新型コロナウイルスの影響で収入激減、給付型奨学金の支援対象になる?
配信日: 2020.05.02
今回、新型コロナウイルスの影響で、家計収入が減少したご家庭は多いことでしょう。学生が支援対象校に在学中で、急変後の所得が要件を満たせば、給付型奨学金の支援対象となるかもしれません。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
新型コロナウイルスによる収入減少は家計急変事由に該当
日本学生支援機構が家計急変に該当するとしている事由は4つです。
1.生計維持者の死亡
2.生計維持者が事故や病気で半年以上就労困難な状態
3.生計維持者が解雇された
4.震災などに被災して生計維持者が1から3の状態になった。あるいは、就労困難など世帯収入が大きく減少した。
今回、新型コロナウイルスによる収入減少は、1〜3に該当しなければ、4に該当するものとして取り扱われます。
収入基準と収入に関する書類
家計急変事由に該当したとしても、収入基準が変わるわけではありません。住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の収入が基準になります。例えば、学生本人と母の母子家庭の場合、年間の給与収入基準額は229万円〜402万円が目安です。
しかし、新型コロナウイルスによる家計急変においては、実際の年収で判断されるわけではありません。家計急変後の1ヶ月分の収入を12倍して、年間の所得見込み額を算出の上、判断されます。
申請にあたっては、給与明細等の書類に加えて、進学資金シミュレーター実施結果のコピーが必要ですから、まずは進学資金シミュレーターで収入基準を満たしているか、確認しましょう。
進学資金シミュレーターは日本学生支援機構のホームページから行うことができます。給与収入の場合は、収入が減少した1ヶ月の給与を12倍した金額。個人事業主などは収入が減少した月の収入から、経費を差し引いた金額を12倍した金額でシミュレーションを行います。
学業と資産の基準
収入基準以外にも、学業の基準と資産基準があります。学業基準については学修意欲があること、成績が上位2分の1以内であること等の基準があります。
資産基準は、生計維持者が1人か2人かによって異なります。生計維持者1人の場合は1250万円、2人の場合は2000万円です。
ここで、資産とは現金や預貯金、株や投資信託などの有価証券のことをいいます。不動産や貯蓄型の保険等は資産として含みません。また、生計維持者とは原則父母ですが、離婚しているケースでは必ずしもそうとは限りません。
例えば、父母が離婚していて母と同居している場合は、母が生計維持者になりますが、学生が未成年で親権がない父または母と同居している場合は、生計維持者は父と母の2名です。
また、父母が離婚調停中で学生が未成年であれば、生計維持者は父母の2名となりますが、学生が成年の場合は支援してくれている父または母の1名です。生計維持者の数によって資産基準額が異なりますから、生計維持者の数も重要なポイントといえるでしょう。
家計急変事由発生に関する証明書類は
震災等より収入が減ったのであれば、罹災証明書が証明書類となりますが、新型コロナウイルスに関しては、罹災証明書に代わるものとして、国や地方公共団体が実施する公的支援の受給証明書などが、証明書類になると発表されています。具体例は今後、公表される予定です。
具体的に手続きを進める場合は
申し込みは、家計急変事由発生から3ヶ月以内に行う必要があります。日本学生支援機構のホームページでは、「書類等そろっていない場合も、まずは、学校に相談を」と、記載されています。
進学資金シミュレーターを実施し、基準内の所得であることを確認したら、在学している学校に問い合わせてみましょう。
(参考)
日本学生支援機構 進学資金シミュレーター
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