今秋に「マイカー通勤手当」の“非課税枠”が引き上げられる? 決定されたら手取りにどのような影響がある?

配信日: 2025.10.06
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今秋に「マイカー通勤手当」の“非課税枠”が引き上げられる? 決定されたら手取りにどのような影響がある?
2025年2月に、「政府は2025年秋にも勤務先から受け取る自動車通勤手当の非課税額を引き上げる」という報道がありました。この方針を受け、人事院は2025年8月7日に「令和7年人事院勧告」を行いました。
 
本記事では、「マイカー・自転車通勤者の通勤手当はどのように扱われているのか?」「非課税枠が引き上げられると手取り収入にどのような影響があるのか?」について解説します。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

マイカー・自転車通勤者の通勤手当はどのように扱われているのか?

「通勤手当」とは、役員や従業員などの給与所得者が通勤のためにかかる費用を会社が支給する手当のことをいいます。通勤手当は、所得税法第9条第1項第5号(非課税所得)において「所得税を課さない(非課税)」と規定されています。
 
ただし、通勤手当に該当すれば全て非課税となるわけではなく、所得税法施行令第20条の2(非課税とされる通勤手当)により非課税枠(非課税限度額)が規定されています。現行法におけるマイカー・自転車通勤者の通勤手当の非課税枠は、図表1のとおりです。
 
図表1

図表1

出典:国税庁 「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
 
この非課税枠を超えて通勤手当を受け取った場合、超えた部分について、給与として所得税・復興特別所得税が課税されます。
 
例えば、「片道の通勤距離」が4キロメートルである方が通勤手当として5000円受け取っていた場合、非課税枠4200円を超える800円(=5000円-4200円)について、所得税・復興特別所得税が課税されることになります。
 

非課税枠が引き上げられると手取り収入にどのような影響があるのか?

この非課税枠の引き上げについて、人事院の「勧告」では、図表2のとおり記載されています。
 
図表2

図表2

出典:人事院 「報告文・勧告文」
 
以下では、図表2の勧告どおりに非課税枠が引き上げられたと仮定して、解説をしていきます。
 
図表2を見ると、「片道の通勤距離」が10キロメートル以上の場合において、区分によって非課税枠が200円から7100円引き上げられることになります。一方、「片道の通勤距離」が10キロメートル未満については記載がないため、非課税枠の引き上げはないと考えられます。
 
ところで、非課税枠の引き上げによって手取り収入に影響がある(手取り収入が増える)と考えられますが、そのアプローチとしては以下のことが考えられます。
 

(1)源泉徴収されていた所得税・住民税が減ることにより、手取り収入が増える
(2)通勤手当の支給額が増えることにより、手取り収入が増える

 
(1)は、シンプルに「非課税枠が引き上げられることによって所得税・住民税が減る」というものです。一方(2)は、「これまで非課税枠までしか通勤手当を支給されなかった」ケースで、「非課税枠が引き上げられることによって通勤手当の支給額も引き上げられる」場合です。
 
会社員・公務員の手取り収入は、以下の計算式によって算出します。
 
手取り収入=給与収入-(社会保険料+所得税+住民税)
 
つまり、(1)は「所得税」が減ることによって、(2)は「給与収入」が増えることによって、手取り収入が増えるということです。ただし、(2)については「給与収入」の増加に伴い「社会保険料」も増える場合もありますのでご留意ください。
 
人事院の勧告では、非課税枠の引き上げについては「令和7年4月実施」とされていますが、本記事の執筆時点では通勤手当に係る所得税の非課税限度額の改正が行われる時期については分かっていません。
 
国税庁のホームページでは「改正が行われる場合には、年末調整での対応が必要となることがあります」とされており、年末調整を行う際には国税庁のホームページで最新情報を確認する必要があります。
 

まとめ

本記事では、「マイカー・自転車通勤者の通勤手当はどのように扱われているのか?」「非課税枠が引き上げられると手取り収入にどのような影響があるのか?」について解説しました。
 
まとめると、以下のとおりです。
 

・マイカー・自転車通勤者の通勤手当は片道の通勤距離に応じた非課税枠が設けられており、その金額以下であれば所得税は課税されない
・非課税枠が引き上げられると、手取り収入が増える場合がある

 
本記事執筆時点では、非課税枠の引き上げ幅・引き上げ時期については明確にされていません。ただ、2025年8月7日に人事院が勧告を行いましたので、本記事ではその内容を基に解説しました。報道では、通勤手当の非課税枠の引き上げは2025年秋とされていますので、今後の政府の動きに注目していきましょう。
 

出典

人事院 令和7年人事院勧告
デジタル庁 e-Gov法令検索 所得税法
デジタル庁 e-Gov法令検索 所得税法施行令
国税庁 No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
国税庁 通勤手当の非課税限度額の改正について
日本年金機構 Q 標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。
 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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