更新日: 2020.04.17 損害保険
地震による火災は地震保険と火災保険、どっちが適用されるの?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
地震保険の対象となるのは、どんな時?
地震保険の対象となるのは、どのような時なのでしょうか?
まず、地震による倒壊。地震によって建物が倒壊し、建物に損害が生じたり、その建物の家財に損害が発生した場合に、地震保険の対象となる可能性があります。これは多くの方がイメージできるかと思います。
実は地震の他にも、地震保険の対象となることがあります。例えば火山の噴火。噴火により、土石流などが生じ建物に損害が出た場合や、建物の中の家財に損害を被った時などに、地震保険の対象となる場合があります。
もちろん、火山の噴火に伴い、大きな地響き等が起き、その地響きによって建物が倒壊したり、その建物の中にある家財が損害を受けたりした場合も対象となる可能性があります。
また、津波によって建物が流されたり、その建物の中にある家財が損害を受けたりした場合なども対象となることがあります。東日本大震災では、首都圏沿岸部の液状化現象が発生しました。地震が原因の液状化現象によって建物に損害が生じた場合も、対象となる場合があります。
なお、建物に地震・噴火・津波による損害がなく、家財に損害が生じた場合、家財のみが地震保険の対象になることがあります。
ただし、家財が保障対象となるには、家財の地震保険の契約が必要です。建物の地震保険と家財の地震保険とは別の契約となり、損害の認定基準も異なるからです。
地震保険の対象となる場合は、火災保険では対象外
前述のとおり、地震保険の対象となるのは、地震・噴火・津波・地震を原因とする液状化現象による損害です。これらはいずれも、火災保険では保障の対象外となっています。
なお、先述の例では「対象となる可能性があります」という書き方をさせていただきました。地震保険では、「一部損」に該当して初めて「地震保険の対象」になるからです。地震保険における「一部損」とは、「地震保険の損害認定基準」によって定められています。
では、地震・噴火・津波・地震を原因とする液状化現象による損害で、地震保険における「一部損」に該当しなかった場合は、火災保険の対象になるのかというと、それはありません。地震保険における「一部損」に該当しない時は、火災保険も対象外なのです。
地震保険と火災保険の両方に該当する損害というものはなく、地震保険と火災保険の両方に該当しない損害というものは存在します。
「地震による火災」や「地震の後に発生した火災」は地震保険なの? 火災保険なの?
地震によって火災が発生した場合、地震保険なのでしょうか? 火災保険なのでしょうか?
結論から申し上げますと、地震保険の対象となる可能性があります。しかし、火災保険の対象になりません。
では、地震の後に発生した火災は、地震保険の対象なのでしょうか? 火災保険の対象なのでしょうか?
このような状況は、火災保険は対象外となり、地震保険の対象となる可能性があります。しかし、問題なのは「いつまでが地震の後なのか」という点です。
阪神淡路大震災の例では、地震の2日後に神戸市内で発生した火災により建物を焼失した人が、火災保険の保険金を請求し、その後裁判にまでおよびましたが却下された、ということがありました。「地震から2日後に起きた火災なら、地震とは関係ないのでは?」ということが焦点となった事例です。
まとめに代えて
本稿では、「地震保険の対象になるのはどんな時なのか」ということを見てきました。繰り返しになりますが、地震保険の対象になる時は、火災保険は対象にはなりません。
また、地震の保険金は「火災保険の半分」までしか掛けることができません。それゆえに、地震保険の保険料は割高感がある方もいらっしゃるかもしれません。地震保険を契約するべきか否かは、家計との相談になることもあるでしょう。
地震保険に加入するか迷われている場合は、「地震保険の対象になるのはどんな時なのか」という視点でもご検討なさってください。
(参考)
日本損害保険協会「地震保険」
日本経済新聞(2011年6月24日付)「地震保険、液状化被害の算定基準を追加 損保協会」
損害保険料率算出機構「2018年度(2017年度統計) 火災保険・地震保険の概況」(P.48)
損害保険判例研究会「<67>地震および津波の到来後に火災が発生した場合の地震免責条項の適用」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役