年金が「400万円以下なら確定申告不要」と信じてたのに、なぜか“健康保険・介護保険料”が増えた!? 申告書1枚で「5万円の差」が生じる理由とは? 年金250万円のケースで試算
年金受給者の父親は、「確定申告不要制度」を知って安心していました。しかし、数ヶ月後、届いた保険料の決定通知書を見ると、前年より高くなっていたのです。
実は「確定申告不要」は所得税の話で、住民税や保険料の計算には別の手続きが必要です。何もしないと、本来受けられる控除が適用されず、数万円単位で損をしてしまうケースがあります。
本記事では、確定申告不要制度の注意点をはじめ、手続きをしないとどれくらい損をするのか、具体的な金額をシミュレーションして解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
「年金400万円以下の確定申告不要制度」とは何か
まず、「確定申告不要制度」について正しく理解しておきましょう。これは、高齢者の事務負担を軽減するために設けられた特例措置です。以下の2つの条件をどちらも満たす場合、税務署への「所得税の確定申告」を行わなくてもよいとされています。
1. 公的年金などの収入金額が400万円以下であること
2. 公的年金など以外の所得(個人年金、給与、不動産所得など)が20万円以下であること
多くの年金受給者は、この条件に当てはまります。そのため、「じゃあ確定申告は必要ないんだ」と思ってしまうのも無理はないかもしれません。
しかし、ここで重要なのは「確定申告をしなくていい=税金の手続きがすべて免除される」わけではないという点です。
税務署と市役所は別!「住民税の申告」を忘れてはならない
日本の主な税金には、国に納める「所得税」と、住んでいる自治体に納める「住民税」の2つがあります。
「確定申告不要制度」は、あくまで国(税務署)に対する「所得税」の免除ルールのため、住まいの自治体に対する「住民税」の申告が不要になるわけではないのです。
通常、確定申告をすればそのデータが税務署から自治体へ送られるため、自動的に住民税も計算されます。しかし、確定申告を「しない」という選択をした場合、自治体には詳しい控除情報(医療費をいくら払ったか、生命保険料はいくらかなど)が届きません。
その結果、自治体は「年金機構から送られてきた年金額」と「基本的な控除」だけで住民税を計算します。つまり、「本来なら引いてもらえるはずの医療費控除などが一切適用されていない状態」で住民税が決定してしまうのです。
保険料は「前年の合計所得金額」で決まる
「住民税が数千円高くなるくらいなら、面倒な手続きをするよりマシ」と思う人もいるかもしれません。しかし、影響は住民税だけにとどまりません。高齢者家計に重くのしかかる「国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)」と「介護保険料」は、いずれも「所得額のデータ」を基に算出されます。
確定申告をしない場合の流れは、次の通りです。
1. 確定申告をしない(医療費控除などの情報がない)
2. 自治体は控除なしの高い所得で「住民税」を計算する
3. 高い所得データを基に「国民健康保険料」が計算され、高くなる
4. 同様に「介護保険料」の基準も上がり、高くなる
5. さらに、所得が高いと判断されれば、医療機関窓口での負担割合(1割→2割など)や、高額療養費の上限額まで上がってしまう可能性がある
このように、1つの申告漏れが、社会保険料の連鎖的な増加を引き起こすのです。
「申告する or しない」でいくら違う?
では、具体的にどれくらいの金額差が出るのか、モデルケースで試算してみましょう。料率は自治体によって異なるため、あくまで目安の概算です。
・年金収入:250万円
・年間の医療費支払額:30万円(保険補てんなし)
申告をしなかった場合、医療費控除(20万円分)が適用されず、課税所得が本来より20万円高く計算されてしまいます。一方、医療費控除を申請すれば、課税所得が20万円下がります。
・住民税:20万円×10%=約2万円の節約
・後期高齢者医療保険料:20万円×10%=約2万円の節約
・介護保険料:所得段階が下がれば約1万~2万円の節約
合計:年間約5万~6万円の節約
申告書を1枚出すだけで、年間5万円程度の差が出ることがあります。さらに年金から所得税が源泉徴収されている人は、確定申告で数千~数万円が還付される可能性もあるでしょう。
確定申告不要制度を正しく理解して損を防ごう
「年金400万円以下なら確定申告不要」は、あくまで「税務署へ申告する義務がない」という意味です。何もしなければ住民税、国民健康保険料、介護保険料が連鎖的に高くなり、家計を圧迫することになります。
特に、医療費がかさんだ年や、保険料を自分で納めた年は注意が必要です。年明けには領収書や証明書を整理し、以下のどちらかを検討しましょう。
・確定申告(税務署):所得税の還付が受けられ、住民税申告も兼ねられる
・住民税の申告(市町村役場):所得税の還付はないが、国民健康保険・介護保険料を下げる効果がある
両親が年金受給者なら、「医療費の領収書、捨ててない? 申告しないと保険料が高くなるよ」と声をかけてあげてください。少しの手間で守れるお金は、意外と大きいものです。
出典
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
政府広報オンライン ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度
厚生労働省 後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
