昨年子どもが入院したときの領収書「30万円分」をすべて紛失…手元になくても医療費控除は申請できますか?
配信日: 2025.03.13

もし、領収書を紛失しても、条件がそろっている書類があれば医療費控除の申請はできます。今回は、領収書をなくしたときに医療費控除を申請する方法や、医療費控除を利用したときの税額などについてご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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領収書なしで医療費控除の申請はできる?
基本的に、医療費控除を受けたいときは領収書の保管をする必要があります。医療費控除を記載するときは、各医療費の明細を記入するためです。しかし、医療費通知を活用する場合は、領収書がなくても対応できる可能性があります。
国税庁が運営している、確定申告書等作成コーナー「医療費通知の利用について」によると、医療保険者(健康保険組合等)が発行する以下の項目の記載がある『医療費通知』を確定申告書に添付する場合は、『医療費控除の明細書』の入力を簡略化することができ、医療費通知に記載されている分の医療費の領収書等の保存も不要となります」と記載があります。
前述にある「医療費通知」の項目とは以下の通りです。
・被保険者等の氏名
・療養を受けた年月
・療養を受けた者
・療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
・被保険者等が支払った医療費の額
・保険者等の名称
上記の項目が記載されており、インターネットで医療保険者の電子署名や電子証明書が付与された情報も医療費通知です。医療費通知があれば、医療費控除の明細の記入を簡略化できます。
ただし、医療費通知の項目のうち、どれか一つでも抜けや記入ミスがあると、医療費控除のための書類としては使用できないようです。医療費通知を受け取ったときは、抜けや漏れがないかよく確認しましょう。
なお、医療費通知には1年分の記載がないケースもあります。もし、不足している部分があったら、領収書を基に記載しましょう。領収書を紛失している場合は、医療費通知で確認できる分のみで医療費控除を申請することになります。
医療費控除に含められない入院費用とは
国税庁によると、入院したときの費用で医療費控除と認められない項目の例は以下の通りです。
・入院で使用するパジャマや洗面具などの身の回り品
・医師や看護師へのお礼
・差額ベッド代
・付き添い料の名目で親族へ渡したお金
・入院中に外食したり出前をしたりした費用
付き添い名目ではなく、正式に付き添いを依頼したうえで支払った付き添い料は医療費控除に含められます。また、入院中に病院で支給される食事は、入院代の一部として医療費控除の対象です。治療に必要な道具や診療費、医薬品代、通院費なども医療費控除になります。
なお、医療費控除の金額は、「実負担額-保険金などで補てんされる金額-10万円(その年の総所得金額等が200万円未満のときは総所得金額等の5%の金額)」です。
医療費控除を適用したときの税額はいくら?
今回は、以下の条件で医療費控除を適用したときの税額を計算してみましょう。
・年収600万円
・東京都在住30代
・全国健康保険協会に加入
・年収を12ヶ月で割った金額を月収とする
・社会保険料控除、給与所得控除、基礎控除は令和6年度を使用
・控除は医療費控除、社会保険料控除、給与所得控除、基礎控除のみ
・住民税率は基準値
・賞与は考慮しない
・医療費を30万支払っている
・入院費で保険などによる支払いはない
まず、条件を基にすると月収は50万円、社会保険料控除は以下の通りです。
・健康保険料:年額29万9400円
・厚生年金保険料:年額54万9000円
・雇用保険料:年額3万6000円
・社会保険料控除:88万4400円
また、給与所得控除は164万円、医療費控除は20万円です。所得税基礎控除額は48万円のため、所得税の課税所得は279万5000円になります。税率は10%、控除額は9万7500円なので、所得税額は18万2000円です。
住民税の基礎控除額は43万円なので、住民税の課税所得は284万5600円になります。税率は10%+5000円なので、住民税額は28万9560円です。
医療費通知を活用すれば領収書を紛失しても医療費控除を使える可能性がある
医療費控除を申請する時には、各医療費の明細も添付するため基本的に領収書が必要です。
しかし、もし、領収書を紛失してしまったときは医療費通知が届くのを待ちましょう。必要項目が記載されている医療費通知があれば、医療費控除の申請時に明細を書く必要がありません。なお、医療費として申請できるのは入院代や治療費、通院費などです。差額ベッド代や身の回り品の費用は合算できません。
出典
国税庁 令和5年分 確定申告書等作成コーナーよくある質問 医療費通知の利用について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー