父の死後「年金+遺族年金」を“月15万円”受給する70歳の母。扶養に入れたら「私の税金」はどれだけ“控除”されますか? メリット・デメリットを確認

配信日: 2025.12.07
この記事は約 3 分で読めます。
父の死後「年金+遺族年金」を“月15万円”受給する70歳の母。扶養に入れたら「私の税金」はどれだけ“控除”されますか? メリット・デメリットを確認
父親が亡くなると、残された母親の生活を支えるために、扶養に入れることを検討する人も多いでしょう。しかし、70歳の母親が遺族年金と合わせて月に15万円(年間180万円)を受給していると聞くと、「収入が多くて扶養には入れられないのでは」と不安になるのではないでしょうか。
 
本記事では、年金収入がある母親を扶養に入れることが可能なのかどうか、扶養の要件である「合計所得金額」の計算方法を詳しく解説します。また、扶養に入れることで得られる節税メリットを控除額とともに紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

扶養に入れるかどうかのポイントは「合計所得金額」

税法上の扶養(控除対象扶養親族)に入れるかどうかは、年収額そのものではなく、税法上の「合計所得金額」で判断されます。
 
扶養に入れるための最も重要な要件の1つが、扶養される側の合計所得金額が令和7年分所得税から年間58万円以下であることです。70歳の母親が受け取る年金には、大きく分けて「遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)」と「老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)」があります。
 
このうち遺族年金は非課税所得とされ、扶養判定に用いる合計所得金額には含まれません。したがって、母親が月15万円受け取っている年金の内訳がすべて遺族年金であれば、合計所得金額は0円となり、ほかの要件を満たせば扶養に入れることが可能です。
 

月15万円の年金の内訳と扶養に入れる具体的な要件

月15万円(年間180万円)の年金を受給している母親を扶養に入れるには、以下の3つを満たす必要があります。
 

・合計所得金額が58万円以下であること
・生計を一にしている
・ほかの親族の扶養親族でない

 
合計所得金額は「合計所得金額=公的年金収入―公的年金等控除額」で算出します。遺族年金は非課税なので、計算に含めるのは老齢年金のみです。
 
70歳以上の公的年金等控除額は、年金収入が330万円以下で年間110万円です。したがって、公的年金収入の上限は「58万円+110万円=168万円」となり、老齢年金の年間収入が168万円以下であれば扶養に入れることができます。
 
年間180万円のうち、公的年金が168万円を超えていないか内訳を確認しましょう。また、税法上の扶養は同居が必須ではありません。別居していても、仕送りなどで生活費を援助していれば「生計を一にしている」とみなされます。
 

健康保険上の扶養家族

母親を健康保険の扶養に入れるには、保険者の認定が必要です。協会けんぽを例にすると、以下のとおりです。
 

・年間収入が130万円未満
・生計を一にしている
・親の年齢が75歳未満

 
税法上と違い、健康保険上は遺族年金も収入として扱われます。また、収入が被保険者(子)の収入の半分未満である、別居の場合は仕送り額未満であることが条件になります。
 
なお、75歳になると後期高齢者医療制度に自動移行するため、健康保険の扶養には入れません。
 

扶養に入れることで受けられるメリット・デメリット

母親を扶養に入れると、扶養控除により所得税と住民税の軽減が可能です。70歳以上の場合は「老人扶養親族」として控除額が大きくなり、同居なら所得税58万円と住民税48万円、別居や仕送りの場合は所得税48万円と住民税38万円が控除されます。
 
一方、健康保険の扶養に入れた場合は、高額療養費制度の自己負担額や介護サービス費の自己負担割合が、子の所得区分に基づいて計算されるため、結果的に親の負担が増える可能性があります。
 
そのため、税金の軽減額と医療・介護の負担増の可能性を比較し、親の健康状態や今後の介護方針も含めて判断することが重要です。
 

母親の年金内訳を確認しよう

70歳の母親が遺族年金と合わせて月15万円(年間180万円)を受給していても、扶養に入れることは十分可能です。ポイントは、遺族年金が非課税であり、合計所得金額の計算に含まれない点です。まずは、月15万円のうち老齢年金がどの程度含まれているのかを確認しましょう。
 
なお、健康保険上の扶養は年齢や条件が異なるため、メリットとデメリットの比較が必要です。扶養控除によって節税メリットも受けられるため、ぜひ条件をクリアしているか確認してみてください。
 

出典

国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問