年間の医療費「8万円」の義母から、「確定申告で1.5万円戻ってきた」と聞き驚き。医療費“10万円未満”のわが家も対象になりますか? 対象となる「意外な費用」とは

配信日: 2025.09.24
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年間の医療費「8万円」の義母から、「確定申告で1.5万円戻ってきた」と聞き驚き。医療費“10万円未満”のわが家も対象になりますか? 対象となる「意外な費用」とは
「年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告すると税金が戻ってくる」という話を耳にしたことがある人は多いと思います。しかし、「わが家は家族全員の医療費を合わせても8万円ほど。10万円に届かないので関係ない」と考え、申告をあきらめていませんか。
 
実は、一定の条件を満たせば、医療費が10万円未満でも「医療費控除」を受けられる場合があります。本記事では、あまり知られていない医療費控除のしくみや、対象になる費用について解説します。
山口克雄

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

「10万円の壁」は絶対ではない? 医療費控除のしくみ

医療費控除の還付を受けられるかどうかの基準は、必ずしも「10万円」ではありません。所得によっては、10万円に満たなくても対象になる場合があります。
 
医療費控除の金額は、次の計算式で算出されます。
 
(実際に支払った医療費の合計額−保険金などで補てんされる金額)−10万円
 
ここで注目したいのが、「10万円を差し引く」という点です。また、総所得金額が200万円未満の場合は、10万円ではなく「総所得金額などの5%」を引くルールとなります。例えば、総所得金額が180万円の人なら、その5%にあたる9万円が基準です。この場合、支払った医療費が9万円を超えていれば、医療費控除の対象となります。
 
また、「実際に支払った医療費の合計額」には、自身の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の分も合算できます。
 
例えば、夫の扶養に入っている妻や、離れて暮らす両親に仕送りをしている場合、その両親の医療費も対象に含められます。家族全員分の医療費を合計すれば、基準額を超える可能性も十分にあるでしょう。
 

医療費控除の対象となる意外な費用と注意点

医療費控除の対象は、病院の窓口で支払う診療費や処方薬の代金だけではありません。実は、家計のなかで医療費だとは気づきにくいものも含まれているのです。
 
義母は膝の痛みがひどく、頻繁に整形外科に通院していました。年間の医療費は8万円ほどでしたが、バスと電車を乗り継いで通院した交通費や、ドラッグストアで購入した医薬品なども合計したところ、15万円近くになったそうです。その結果、確定申告で、約1万5000円が戻ってきたと喜んでいました。
 
このように、薬局やドラッグストアで購入した風邪薬や胃腸薬、湿布などの市販薬も、治療目的のものであれば医療費控除の対象です。ただし、ビタミン剤やサプリメントのように、健康維持や疲労回復を目的としたものは含まれません。
 
また、通院にかかった交通費も原則として対象です。電車やバスなどの公共交通機関の料金は認められています。交通系ICカードを利用している場合は、履歴を印刷するなど、いつ、どの医療機関へ行ったのかが分かるようにしておきましょう。
 
タクシー代については、急な陣痛や、公共交通機関が利用できない状況など、やむを得ない場合に限り対象となります。自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は、対象外なので注意しましょう。
 

もう1つの申告方法「セルフメディケーション税制」とは?

「家族の医療費を全部合わせても、10万円には届きそうにない。でも、市販薬はよく購入する」といった家庭は、「セルフメディケーション税制」という、もう1つの方法を検討するとよいでしょう。
 
セルフメディケーション税制は、健康の維持増進や病気の予防への取り組みとして、特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)を購入した際に利用できる制度です。
 
年間の購入額が1万2000円を超えた部分について、所得控除が受けられます(上限8万8000円)。対象となる医薬品のパッケージには、共通の識別マークが表示されているので、購入時に確認できます。
 
この制度を利用するためには、本人が人間ドックや健康診断、予防接種などを受けているのが条件です。会社員であれば、毎年受けている定期健康診断で条件を満たします。
 
注意点として、セルフメディケーション税制と医療費控除は、どちらか一方しか選べません。どちらを利用したほうが還付額は多くなるか、家族の状況に応じてシミュレーションしてみることをおすすめします。
 

日々の記録からはじめる、家計を守る資産防衛

「医療費が10万円に届かないから」という理由だけで、確定申告をあきらめるのは早いかもしれません。所得の条件によっては医療費が10万円未満でも対象になる場合があります。また、市販薬や交通費など、合算できる費用も意外と多くあります。
 
まずは、医療機関の領収書やレシート、交通費の記録などを、1つの封筒にまとめて保管することから始めてみてください。なお、確定申告で提出する「医療費控除の明細書」のもとになった領収書は、自宅で5年間保存する義務があります。
 
日々の小さな積み重ねが、将来の家計を助けることにつながります。こうした制度を正しく理解し、上手に活用していくことが、賢い資産防衛の第一歩となるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 No.1129 特定一般用医薬品購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
 
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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