薬を買ってきた場合、通常の医療費控除ではなく「医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)」の対象になることがあります。
ただ、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか選択できません。まずはどちらを利用できそうか確認して、両方利用できそうなら節税効果が高いほうを選んで申告しましょう。
「病院までの交通費」は医療費控除の対象になる?
通院のために電車やバスなど公共交通機関を利用したときの交通費は、医療費控除の対象になります。1人で通院するのが難しく家族が付き添う場合などは、本人だけでなく付き添った人の分の交通費も対象です。
ただ、タクシー代は「電車やバスなど公共交通機関が利用できない場合」しか認められませんので要注意です。また、自家用車で通院した場合の駐車場代やガソリン代は対象になりません。里帰り出産のための帰省費用も対象外です。
「歯科矯正の費用」は医療費控除の対象になる?
歯医者さんで治療を受けたときの費用は、基本的に医療費控除の対象になります。ただ、歯科矯正は対象になる場合とならない場合があります。
対象になるかどうか判断するポイントは、その歯科矯正が「治療目的か美容目的か」です。
もしかみ合わせが悪く日常生活に支障が出ている場合の治療は、医療費控除の対象になります。一方、そのままでも支障がないものの「歯並びを整えてきれいにしたい」といった理由で歯科矯正を受けた場合は、医療費控除の対象になりません。
美容目的のホワイトニング、予防目的の歯のクリーニングなども対象外です。一方、一般的な金額の範囲内なら、保険がきかないインプラントなどの治療でも対象です。
ちなみに、歯の治療のためのローン(デンタルローン)を組んだ場合の金利や手数料は対象になりません。
まとめ
医療費控除の対象になるかならないかの判断は難しく感じるかもしれませんが、基本的には「病気やけがを治すためにどうしても必要なもの」であれば対象です。
予防や美容、入院をより快適にするために個室を選択した場合の差額ベッド代などは対象外です。よくわからないときは、最寄りの税務署に問い合わせれば教えてもらえます。
少々面倒ですが、医療費負担が大きく家計が圧迫されているなら、ぜひ医療費控除を活用して少しでも負担を減らしましょう。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例
国税庁 患者の世話のための家族の交通費
国税庁 No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表