【税制改正】未婚のひとり親に対して住民税軽減と給付金支給へ。その条件は
配信日: 2019.05.15 更新日: 2020.04.07
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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寡婦(夫)控除が受けられるのは?
一定の要件を満たす人は寡婦(夫)控除(所得控除)を受けられるので、申請により、所得税や住民税が軽減されます。
寡婦とは所得者本人が次の(1)(2)のいずれかに該当する人をいいます。
(1)次のいずれかに該当する人で、扶養親族又は生計を一にする子のある人
・夫と死別又は離婚した後、婚姻していない人
・夫の生死が明らかでない人
(2)上記(1)に掲げる人のほか、次のいずかに該当する人で、合計所得金額が500万円以下の人
・夫と死別した後、婚姻していない人
・夫の生死が明らかでない人
なお、寡婦のうち、扶養親族である子を有し、かつ、合計所得金額が500万円以下の人を「特別の寡婦」といいます。
一方、寡夫は、所得者本人が、次のいずれかに該当する人で、生計を一にする子があり、かつ、合計所得金額が500万円以下の人をいいます。
・妻と死別又は離婚した後、婚姻していない人
・妻の生死の明らかでない人
控除額は、一般の寡婦と寡夫は、所得税27万円、住民税26万円です。特別の寡婦の控除額は、所得税35万円、住民税30万円です。
年収204万円以下の未婚のひとり親世帯の税負担の軽減
寡婦(夫)控除は法律婚を前提にしていますので、未婚のひとり親は寡婦(夫)控除を受けることができませんでした。一部の自治体においては、未婚のひとり親に対して住民税に関して寡婦(夫)控除のみなし適用をしているにすぎません。
また、住民税には、法律婚の配偶者と死別又は離婚した年収204万円以下の人は非課税ですが、未婚のひとり親には適用がありませんでした。
このように婚姻歴がない場合、現状では控除や非課税の優遇措置がありませんが、平成31年度税制改正により、子どもの貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円(年収204万円)以下であるひとり親に対し、個人住民税が非課税となります(2021年度分個人住民税~)。
なお、未婚のひとり親は所得税の寡婦(夫)控除は現行通り適用されません。その代りに、次に説明する臨時・特別給付金が支給されます。
未婚の臨時給付金とは?
臨時・特別給付金(未婚の臨時給付金)は2019年10月から消費税が引き上げとなる環境の中、子どもの貧困に対応するために、児童扶養手当受給者のうち、未婚のひとり親に対して17,500円給付するものです。
2019年11月分の児童扶養手当を受ける父又は母であることを支給要件としていますので、基準日が10月31日となっています。
児童扶養手当の支払い回数は現行年3回(4月、8月、12月)ですが、2019年11月より年6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)になります。家計管理をしやすくするためです。見直しによる最初の支払いは、8月分~10月分までの3ヶ月分とし、それ以降は奇数月に2か月分の支払となります。
金額の根拠は未婚のひとり親に対し、寡婦控除が適用された場合の標準的な減税額が、控除額35万円×所得税率5%=17,500円となることを踏まえたものです。
未婚の臨時給付金は、対象児童の人数にかかわらず、支給対象者1人につき一律17,500円を支給するものです(1回限り)。
現在、児童扶養手当を受給していても、自動的には、未婚の臨時給付金は支給されませんので、改めて申請が必要になります。なお、未婚の臨時給付金の法的性格は民法上の贈与契約ですが、給付金を受け取っても、所得税・住民税は課税されないことになっています。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー