更新日: 2024.09.26 控除
給与所得控除が10万円引き下げられる?税制改正で見直されたポイント
平成32年からの適用ですが、どのように見直されるのか見てみましょう。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
給与所得控除が10万円引き下げられる
給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて算出します。ここからさらに、所得控除ができるもの、たとえば、生命保険控除や確定拠出年金の掛け金などを差し引いて、その金額に税率をかけて所得税を算出します。控除額(差し引ける金額)が多いと、それだけ所得税が少なくなるのです。
しかし今回の改正では、平成32年分以降、給与所得控除が一律10万円引き下げられました。差し引ける額が少なくなります。
さらに、現在は給与収入額1,000万円以上で220万円が給与所得控除の上限ですが、改正により、給与収入金額850万円以上は給与所得控除が195万円と、上限が引き下げられます。
公的年金控除の引き下げ
給与所得控除と同じく、公的年控除額も一律10万円引き下げられます。さらに控除の上限が決められ、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の公的年金控除額等は195万5千円が上限とされました。
また、現在は、公的年金の他に収入があってもなくても、公的年金控除は公的年金の金額によって決まっていますが、改正により、公的年金等以外の所得が1,000万円を超え2,000万円までは一律10万円、2,000万円をこえたら一律20万円が、公的年金控除から下げられます。
たとえば、65才未満で90万円の年金収入がある場合、現在では70万円の公的年金控除があります。改正後は60万円の控除になります。もし、他に1,000万円を超える事業所得がある場合、公的年金控除は50万円になります。さらに2,000万円超の場合、公的年金控除は40万円になります。
基礎控除は引き上げられる
下げられてばかりではなく、基礎控除は10万円引き上げられます。
現在の基礎控除は所得に関係なく38万円ですが、平成32年から48万円となります。しかし、高額所得者は所得金額により基礎控除が減らされ、2,400万円以下は48万円ですが、2,400万超2,450万以下は32万円、2,450万円超2,500万以下は16万円となり、2,500万超は基礎控除がなくなります。
給与収入が850万円までは、給与所得控除が10万円の引き下げとなっても基礎控除が10万円の引き上げで控除額が変わらないため、課税所得も変わりません。しかし、給与収入850万円超の場合は、基礎控除以上に給与所得控除が減り、さらに合計所得2,400万円を超えると基礎控除も減ってしまうため、さらに課税所得が増えることになります。
所得税調整控除が創設
特別障害者や年金受給者には、所得税調整控除が創設されました。
年収850万を超える場合でも、特別障害者であるか、23才未満の扶養家族がいる、同一生計配偶者や扶養家族が特別障害者である場合に、所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(1,000万円を超える場合には1,000万円)から650万円を控除した金額の10%に相当する金額を給与所得から控除するという所得調整控除が創られました。
ただし、年末調整でこの適用を受ける場合には、「所得金額調整控除申告書」の提出が必要です。
また、給与を受けながら公的年金をもらっている場合、給与所得控除と公的年金控除の両方の引き下げを受けます。給与所得控除後の給与や公的年金に係る雑所得の合計額が10万円を超える場合に、総所得金額を計算する時は、給与所得控除後の給与の金額(10万円を超える場合には10万円)と公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を超える場合には10万円)の合計から10万円を引いた残りを、給与所得の金額から控除することとされました。
扶養親族の所得要件が変更に
以上の改正に伴い、給与控除後の所得が10万円増加することより、扶養親族となる為の所得金額要件が見直されました。現行より10万円引き上げられます。
1、同一生計配偶者・扶養親族となるための所得が48万円以下に
2、源泉対象配偶者の合計所得は95万円に
3、配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得が48万円超133万円以下に
4、勤労学生の合計所得要件が75万円以下に
それぞれ引き上げられます。
一方、家内労働者の所得計算の特例は、現行、必要経費は最低でも65万円保障されていますが、改正に伴い、必要経費の最低保証額が55万円とされます。
税額計算の際、使い慣れた数字が違ってくることに注意が必要になりそうです。詳しくは国税庁のHPをご覧ください。
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP®認定者