更新日: 2021.08.31 住宅ローン
住宅ローン審査に落ちた後の“正しい行動”と“NG行動”とは?
今回はそんな方々の不安を解消するために、審査落ちの後にとるべき行動を”正しい行動”と”NG行動”に分けて紹介していきます。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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目次
審査に落ちてしまった後の正しい行動
審査に落ちてしまうと、ショックが大きく、もう住宅ローンは組めないかも……と考えてしまうかもしれません。しかし、あくまでも申し込んだ先の金融機関の審査に通らなかっただけで、他の金融機関に申し込むと審査に通る可能性は十分にあります。以下にいくつか方法を紹介していきます。
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返済負担率を下げる
返済負担率が目いっぱいの借入れを申し込むと、その分審査は厳しくなります。
返済負担率を30%に設定している金融機関が多いのですが、もちろん年収によっても変わります。この返済負担率が高いと、仮に他社からの借入れがまだ存在している場合などでは、審査に落ちる可能性が高いです。
したがって、返済負担率を今よりも下げた状態で申し込みを行うようにしてみてください。
収入合算やペアローンを検討する
収入が少ないことで審査に落ちた可能性がある場合は、収入合算やペアローンを利用すると解決につながる可能性があります。
収入合算とは、申し込み者と配偶者などの親族の収入を合わせて申告し、お互いが連帯保証人となって住宅ローンを組む方法です。一方のペアローンは、2人が別々にローンを組むかたちで合わせて必要な額になるよう借り入れをします。
いずれも2人分の収入をもとに審査をするため、審査のハードルが下がる可能性があります。ただし、収入合算には、団信に入れるのは申し込み者のみというデメリットがあります。また、ペアローンの場合はローンが2本になるため借入時の諸費用が2本分必要です。メリットとデメリットの両方を踏まえて、検討することが大切です。
申し込む機関を変える
最初の審査でメガバンクなどの都市銀行に審査を申し込んだのであれば、「地方銀行」や「ネット銀行」、もしくは「フラット35」など、業体が違う金融機関に申し込んでみましょう。
前述のように、審査基準は各金融機関によって異なります。したがって、申し込む機関を変えることで、審査に通過する可能性はあります。
頭金の準備
もし、準備できる頭金を増やせるのであれば、その分、借入金額を減らすことにつながります。借入金額が減ることによって返済負担率や融資比率が下がり、 審査に通過できる可能性が高まります。もちろんその際の頭金は、無理のない範囲で準備するようにしてください。
審査に落ちてしまった後のNG行動
では、住宅ローンの審査に落ちてしまった後にやってはいけない行動はどのようなものでしょうか。以下に解説していきます。
連続の申し込み
審査に落ちた理由にかかわらず、次回の申し込みまでには半年間空けることが鉄則です。なぜなら、金融機関に住宅ローンを申し込んだ時点で、信用情報機関に「住宅ローンを申し込んだ」という情報が登録されます。そしてこの情報は6ヶ月間登録されることとなっています。
したがって、6ヶ月以内に再度他の金融機関に申し込んだ際、その金融機関は必ず信用情報機関に照会をかけますので、「最近他の金融機関に住宅ローンを申し込み、審査に落ちた」ことが分かります。
なぜ審査に落ちたのかということを、新たにローンを申し込んだ金融機関は厳密にチェックすることになりますので、その分審査の度合いも厳しくなります。ただ、住宅ローンの仮審査では、複数社に申し込んでもよいことになっています。
したがって不安であれば、申し込み当初の時点でメガバングやネット銀行、もしくは地方銀行などにローンを申し込んでおくことも良策です。
なぜ落ちてしまったのか仮説を立てることが重要
金融機関では審査に落ちた理由を公表していません。これはどの金融機関でも同じです。したがって、なぜ審査に落ちたのか、その原因を自分自身で考えてみることが重要です。
年収や借入希望金額の高さなどが原因であれば、申し込んだ金融機関以外の住宅ローンに申し込むことも可能です。また、持病があるなど健康に自信がない方は「フラット35」に申し込むか、加入基準の緩い団信プランを用意している他の金融機関に申し込むなどの方法があります。
もし、事前審査に通らないようなら、信用情報に傷があることが予想されます。過去に信用事故を起こしているかどうかは、信用情報機構に開示請求することで分かります。その際に信用情報に傷があることが分かった場合は、その情報が消えるまで住宅ローンの申し込みは行わないことが賢明です。
基本的に、直近5年以内で、個人信用情報に傷があった場合は、住宅ローン審査はどこも通らないと思ってください。その他にも、借金返済は完了しているものの債務整理をしていた場合など、一定期間信用情報が掲載されますので、審査には通りづらくなります。
審査に落ちた理由は教えてもらえる?
住宅ローンの審査基準はどの金融機関でも明確に公開されていません。また、審査が完了したあとも、審査の否決理由を教えてもらうことはできないのが一般的です。審査でみられる項目と内容をもとに、通らない理由を推測し、対策をとる必要があります。
とはいえ共通している項目もあります。これらは「属性」といわれるものですが、下記に挙げるものが重視される傾向にあります。
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■年齢
住宅ローンの審査における年齢要件には、申込時年齢と完済時年齢の2つがあります。一般的には、住宅ローンを申し込める年齢の下限は20歳です。また、団信へ加入しなければならない住宅ローン商品の場合、団信のプランにもよりますが、年齢によっては申し込みはできないケースが多いようです。
完済時年齢は多くの場合、80歳を超えると審査に通ることが難しいと言われています。
■勤務先
返済の面から、収入が安定しているかどうかが重視されます。個人事業主よりは会社員や公務員などの方が審査に通りやすくなるといわれています。
■雇用形態
一般的には正規雇用がもっとも安定性が高く、派遣社員やパート・アルバイト、無職の方は審査が厳しくなる傾向にあります。また、金融機関によっては、パートやアルバイトの方は、安定した収入があっても審査を受けられないこともあります。
契約社員の場合は、契約期間が長いほど安定性が高いと評価されます。また、法人役員は会社と雇用関係にない場合が多いため、個人の収入に加えて会社の業績が安定しているかどうかもあわせて判断されます。
■勤続年数
基本的に長ければ長いほど審査に通りやすいと言われています。
■年収
年収は返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)を計算する収入の基本となる情報ですので、必ずチェックされます。
年収が低いと返済能力が低いと判断される傾向にあります。しかし、年齢や雇用形態、職種などを総合して判断されるため、年収が高ければ必ず審査に通るというものでもありません。
また、金融機関によっては住宅ローンに申し込める年収の下限金額を設定している場合があります。
■居住形態や家族構成
最近ではそこまで重要視されなくなりましたが、これから起こりうるライフイベントなどを考慮したうえで、返済できるかどうかを判断することもあります。
■他社の借入件数および総額
基本的に他社からの借入れがある時点で、審査には不利になるといわれています。なぜなら、既に返済中の借り入れがあると毎月返済しなければならない金額が大きくなり、返済負担率が高くなるためです。
しかし、額がそこまで多くはなく、返済状況も問題ないのであれば、審査に影響を与えない可能性はあります。
■返済状況における問題の有無
これまでに延滞などをしていないかどうかについては、必ずチェックされます。
金融機関が住宅ローンの審査を行う際には必ず、信用情報機関に登録されている信用情報を照会します。信用情報とは個人の借り入れや返済に関する情報で、カードローンやクレジット、そのほかのローンの利用情報が登録されています。
返済の延滞があったり借入れの残高が高すぎたりする場合、問題があると判断され、審査にはマイナスになる可能性が高いでしょう。
■物件の所在地・担保評価
金融機関によっては住宅ローン対応エリアを設定している場合があり、エリア外の物件は融資を受けることができません。
また、担保評価額と希望融資額の比率(融資比率)も審査のポイントです。担保評価とは、融資対象の物件に売却して残債を回収できるだけの価値があるかどうかの評価をいいます。希望融資額に対して担保評価額が低いほど、希望する融資額の貸し付けができないと判断される可能性が高まるでしょう。
一般的には、地方より都市部の物件の方が評価額が高い傾向にあります。また、中古物件は担保評価額が低くなることが多いようです。
