年収の壁が178万円に引き上げられたそうですが、扶養内のパート勤務だとどんなメリット・デメリットがありますか?

配信日: 2026.01.22
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年収の壁が178万円に引き上げられたそうですが、扶養内のパート勤務だとどんなメリット・デメリットがありますか?
令和8年度税制改正において、「所得税の課税最低限を 178 万円まで特例的に先取りして引き上げる」ことが閣議決定されました。これにより“年収の壁”が178万円に引き上げられるため、興味を持たれる方は多いのではないでしょうか。
 
そこで本記事では、「『年収の壁が178万円に引き上げられる』とはどういうことか?」「年収の壁の引き上げは、扶養内のパート勤務にどんなメリット・デメリットがあるのか?」について解説します。年収の壁について興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

「年収の壁が178万円に引き上げられる」とはどういうことか?

令和8年度の税制改正のうち、所得税に関するポイントは以下のとおりです。


(1)基礎控除額を62万円に引き上げる(合計所得金額が 2350 万円以下である個人の場合)
(2)給与所得控除の最低保証額を69万円に引き上げる
(3)基礎控除の特例により、控除額を42万円加算する(居住者のその年分の合計所得金額が 655 万円以下の場合)
(4)給与所得控除の最低保障額の特例により、給与所得控除の最低保証額をさらに5万円引き上げる

収入が給与所得(給料や賞与など)のみである会社員の場合、所得税(納税額)の計算は、年収→所得(給与所得)金額→課税所得金額→所得税額→納付税額の順で行います。
 
上記(1)(3)の「基礎控除」は、この計算過程における「課税所得金額」を算出する際に用いられます。一方、(2)(4)の「給与所得控除」は、「給与所得」を算出する際に用いられます。
 
年収の額が基礎控除額と給与所得控除額の合計額以下であれば所得税は課税されないということから、この合計額は「年収の壁」と呼ばれています。令和8年の税制改正により、一部所得要件があるものの、この合計額が160万円から178万円(=62万円+69万円+42万円+5万円)に引き上げられることになります。
 

年収の壁の引き上げは、扶養内のパート勤務にどんなメリット・デメリットがあるのか?

「年収の壁」には、所得税・住民税における“壁”と社会保険における“壁”があります。所得税・住民税における“壁”とは、前項のように所得税・住民税がかからない年収限度額のことです。一方、社会保険における“壁”とは、社会保険に加入しなければいけない年収限度額のことです。
 
前項で解説をした「178万円の壁」とは所得税における“壁”のことであり、この金額の引き上げは、所得税がかからない年収基準の上昇を意味します。つまり、非課税の範囲内で稼げる収入が多くなるということです。
 
この点は家計にとって喜ばしいことですが、同時に以下の点に注意する必要があります。


(1)住民税がかかる可能性がある
(2)配偶者控除から配偶者特別控除になり、配偶者の所得税(納税額)が上がる可能性がある
(3)社会保険に加入しなければならなくなる可能性がある

(1)は、所得税と住民税では「年収の壁」の金額が違う(基礎控除額が違う)ということに起因します。
 
令和8年度の税制改正における「基礎控除額の引き上げ」は、所得税における基礎控除のことであり、住民税における基礎控除のことではありません。したがって、年収によっては「所得税はかからないけれど住民税はかかる」ということが起こります。
 
(2)は、所得税における「扶養」に関することです。令和8年度の税制改正では、「同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を 62 万円以下に引き上げる」としています。
 
納税者が配偶者控除を受けるためには、配偶者の年間所得合計額が一定額以下である必要があり、令和7年は「58万円(年収にして123万円)」でした。これが令和8年は「62万円(年収にして136万円)」になります。
 
これを超えると配偶者特別控除となり、所得合計額が95万円(年収にして169万円)を超えると控除額が下がります。その場合は納税者本人の納付税額が、わずかではありますが上がることになります。
 
(3)は、社会保険における「扶養」に関することです。「週20時間以上働く」または「年収が130万円以上(60歳以上または障害者の場合は180万円)になる」場合、社会保険に加入しなければなりません。
 
扶養内で働くということを意識されている方は、この点が最も気になる点の一つでしょう。社会保険に加入すれば、社会保険料の分だけ手取り収入が減ってしまうので、家計のことを考えれば「手取り収入が減るのは嫌」と思われるかもしれません。
 
ただ、社会保険に加入するということは国の保障を受けられるということですので、老後の生活に備えて国の保険に加入する(老齢厚生年金を受け取れる)と考えれば、社会保険料を支払うことにも意義はあるといえるのではないでしょうか。
 

まとめ

本記事では「『年収の壁が178万円に引き上げられる』とはどういうことか?」「年収の壁の引き上げは、扶養内のパート勤務にどんなメリット・デメリットがあるのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。


・「年収の壁が178万円に引き上げられる」とは、令和8年度の税制改正において(1)基礎控除額が62万円に引き上げられる(合計所得金額が 2350 万円以下である個人の場合)、(2)給与所得控除の最低保証額を69万円に引き上げられる、(3)基礎控除の特例により控除額を42万円加算される(居住者のその年分の合計所得金額が 655 万円以下の場合)、(4)給与所得控除の最低保障額の特例により給与所得控除の最低保証額をさらに5万円引き上げられることである

・扶養内のパート勤務の場合、年収の壁の引き上げによるメリットとして「これまでより多く働いても所得税が非課税になる」ことがある一方で、デメリットとして「住民税がかかる可能性がある」「配偶者控除から配偶者特別控除になり、配偶者の所得税(納税額)が上がる可能性がある」「社会保険に加入しなければならなくなる可能性がある」ことがある

社会保険への加入をデメリットとして挙げましたが、これは「扶養内で働きたい」ことを前提とした場合の気を付けるべき点として挙げたまでです。筆者としては、社会保険は国による保証のため加入したほうがよいと考えています。
 
特に「人生100年時代」といわれている今、老後資金の必要性は高まる一方です。令和8年の税制改正は、「所得税が非課税になって稼げるようになった分、社会保険料を支払ってもいいかな」と考えるきっかけにしてもよいのではないでしょうか。
 

出典

財務省 税制改正の概要
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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