所得税ってどんな税金?計算方法から住民税との違いを解説
配信日: 2019.11.24 更新日: 2024.10.22
ここでは、税の中心になっている所得税と個人住民税について、そのしくみと私たちのくらしに関係する部分を、できるだけ分かりやすく解説することにしましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
所得税とは?
個人の所得にかかる税金を所得税と言い、収入から経費を引いた額に税率を掛けて、計算されます。
所得の種類は、総合課税される「給与」「事業」「配当」「不動産」「譲渡」「一時」「雑」の7つの所得と、分離課税される「退職」「利子」「土地等の譲渡」「株式等の譲渡等(※)」「山林」の5つの所得の合計12種類あります。 ※上場株式の配当を含む
所得税の税率は、以下の表の通り所得が多くなるほど、税率が高くなる累進税率が適用されています。
平成25年から令和19年までの間は、復興所得税(基準所得税額の2.1%)が加算されています。所得税を納める手順は、確定申告・納付または年末調整・源泉徴収によります。計算方法は後ほど説明します。
個人住民税との違い
納税者は、各都道府県と市町村に対して、所得税の額に応じて、これら地方自治体向けの税を納めますが、これが個人住民税(以下住民税)です。住民税は、所得税の確定申告書または年末調整に基づいて計算されますので、申告書の提出などは、原則不要です。
また、税額は所得額に関わらず10%(都道府県民税4%、市町村民税6%)となっています(政令指定都市は都道府県民税2%、市民税8%)。
納税の時期は、確定申告所得税は申告書の提出日と同じ3月15日が納付期限であるの対して、住民税は全て翌年(6月以降)の納付となります。給与所得者は所得税と同じく給与から天引きされる特別徴収で納め、個人事業主などは普通徴収で年4回に分けて、もしくは一括納付で納付します。
年間の所得に前年と大きな差がある人や、退職金を受け取った翌年などは、時には手取り収入が減る場合でも、相当額の住民税を天引きで特別徴収されることがあるので注意が必要です。
また、直接個人は関係がありませんが、源泉徴収所得税と住民税を天引きした事業者等は、毎月翌月の10日までに、納めなければならないことになっています。
雇用形態別の所得税と住民税
会社員
一般的に会社員の場合は、所得税・住民税は毎月の給与から天引きされます。通常、基礎控除38万円と給与所得控除65万円の控除を超える場合は、所得税が徴収されます。また住民税は、翌年の6月から給与から天引きして、特別徴収されます。
パート・アルバイト
パートやアルバイトをする際に知っておきたいのが、「103万円の壁」です。「103万円の壁」とは、基礎控除38万円と給与所得控除の65万円を合算した金額のことです。103万円を超えると、所得税と住民税を納めなければなりませんので注意が必要です。
学生
学生のアルバイトの場合は、基礎控除38万円、給与所得控除65万円に加えて、勤労学生控除27万円が追加され、130万円までの控除が認められます。ただし、勤労学生控除適用には、小・中・高・大学など特定の学校などの生徒・学生であることなどの条件を満たすことが必要です。
個人事業主・フリーランス
個人事業・フリーランス(以下、個人事業主)の場合は、一括納税と、それに応じた住民税の普通納付(年4回)があります。
個人事業主には、青色申告制度があり、10万円や65万円の青色申告特別控除や、その他にも節税になる制度がありますので、開業時に青色申告承認申請を提出することが望ましいでしょう。また、最近は会社員の兼業を認めるケースもあり、その際の事業所得は給与所得と合算した確定申告と納税が必要になります。
所得税の控除の活用は節税に影響あり?
所得税を計算するに際しては、14の所得控除が決められています。ここでは、多くの人が活用できる可能性の高い種類の控除から順に見てみましょう。
これら14の所得控除のうち、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などは、源泉徴収、確定申告どちらでも、適用がもれることはほとんどないと思われますが、以下の所得控除は注意して確認してみる必要があり、それが節税につながるところです。
配偶者特別控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除(ふるさと納税)、雑損控除などは年末調整や確定申告時によく確認して、節税効果を上げるようにすることが大切です。
所得税の計算方法とは?
