退職金が3000万円の場合、翌年の住民税・所得税はいくら引かれる?シミュレーション付きで解説
しかし結論から言うと、退職金は税制上かなり優遇されており、思っているほど税金はかかりません。
本記事では、退職金が3000万円だった場合に、所得税・住民税はいくらかかるのかを具体的なシミュレーションを交えてわかりやすく解説します。あわせて、翌年の住民税への影響や注意点も詳しく見ていきましょう。
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目次
退職金にかかる税金の仕組みとは?
退職金は、毎月の給与や賞与とは異なり、「退職所得」という特別な所得区分で課税されます。退職所得の大きな特徴は次の2点です。
・退職所得控除が非常に大きい
・控除後の金額の“2分の1”だけが課税対象になる(※勤続5年以下の役員等を除き)
この仕組みのおかげで、同じ3000万円でも給与として受け取る場合と比べると、税負担は大幅に軽くなります。
退職所得控除はいくらになる?
退職所得控除の金額は勤続年数によって決まります。
【勤続20年まで】
40万円 × 勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
【勤続20年を超える場合】
800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
【例】勤続35年の場合】
800万円 + 70万円 × 15年
= 1850万円
長年勤務してきた人ほど、控除額が非常に大きくなるのが特徴です。
退職金3000万円の課税所得を計算してみよう
それでは、実際に税金計算をしてみます。
・退職金3000万円
・退職所得控除1850万円
・控除後の金額1150万円
・課税退職所得1150万円 ÷ 2 = 575万円(※300万円超の場合)
この「575万円」に対して、所得税と住民税がかかります。
所得税はいくらかかる?
575万円は、所得税の税率表では「20%」の区分に該当します。
<所得税>
575万円 × 20% - 42万7500円= 約72万2500円
さらに、所得税には復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。
・復興特別所得税約1万5000円
所得税の合計 約74万円
住民税はいくらかかる?
退職所得にかかる住民税は、原則として一律10%です。
575万円 × 10%= 約57万5000円
原則として、この住民税は退職金支給時に「特別徴収」されるため、翌年にまとめて請求されないケースが一般的です。
税金はいくら引かれ、手取りはいくら?
ここまでをまとめると、
・所得税約74万円
・住民税約57万円
税金合計 約131万円
■手取り額の目安
3000万円 - 131万円 = 約2869万円
「3000万円もらっても半分以上税金で消える」ということはなく、実際には9割以上が手元に残る計算になります。
翌年の住民税は高くならない?
退職後に多くの人が心配するのが、「翌年の住民税が急に高くなるのでは? 」という点です。
結論として、退職所得は翌年の住民税には原則として反映されません。そのため、退職後に収入がなければ、翌年の住民税は大きく下がる、あるいは非課税になるケースもあります。
退職所得の申告書は必ず提出する
退職金を受け取る際には、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出する必要があります。これを提出しないと、一律20.42%という高い税率で源泉徴収されてしまいます。
あとから確定申告で取り戻すことはできますが、資金繰りや手間を考えると、必ず提出しておくべき重要書類です。
退職金3000万円でも税金は意外と少ない
退職金3000万円を勤続35年で受け取った場合、
・税金は約131万円
・手取りは約2870万円
・翌年の住民税への影響はほぼなし
と、税制上かなり有利な扱いを受けられます。
退職後の生活設計や資産運用を考えるうえでも、退職金の税金を正しく理解することは非常に重要です。退職金を受け取る前にシミュレーションを行い、安心して次の人生設計を進めましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
