お隣さんの家に火が燃え移ってしまった…。そんな場合、火災保険では賠償責任は問われない?
配信日: 2020.01.02
特に損害保険については、保険料をなるべく安く抑えたいという意識が働きやすく、必要と思われる補償に入っていなかったがために、多額の損失を被ってしまったケースが存在します。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
火事の原因
総務省消防庁の「平成30年版 消防白書」によると、平成29年中の出火件数は3万9373件だったそうですが、そのうちの70.5%が失火によるものでした。
失火とは、簡単にいうと、”うっかり”が原因で火が出たということ。例えば、台所でお料理中にコンロの取り扱いを間違えた、たばこの不始末などによる不注意をもとにした火事です。
主な出火原因別の出火件数
※総務省消防庁「平成30年版 消防白書」
失火と火災保険
火災保険では、山火事などの自然災害だけでなく、失火を原因とする火事による損失も補償の対象です。しかし、失火によってお隣さんの家が燃えてしまった場合は、原則、自分で入っている火災保険からは保険金が支払われないようになっています。
なぜならば、一ヶ所から火事が起こった場合、時として、その被害の範囲は広範囲に及ぶことが考えられるからです。
火元のお家のうっかりミスが原因で、他の多くのお宅が燃えてしまい、火元のお宅に対し被害を受けた方々が損害賠償請求をしてしまうと、その人は著しく経済的に困窮してしまいます。このような状況を防ぐために、失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)では、失火(過失による火災)の場合、損害賠償はしなくて良いと定めています。
ただし、火事の原因が失火(過失)でなく、重大な過失(≒故意)である場合は、この限りではありません。とはいいつつも、わが家が火事を起こしてしまい、お隣さんに迷惑をかけてしまったことで、近所付き合いが悪くなるのもいただけません。
このようなことを想定し、火災保険では、オプションとして「類焼損害特約」という補償を付けられるようになっています。
まとめ
家計面でのリスクマネジメントを考える際は、どのような場合のリスクを想定するかがポイントになります。火災保険においては、火事を想定する場合、隣家への延焼・類焼被害による、その後の近所付き合いが重要なポイントになります。
たとえ失火によりお隣さんの家に火が燃え移り、その損害はお隣さんが入っている火災保険でカバーできるとしても、心情的にはお隣さんへの謝罪の気持ちは残ってしまいます。どこにリスクのポイントがあるかをあらかじめ想像し、補償として何が必要かを認識したうえで、補償設計を組むようにしましょう。
出典:※総務省消防庁「平成30年版 消防白書」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)