ちなみに国土交通省が発表している民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書によると、本審査において重要視されている項目で上位に位置するものは「完済時年齢」(99.0%)、「健康状態」(98.5%)、「担保評価」(98.2%)、「借入時年齢」(96.8%)、「年収」(95.7%)、「勤続年数」(95.6%)、「連帯保証」(94.2%)です。
担保評価については、意外と見落としがちですが、審査においては需要な項目の1つです。担保評価額とは、担保として売却される場合に、どのくらいの金額になるかを評価したものですが、この担保評価額により、住宅ローンの融資額に差が出ることを理解しておきましょう。
(出典:国土交通省「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」)
住宅の購入契約を解除する場合の注意点
それではもし住居の購入契約をしているにも関わらず、審査に落ちた場合はどうなるのでしょうか。ほとんどの契約書には「融資利用の特約(ローン特約)」が記載されています。これは住宅ローンの審査に通らなかった場合、売買契約を解除できるという特約です。
融資利用の特約が売買契約に含まれる場合、何のペナルティもなく売買契約を解除することができます。ペナルティとは、手付金が返金されない、契約解除に係る違約金を支払うなどといったことです。融資利用の特約には、解除条件型と解除権留保型の2つがあります。
解除条件型
融資利用の特約における解除条件型では、住宅ローンの審査に通らなかった場合、自動的に売買契約の効力を失います。つまり、上述のような契約解除の申し出をしなくても、住宅ローンの審査に通らなかったことによって売買契約は当然に解除となります。
解除権留保型
一方、解除権留保型では、住宅ローンの審査に通らなかった場合、買った人の申し出があれば契約解除となります。つまり、住宅ローンの審査に通らないときは、契約解除できる権利があるということです。
契約書をよく読んでも、解除条件型なのか解除権留保型なのかわからない場合があります。またこの「融資利用の特約(ローン特約)」がない場合もありますので、契約の際にチェックするようにしましょう。
審査に落ちたのに手付金が戻らない?契約解除期日に注意
「融資利用の特約(ローン特約)」に契約解除期日が設定されている場合、期日を過ぎると特約が無効になり、手付金が戻らない可能性があります。
例えば、審査に一度落ちたあとにほかの金融機関に繰り返し申し込むような場合には、認否の連絡がくるまえに期日が過ぎてしまうことが考えられます。
このような場合には「融資利用の特約(ローン特約)」が無効とならないよう、売主の合意のもとであらかじめ期日延長について取り決め、覚書を交わしておくことが必要です。
まとめ
住宅ローンの審査基準には多くの属性が設定されていますが、審査の合否に大きく影響するのは、「属性において、完済できるだけの信用度があるかどうか」、「毎月の返済額に見合う収入があるか、そしてそれが継続するか」の2つです。
審査合否は総合点で決定することから、1つの属性評価が悪くても総合力でカバーすることができるため、すべての審査基準で高評価を得る必要はありません。
しかし、本稿で解説した、審査をクリアするための基準に満たなければ、総合力に関係なく審査落ちすることとなるでしょう。もし、審査基準をクリアできているにも関わらず審査に落ちた場合は、信用情報を疑ってみるべきです。
自分の気が付かないところで信用情報に傷がついているパターンはよくあるものです。例えば、携帯料金の延滞などです。催促があってすぐに支払ったとしても、延滞として認識されます。
何か問題がある場合には申し込む前に対策を練り、優位に審査を進められる状態で住宅ローンに申し込むとよいでしょう。
出典 国土交通省「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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