固定資産税が6倍に⁉ 「空き家」を放置すると起こる税金増額の仕組みとは?
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
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空き家を放置しておくと固定資産税が6倍になるの?
住む予定のない実家などの土地を相続し、持て余したあげくそのまま放置すると、固定資産税が6倍になる可能性があります。ただし、すべての空き家の固定資産税が自動的に6倍になるのではありません。
そのまま放置すると倒壊などの恐れがある状態の空き家や、窓や壁が破損しているなど管理が不十分な状態の空き家が対象です。空き家であっても、定期的に建物内外のメンテナンスをしたり、通気や換気をしたりなど適切な管理が行われている空き家は対象外です。
空き家の税金が増額になる仕組み
土地や建物(不動産)を所有していると、固定資産税と都市計画税がかかります。
税負担軽減のために「固定資産税等の住宅用地特例」があり、土地が住宅用地に該当すると、固定資産税等が減額されます。つまり、払うべき税金が少なくなります。住宅用地とは、住宅が建っている土地のことです。
図表1
図表2
空き家も、住宅用地特例制度の対象です。空き家を取り壊して更地にすると、建物の固定資産税等はなくなりますが、土地は特例制度の対象から外れて税金が高くなります。建物を残したほうが税制的に有利なことから、空き家として多くの家が残されてきました。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、使用目的のない空き家(賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家)は385万戸、総住宅数に占める割合は5.9%と全国で年々増加しています。
空き家の適切な管理が行われていないと、倒壊、虫やネズミの発生などによる健康被害の誘発、景観の悪化などさまざまな問題を引き起こし、周辺環境に大きな影響をおよぼしてしまいます。
適切な管理をしていない空き家が放置されていくことへの対応として、市区町村長から勧告を受けた空き家の敷地は、住宅用地特例の適用対象外となりました。つまり、200平方メートル以下の小規模宅地の場合、固定資産税は6倍、都市計画税は3倍に増えます。
空き家を「管理する」から「生かす」方法を考えよう
同一名義人が所有する土地、家屋の課税標準額の合計が、免税点(土地30万円・家屋20万円)未満であれば課税されません。都市計画税も同様に課税されません。地方の空き家では、免税点未満で固定資産税等がゼロや非常に低額である物件も多く、税金が増えることが適切な空き家管理を続けることになりにくそうです。
空き家の管理は、税金以外にも費用がかかります。自宅から空き家までの往復の交通費、水道・電気などの公共料金、メンテナンスを業者に依頼すればその費用が、地域によっては町内会費なども必要です。
費用に加えて、労力や時間もかかります。高齢になるにつれ、管理が負担になってくるはずです。自分が管理できなくなっても、コストをかけて空き家を管理し続けますか?
空き家としてずっと管理し続けるだけではなく、住みたい人・使いたい人に売る、貸すなども視野に入れてみてはいかがでしょうか。どうせ誰も買わないだろう、誰も借りないだろうと、空き家のままにしておくのはもったいないです。それは自分の思い込みかもしれません。
空き家を改修してカフェや民泊として生まれ変わらせる、そのような活用の方法もあります。地域の空き家バンクや地元の不動産業者に相談して、空き家の生かし方を考えてみませんか?
出典
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
総務省 令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果
執筆者 : 正田きよ子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者