(1)年間(1月1日~12月31日)の所得を計算する
・所得は収入から必要経費を差し引きして算出します。
・収入から経費を差し引きできるのは、通常、「事業」「不動産」「譲渡」「土地等の譲渡」「株式等の譲渡等」「山林」の各所得です。
・「給与」は給与所得控除で必要経費相当分が差し引きされます。
・「退職」「配当」「利子」「一時」「雑」は必要経費が認められないことが一般的です。
・以上の総合課税の所得合計と損益通算によって総所得金額を算出します。
(2)所得控除を差し引きする
(1)の総所得金額から、14種類の所得控除のうち該当するものを差し引きして課税総所得金額を出します。
(3)課税総所得額に税率を掛ける
税率は所得額が大きくなるほど、税率が高くなる累進税率になっており、7段階の税率は5%~45%まであります。課税所得額に税率を掛けたのち、定額の控除額を差し引きすると算出税額になります。
(4)税額控除を差し引く
住宅ローン減税などは税額控除となっており、上記の算出税額から税額控除分を差し引くと納付税額になります。
実際の所得・控除の計算をしてみよう
ケース1
夫:給与所得 650万円、妻:パート収入 101万円、1子:12歳 2子:8歳
社会保険料:71万円、生命保険:12万円(新制度)、iDeCo掛金:24万円、医療費:15万円の場合
(1)総所得 650万円
(2)所得控除
給与所得控除 174万円 =650万円×20%+44万円
社会保険料控除 71万円
基礎控除 38万円
配偶者控除 38万円
生命保険控除 4万円 新制度年間保険料8万円超は4万円
iDeCo控除 24万円 全額控除
医療費控除 5万円 =15万円-10万円
所得控除計 354万円
(3)課税所得額 296万円 =650万円-354万円
(4)課税額 19万8500円 =296万円×10%-9.75万円
ケース2
夫:給与所得 600万円、妻:パート収入 120万円 、社会保険料:65万円、ふるさと納税:3万円
(1)総所得 600万円
(2)所得控除
給与所得控除 164万円 =600万円×20%+44万円
社会保険料控除 65万円
基礎控除 38万円
配偶者特別控除 38万円 = 配偶者の合計所得金額55万円
(38万超85万円以下)
ふるさと納税控除 2.8万円 =3万円-2千円
所得控除計 307.8万円
(3)課税所得額 292.2万円 =600万円-307.8万円
(4)課税額 19万4500円=292万円×10%-9.75万円
ケース3
夫:事業所得 500万円(収入900万円-経費400万円)、妻:パート収入 155万円、75歳母親扶養、社会保険料:65万円、iDeCo掛金 48万円
(1)総所得 500万円
(2)所得控除
社会保険料控除 65万円
基礎控除 38万円
配偶者特別控除 36万円 = 配偶者の合計所得金額90万円(155-65)
老人扶養控除 58万円
iDeCo控除 48万円
所得控除計 245万円
(3)課税所得額 255万円 =500万円-245万円
(4)課税額 15万7500円 =255万円×10%-9.75万円
上記の例は、会社員と自営業のケースを例として計算をしてみました。実際にはさまざまなケースが想定されますので、会社では総務担当の社員に、あるいは確定申告をする場合は税務署に質問すればよいでしょう。
所得税の計算方法とFAQ
Q:所得税の納付期限ってありますか?
A:所得税の納付は、会社員の場合は源泉徴収と年末調整で済むので、直接納付は原則不要です。源泉徴収で納め過ぎの場合は、12月給与で還付されるのはご承知の通りです。
自営業や給与以外の所得のある場合は、通常は納付期限までに、一括納付することになります。自営で毎年多額になる場合は、予定納税で前年の所得に応じて納付をしておくと、資金繰り上の課題解決になります。
Q:クレジットカードで納付ができると聞いたのですが可能ですか?
A:2017年から国税のクレジットカード納付が認められておりますが、カード会社からポイントが付く一方、1万円に付き73円~76円(税別)の手数料がかかります。振り込みや現金持参の必要がないことは、メリットと考えられます。
まとめ
所得の種類と税率、所得税と住民税の違い、個人事情を反映させるための所得控除の概略の内容を見てきました。
税金額を算出する手順についても解説しましたが、給与所得の方は源泉徴収票を見て、この流れを確認すると、全体像が分かるのではないでしょうか。また、確定申告をする人は、申告書で確認されてはいかがでしょうか。
所得控除をきっちりと生かすことは、節税以前の当然の権利ですので、もれないように手続きを行っていただければと考えます。その上に、所得税の全体像を理解して、さらに節税のステップがあるのではないでしょうか。
出典
(※1)総務省 国税・地方税の税収内訳(平成29年度決算額)
(※2)国税庁 No.2260 所得税の税率
(※3)国税庁 所得金額から差し引かれる金額(所得控除)
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP