【FP相談】離婚した場合、確定申告はどうしたら良いですか?

配信日: 2021.02.18

この記事は約 5 分で読めます。
【FP相談】離婚した場合、確定申告はどうしたら良いですか?
一生添い遂げるつもりで結婚しても、こんなハズじゃなかったとお別れすることもあります。性格の不一致、相手のDV、浮気、賭けごとなど、離婚する理由もさまざまでしょう。
 
財産分与、子どもを抱えて離婚する場合は養育費を、相手が有責(例えば浮気やDV等)であれば慰謝料や治療費を受け取ることになるでしょう。これからを生きるために、正当な理由で受け取れるお金は受け取りましょう。
 
ところで、その受け取ったお金は確定申告しなければならないのでしょうか。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

財産分与に税金はかかる?

離婚のため、財産分与として相手から財産をもらった場合、贈与税はかかりません。夫婦の財産を精算し、離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づいたものだからです。
 
ただし、事情を考慮しても多すぎる場合や、贈与税・相続税を逃れるために離婚をしたと認められる場合は、贈与税がかかります。
 
離婚後に土地や建物で財産分与が行われたときは、譲渡した人が譲渡所得の確定申告をします(居住用財産を譲渡した場合は3000万円の特別控除の特例があります)。ところが、離婚前に財産をもらった場合は、受け取る側に贈与税がかかります。
 
贈与税には110万円の基礎控除があり、110万円までは贈与税がかかりませんし、贈与税がかからなければ申告の必要もありません。
 
しかし、婚姻期間が20年以上ある夫婦間で、居住用不動産またはそれを買うためのお金を贈与する場合、基礎控除110万円の他に最高2000万円の配偶者控除ができる特例がありますが、この特例を使って贈与税がゼロになっても確定申告が必要です。
 
また、住宅借入金等特別控除を受けている相手の持分を譲渡される場合、当初の申請内容と異なってくるため、譲渡される側も確定申告で住宅借入金等特別控除の再申請が必要です。
 

慰謝料・養育費は原則非課税

以下のような、被害を受けた者が受け取った治療費、慰謝料、損害賠償金などは非課税です。

●心身に加えられた損害について受け取るもの(慰謝料など)
●不法行為や思わぬ事故により資産に受けた損害について受け取るもの(損害賠償金など)
●心身または資産に受けた損害について支払いを受けるもの(見舞金など)

 
実際に被害を受けた分を補填した上で損害賠償金が余っても、余った部分に課税されません(ただし、被害者の所得の金額の計算上、経費とされる金額を補填する場合は、その金額については、収入金額とされます)。
 
また、扶養義務者から送金された生活費や教育費に、贈与税はかかりません。よって、子どもを育てるための養育費に課税されません。
 

忘れてはならない、ひとり親控除、寡婦控除

扶養家族がいる方が離婚した場合に、忘れてはならない所得控除があります。ひとり親控除、寡婦控除です。
 
ひとり親とは、離婚後に結婚をしていない、または配偶者の生死の明らかでない人のうち、下記の3つの条件すべてに当てはまる人のことです(12月31日の現況で判断します)。

(1)事実婚でもない。
(2)生計を一にする「子」(総所得金額48万円以下で、他の人の扶養親族になっていない)がいる。
(3)合計所得金額が500万円以下。

 
要件に該当すれば、35万円のひとり親控除を受けることができます(令和2年分より)。
 
また、(2)が子ではなく扶養親族の場合は寡婦控除(控除額27万円)となります。生計を一にする16歳未満の子どもは、「扶養控除」の対象になりませんが、「ひとり親控除」については年齢制限がないため、控除を受けることができます。
 

扶養控除を受けられるのは、どちらか一方のみ

ところで、ひとり親の要件の1つに、生計を一にする子とありますが、その子は「他の人の扶養親族になっていないこと」が条件です。
 
生計を一にするとは、同じ家に生活していなくても、扶養者から生活費や学資金などの送金が行われていれば生計を一にするとして取り扱われます。よって、元配偶者による養育費の支払いが、扶養義務として支払われる場合や、成人に達するまでなど一定の年齢に限って支払われる場合も、扶養控除の対象です。
 
しかし、扶養控除は同居の親か、養育費を支払う元配偶者かどちらかしか受けることができません。養育費で扶養控除を受ける場合、同居している親が、子を扶養控除の対象にしていないか確認が必要です。どちらかが確定申告済みの場合、その年の扶養親族の変更はできません。
 
変更する場合、扶養を増やす側と減らす側双方の確定申告が必要です。離婚した相手と連絡を取りたくないかもしれませんが、どちらが控除を受けられるか確認しておくと、その後のトラブルは防げます。つらくても、今、自分にできることに目を向けましょう。
 
確定申告の詳細は、お近くの税務署でおたずねください。令和2年8月1日の法令に基づく国税庁のホームページを参考にしています。
 
(参考・引用)
国税庁「離婚して財産をもらったとき」
国税庁「離婚による財産分与で居住用家屋の共有持ち分を追加取得した場合の住宅借入金特別控除について」
国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
国税庁「加害者から治療日、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
国税庁「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)」
国税庁「寡婦控除」
国税庁「ひとり親控除」
国税庁「生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)」
国税庁「納税者が二人以上いる場合の不応控除の所属の変更」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
 

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集