更新日: 2019.08.29 その他相続

生命保険の受取人となった兄弟のトラブルとは?

執筆者 : 宿輪德幸

生命保険の受取人となった兄弟のトラブルとは?
相談者-「先日亡くなった父の生命保険金を、受取人になっていた兄が分けてくれません」
 
「生命保険金は受取人固有の財産となるものです。遺産分割の対象ではありませんので、仕方ありませんね」
 
相談者-「でも父は、『生命保険金にした方が使いやすいから、受取人はとりあえず長男にしておくけど、兄弟みんなで分けてくれ』と言っていたんですよ」
 

【PR】相続の悩みをLINEから気軽に無料相談!

【PR】そうぞくドットコム不動産

おすすめポイント

・10秒でわかる!相続手続きの無料診断を実施。
・相続の専門家へ電話やLINEで無料相談が可能!
・「自分で相続手続き」を行う方法も徹底解説。
・友だち追加で特典や割引も多数!!

宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
https://www.shukuwa.com/

口座名義人が死亡すると口座は凍結

亡くなった方の預貯金は、相続財産として遺産分割の対象になります。口座名義人が死亡すると、遺産分割で分け方が決定するまで銀行は口座を凍結します。
 
凍結された口座からは、お金をおろすことはできませんし、今までしていた引き落としもストップします(改正相続法の施行後(2019年7月予定)は、一定額の預貯金は引き出しできるようになります)。
 
・ 公共料金
・ クレジットカード支払い
・ 固定資産税の支払い
・ 住宅ローンの支払い
 
などもできなくなります。
 
亡くなった方のこれらの債務は、法定相続人の債務になります。また、お葬式の費用などは現金で支払う必要があるため、現金の用意が必要です。
 
このような問題を避けるため、現金としてスムーズに受け取りやすい生命保険に加入している方も多くいます。その際、便宜上相続人の1人を受取人として指定していることもあります。
 

死亡保険金は受取人の固有財産

死亡保険金の請求権は、保険契約の効果として受取人が取得するものです。このことから、受取人の固有の財産となり、相続の対象ではないとされています(税法上は、みなし相続財産として扱われます)。裁判でもそれに沿った判例が出ています。
 
平成16年最高裁判例-「特定の相続人を受取人に指定した場合、死亡保険金請求権は保険契約の効力の発生と同時に受取人の固有財産となっているため、相続の対象とならない。」
 
他方、昭和51年には大阪家庭裁判所で、死亡保険金を特別受益(相続財産)とする審判もあります。-「相続人の一部のみが死亡保険金を取得するような場合に、実質的に不衡平が生ずるおそれがあるため、例外的に死亡保険金を特別受益として扱うこともある。」
 
保険金は遺産分割の対象ではないというのが基本ですが、平成16年最高裁の判決理由をよく読むと保険金が相続財産となる場合が示されています。
 

《上記平成16年の判示》
 死亡保険金は民法903条1項の「特別受益」に当たらないとした上で、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となる。
 
この特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に占める比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものである。

 
「保険金受取人の固有財産とすることが、著しく不公平であると評価すべき特段の事情がある場合には、特別受益として遺産分割の対象となる。」ということです。つまり、昭和51年の家裁審判も平成16年の最高裁判例も判断基準は同じであることになります。
 

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

相談例の場合

相談者が言うように、お父さんが長男を受取人とした真意が、長男に与えるためではなく、便宜上そうしただけだったのであれば相続人全員で話し合う必要があるでしょう。
 
合意できなければ、
(1)諦める
(2)『特段の事情』になるか裁判所で判断
の二者択一となります。
 
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士
 


 

ライターさん募集