専業主婦で「架空の役員報酬」をもらうママ友。給料は「月20万円」らしいけど、勤務実態ナシなら“税金”も多めに取られてる?「手取り額・デメリット」を解説

配信日: 2025.08.20
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専業主婦で「架空の役員報酬」をもらうママ友。給料は「月20万円」らしいけど、勤務実態ナシなら“税金”も多めに取られてる?「手取り額・デメリット」を解説
昨今の物価高騰で、現在の給料では対応しきれないと感じている人は多いのではないでしょうか。
 
本ケースでは、専業主婦として毎月四苦八苦してやりくりしている中、同じく専業主婦で似た境遇と思っていたママ友との何気ない会話から、ママ友が20万円もの役員報酬を受け取っていることを知り、ふとした疑問がわいたようです。
 
働いていない人への役員報酬は、通常と同様に税金が課されているのでしょうか? それとも通常より多めの税金が課されているのでしょうか?
 
そして、そもそも勤務実態のない役員報酬は認められているのかについても気になります。本記事では、勤務実態のない人への役員報酬に対する税金について解説します。
佐々木咲

2級FP技能士

【結論】税金は多めに取られない

まず、役員報酬は税制上において給与所得として扱われるため、所得税や住民税などの税金が課されます。
 
早速の結論になりますが、働いていない人への役員報酬だからといって、所得税が多く取られるということはありません。会社員が受け取っている通常の給与と同じ計算方法で、所得税と住民税が課されます。
 

役員報酬20万円にかかる税金と手取り額

役員報酬月20万円、年収240万円の収入にかかる所得税と住民税、手取り額を計算してみましょう。なお本ケースでは勤務実態はないので、社会保険料はかかりません。


【所得税】

(240万円-給与所得控除80万円-基礎控除48万円)×所得税率5%=5万6000円
 
【住民税】
(240万円-給与所得控除80万円-基礎控除43万円)×住民税率10%+均等割5000円=12万2000円
 
【合計】
5万6000円+12万2000円=17万8000円
 
【手取り額】
240万円-17万8000円=222万2000円

所得税と住民税の合計は年間約18万円、手取り額は年間で約222万円、月あたりになおすと約18万円となりました。会社員の月収20万円の手取りは約16万円です。勤務実態がなく社会保険料がない分、手取りが多くなるようです。
 
本記事では、「働いていない人への役員報酬は通常より多めの税金が課されているの?」という疑問からスタートしましたが、むしろ手取り額は働いていない人のほうが多いという反対の結論となりました。
 

親の会社は損をしている可能性がある

ただし、親の会社のほうで通常より多い税金を支払っている可能性はあります。勤務実態のない人への役員報酬は、経費として認められない可能性があるからです。
 
親族を役員にして役員報酬を支払うこと自体は違法ではありませんが、労務の対価でなければなりません。役員報酬相応の仕事をしているからこそ、認められる経費であるというわけですね。
 
本ケースにおいては、ママ友は全く親の会社経営に関わっていないと推察されるので、もし税務調査が入り、ママ友の役員報酬に目が行った場合、否認されるかもしれません。
 
会社はその否認された役員報酬分だけ増える利益に対する法人税を負担しなければならなくなります。ママ友個人には痛みのない話ではありますが、親の会社は経費にならない役員報酬を負担し、さらに法人税も負担しなければならないので、ママ友と親の会社をセットで考えれば、通常よりも多くの税金を支払っていることになります。
 
もちろん、税務調査を通過する可能性もあります。こればかりは税務調査の状況や調査官による問題なので、かなりのグレーゾーンであると言わざるを得ません。
 

まとめ

勤務実態のない名目上の役員報酬であっても、所得税と住民税の計算は通常と変わりません。役員報酬20万円であれば、社会保険料の負担はなく、約2万円の税金の天引きのみで、手取り額は約18万円となります。
 
ただし、税務署が親の会社に対してママ友への役員報酬を経費として認めないとした場合は、親の会社の法人税が増えることで、普通より多く税金を払うことになるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
 
執筆者 : 佐々木咲
2級FP技能士

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