趣味の“手作りアクセサリー”が「年100万円」の売上に! でも材料費が「90万円」なら、ほぼ利益なしで“確定申告”は必要ありませんか? 判断基準をわかりやすく解説
本記事では、このようなケースを例に取り、「売上」と「所得」の違いや、所得税の確定申告が必要かどうかの判断基準の原則について、分かりやすく解説していきます。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
「売上」と「所得」の違い
所得税の確定申告が必要かどうかを判断するとき、重要なポイントとなるのは「収入(売上)」の金額そのものではなく、「所得」の金額です。ここでいう所得とは、売上から、材料費や梱包代、送料など、作って売るためにかかった「必要経費」を差し引いた後に残る金額を指します。
例えば、年間の売上が100万円で、その売上を得るためにその年に支払った必要経費が90万円だった場合、その年の所得は10万円だった、と計算します。この所得の金額が一定の基準を超えたかどうかによって、所得税の確定申告が必要かどうか(義務があるかどうか)が決まります。
所得税の確定申告が必要かどうかの判断基準
会社員などの給与所得者の場合、給与所得および退職所得以外の所得(例えば、単発的な副業による雑所得)が年間で20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。今回のように、手作りアクセサリーの販売による所得が年間10万円であれば、確定申告が必要となる別の理由がない限り、確定申告は不要です。
一方、給与所得がない人の場合、雑所得などの合計が年間48万円を超えると、基礎控除(48万円)を差し引いても課税所得金額が発生するため、原則として所得税の確定申告が必要になります。今回のように、手作りアクセサリーの販売による所得が10万円あり、この10万円と合算して48万円を超えるほかの所得がない場合は、確定申告をする必要はありません。
趣味と事業の境界線
手作りアクセサリー販売などの活動が、社会通念上の事業には当たらない程度の活動である場合には、その所得は「雑所得」として扱われます。雑所得が一定の基準を超えて(会社員の場合、副業などによる雑所得が年間20万円を超えて)確定申告が必要になったときでも、雑所得の申告は比較的簡単にできます。
一方、活動に営利性、継続性、企画遂行性が認められ、収入(売上)金額が少なくなく、取引を記帳し、帳簿書類を保存している場合には、「事業所得」として税制優遇制度(青色申告など)の活用が可能になります。
確定申告が不要なレベルで始まって、雑所得での確定申告が必要な段階に進み、さらに売上の増加や継続性を見込めるようになったら、早めに税務署や税理士に相談し、趣味の範囲にとどめるのか、事業化を進めるのかの方向を定め、必要であれば準備を進めるとよいでしょう。後日の税務調査や修正申告などの手間を避けることにもつながります。
まとめ
趣味で始めた手作りアクセサリー販売であっても、売上が増えてくると、税務上の対応が必要になる場面が出てきます。ただし、作って売るためにかかった必要経費が多く、所得が一定額を下回った年については、所得税の確定申告は不要です。売上が大きくなる年もあれば、そうでない年もあるでしょう。税務上の1年間は「1月1日から12月31日まで」です。
日々の収入と支出をしっかりと記録・管理し、「売上」だけでなく「所得」を基準に確定申告の要不要を判断していきましょう。長く続けていくためにも、基本的な税知識を身につけて、安心して活動できる体制を整えていきたいものです。
出典
国税庁 確定申告が必要な方
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1500 雑所得
執筆者 : 福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
