保険金受取人を離婚した妻のままにしていたら、会社から「生命保険料控除は受けられない」と言われました。保険会社から生命保険料控除の通知も来ているのですが控除されないのでしょうか?

配信日: 2025.03.07

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保険金受取人を離婚した妻のままにしていたら、会社から「生命保険料控除は受けられない」と言われました。保険会社から生命保険料控除の通知も来ているのですが控除されないのでしょうか?
2024年1月1日以降に締結した保険契約について、1月1日から12月31日までの1年間に生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を実際に支払った場合に、一定の金額を所得から控除できるので、所得税や住民税が軽減されます。
 
ただし、生命保険料控除が適用できるかどうかは、保険料を支払っている人と受取人との関係により決まります。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生命保険料控除の種類と控除額

2024年1月1日以降に締結した保険契約は、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除および個人年金保険料控除が適用されます。
 
一般生命保険料は、生存または死亡に起因して保険料が支払われるものに係る保険料で、養老保険、学資保険、終身保険などの保険料です。介護医療保険料は、入院等にともなう給付部分に係る保険料で、医療保険、介護保険、所得補償保険などの保険料が該当します。個人年金保険料は個人年金保険契約に係る保険料です。
 
それぞれ控除額の上限は、所得税4万円、住民税2.8万円になります。所得控除限度額は、所得税12万円、住民税7万円です。所得が控除されると、その分税負担は軽減されます。
 
たとえば、年収500万円(所得税10%・住民税10%)の方が、上限まで一般生命保険料控除を受けられたとすると、1年あたり所得税4000円・住民税2800円、合計6800円の税負担が軽減されます。
 
なお、支払った保険料が控除額になるわけではないので知っておきましょう。
 
●生命保険料控除額


 

 

生命保険料控除の対象となる生命保険契約等

生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、その保険金等の受取人のすべてが、自己または自己の配偶者その他の親族(6親等以内の血族、および3親等以内の姻族)であることが要件となっています。
 
また、生命保険料控除の対象となる保険料等に該当するかどうかは、保険料等を支払った時の現況により判定することとされています。たとえば、離婚後の妻はこの要件を満たさないので生命保険料控除は適用できません。
 
なお、個人年金保険料控除の対象となるのは、個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険の保険料です。付加していない個人年金保険の保険料は一般生命保険料控除の対象です。個人年金保険料税制適格特約を付加するには、以下の条件を満たす必要があります。


・年金受取人が被保険者と同じであること
・年金受取人が、契約者またはその配偶者であること
・保険料の払込期間が10年以上であること(一時払いは対象外)
・年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であり、かつ年金受取期間が10年以上であること

 

【2025年度税制改正】

2026年分における2024年1月以降の契約の一般生命保険料控除について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の所得税4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せされ6万円に拡充される予定です(令和8年の時限措置)。
 
ただし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の合計適用限度額は現行の12万円が据え置かれます。なお、一時払い生命保険は2万円の上乗せが時限的に行われている間は控除の適用対象から除外されません。
 

まとめ

離婚後も生命保険の保険金受取人を変更せず、妻のままでいる方がいます。夫が保険料を支払い続けても生命保険料控除を受けられないだけでなく、万一のとき、死亡保険は妻が受け取ることになります。このようなことを望まないのであれば、保険金受取人を自分の子や親に変更しましょう。
 

出典

国税庁 No.1140 生命保険料控除
国税庁 No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等
金融庁 令和7(2025)年度税制改正について -税制改正大綱における金融庁関係の主要項目-
自由民主党 公明党 令和7年度与党税制改正大綱
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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